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Next SaaS - BPaaSで描く建設の未来 -

フォトラクション代表の中島です。

当社が提供しているPhotoructionにBPO機能がつきました!

工事の事前準備や、書類作成、データ入力などをサポートをするアウトソーシング(BPO)の仕組みを、クラウド経由で簡単に活用することが出来ます。

(プレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000033069.html

作業代行としてのBPOサービスは以前から提供してたものの、今回リリースしたようにソフトウェアにビルドインしたものこそが、創業前からずっと提供したかった形態であり、私個人としても非常に感慨深いリリースとなりました。

このnoteでは、プレスリリースだけでは伝えられなかった背景となる考え方として存在する、SaaSの次『BPaaS』の説明から入り、どのように建設の世界は変わるのか、私たちはどんな世界を創っていきたいのか、といったことを簡潔に書きたいと思います。

ぜひ、最後までご覧ください!

Next SaaS『BPaaS(ビーパース)』とは何か?

そもそもなぜ、SaaSの開発を専門とする私たちがBPOまで提供することを考えたのでしょうか。

それは、私たちが建設業を支援させていただく中で、以下のような判断をしたためです。

建設の業務はデータの量と粒度が揃っていないのに加えて関係性が複雑であるため、単純作業に見えても標準化した業務フローをSaaSとして広い範囲で提供し続けるには、割と早いタイミングで限界がくる。

SaaSは業務で使うものが中心であるため、どのような機能を持たせるのかといった設計は、現状の業務で行っていることの言語化や可視化が必要となってきます。

この時に、よく活用されるのがフローチャートといった業務における作業(タスク)と順番を示した絵です。わかりやすいので様々なシーンで活用されています。このフローをSaaSを使うとどの部分が効率化して便利に使えるのかといったことが基本的な考え方だと思います。

しかし、私たちが支援する建設会社においては、このフローを正しく表現しようと思うと非常に困難なコトが数多く存在しました。

例えば工事現場では写真のように、黒板に状況であったり検査値などを記入して様々な記録をしていきます。そして最後は記録した情報をもとに書類を作ったり、意思決定をしていくと言った業務があります。

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一見するとフローとして簡単に書くことが出来そうですが、黒板に書く内容は状況や図面によって変わります。また、図面も設計者のスキルや手法、もちろん建物によっても変わってきます。現場で取る必要のある記録も、書類のまとめ方も同様です。そして、大規模な建設物になると、情報が膨大でありそれぞれの関係性をすべて可視化するのはほぼ不可能に近くなってきます。

これをフローで書いて機能を開発しようと思うと、正しくないフローを元にしてしまうため、ここだけ便利だけどあっちは不便、こっちは出来ないといった状況が生まれてしまいます。さらにPhotoructionはオールインワンの建設SaaSを目指していたため、たった一つの作業にだけ最適化することを最初から避けていました。

そこで私が創業時にとった手法はバーチャルで建物を建てるとなった時に、どのような情報が必要となってくるのか。業務フローからではなくデータから考えるといった事でした。データから考えて、それが実際どのような作業やコミュニケーションを通じて集められているのか、といった点を考慮して機能に落とし込んでいくのです。

先ほどの黒板の話だと、まずは黒板に何が書かれているのかを確認し、建物を構成するデータの何を表しているのかを考えます。黒板というのは現実世界において、人間がわかりやすくコミュニケーションするためにデータを纏めただけであり、たまたま今は黒板で表現されているだけだと考えたのです。

こうすることによって、良いSaaSを開発するためには業務フローとして正しく言語化・可視化する必要がある、でも建設業において業務フローを正しく書くことは難しい、といった相矛盾する状況を抜け出すことに成功します。

しかし、すぐに次の課題が判明しました。このデータから考える手法を取ると、業務フローからは本来考えなくても良い範囲まで考慮する必要があるため機能で集める必要のあるデータ量が増えていきます。

それ自体は大きな問題ではないのですが、細かいデータを記録するための機能をつけようとすると、どんどん複雑になっていきます。

多くのSaaS企業はこの問題を解決するためにオプションを増やすか、アプリマーケットとして他社連携するか、開発エコシステムを構築してプラグインを大量につくるという施策をとっています,

しかし、私たちはそれらも考慮にいれつつ「コンピューターやアプリケーションでの自動化に拘らず、人のオペレーションをシステムの中に組み込みクラウドベースのBPOサービスとして提供することで、複雑かつニッチな課題を解決していく」ことを選びました。

理由としては沢山あるものの、1番は複雑なことはどんなに工夫しても、やはりUIが複雑になってしまいユーザー体験を損ねるといったことです。

複雑なことを機能で簡単にするためには、同じやり方を効率よく再現するのではなく、タスクやコミュニケーションの順番をテクノロジーに最適化した形に再定義する必要があります。

例えば図面から必要な情報を抜き出して黒板に転記する作業であれば、従来であれば現状実施している業務フローのどこを効率化するのかと言った話になります。

しかし、BPOで引き受けることで、図面から黒板をデータ変換として見ると、作業自体は従来のやり方にとらわれず、自分たちが最も良いと思うやり方に変更することが可能です。

人とテクノロジーのハイブリットでひとつひとつのタスクを再定義していき、それをサービスとしてクラウド経由で提供する。この仕組みのことをBPaaS(Business Process as a Service:ビーパース)と呼んでいます。

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ちなみにBPaaSという言葉は私たちが発明した言葉ではありません。古くは2012年にIBMなど外資が提唱しています。あんまり詳しく説明するとBPaaSの勉強になってしまうので、もし興味ある方はこちらに社内で使った勉強会の資料を置いてますのでご参照ください。

この、BPaaSこそが当社が本来提供したかったPhotoructionのサービス形態であり、建設生産にこれから大きな価値を生んでいくものだと確信しています。

BPaaSが創出する価値

では、具体的にBPaaSで何が変わるのか。単にBPOサービスがクラウドで受発注できるという提供形態が変わるだけでしょ?と思った方もいるのではないでしょうか。

そのような反応が沢山あるほど私としては、安心してPhotoructionを建設SaaSから建設BPaaSへと進化させることに対して自信を持つことができます。

なぜなら、ソフトウェアがSaaSになった時、まったく同じような反応があったのではないでしょうか。単にブラウザで見れるだけではないかと。

それが今では当たり前のようにクラウドの方が便利だと言うことで、顧客に価値を生み出す一大産業にまでなりました。

提供形態の違いというのは、表面的な事実だけではなく、本質的な根底から大きく揺るがす破壊力があると私自身は考えています。

だからこそ従来型BPOサービスをクラウドで提供するだけで、大きな価値を生み出し長い目線で見ると新しい産業を作り出すポテンシャルがあると考えています。

進めていく中で解像度が上がっていくと思いますが、私自身がいま考えている具体的な価値は以下の4つです。

1. BPOを使う位置付けが変わり生産性が向上する
そもそも、BPOとは自社のノンコア業務(と定義したもの)を、外注委託してコストの移動を行うことで、自社での諸々の運用コストとリスクを抑える手法です。それがソフトウェアのようにクラウド経由でBPOを使えるようになることで、これまでのBPOとは全く異なる位置付けになる可能性があります。例えばGmailがBPaaSになって使う人の意図を汲んで、文書を自動作成する機能が付くとしましょう(Googleのことなので実現するとしたらAIで実現すると思いますが….)。便利であれば意識することなく利用すると思いますが、そもそもこの作業を外注しようなんて考えてもなかった作業かと思います。また、仮にBPOサービスを活用してもコストペイしないのではないでしょうか。これはあくまでも一例ですが、BPaaSによってBPOの位置付けが変わり、提供できる幅が大きく広がっていくと予想できます。
2. ノウハウとデータが必要な場所に蓄積する
提供形態が変わることにより、手法が変わればそれに伴う成果物も変わります。業務をアウトソーシングしてしまうと当然ながらノウハウは自社から失われてしまいます。それがどんなに些細な業務だとしても、もしかしたらそれが全く別の価値創造に繋がっている可能性だってないとは言い切れません。従来型のBPOサービスでも、最終的なアウトプットはあるかもしれませんが、過程のデータや暗黙知などのノウハウは社内に蓄積していきません。BPaaSはソフトウェア上でビジネスプロセスが動くため、データは当然データベースとして自社に蓄積します。また、ソフトウェアを使うのは自社の人間であり、業務まるごとではなく作業のアウトソーシングとして使えるため、ノウハウが失われることもありません。
3. 持続可能な仕組みを低コストで実現できる
SaaS以前のソフトウェアはユーザーから見ると、非常にメンテナンスコストが高いものでした。パソコンひとつひとつにCD-ROMなどを使ってインストールしたり、アップデートのたびに対応が必要となり、ハードウェアの故障にも対応しなければいけません。しかしSaaSになってからはインターネットにさえ繋がれば使えるという環境が実現したのです。BPOも同じです。初期の要件定義やマニュアル作成、はたまた常駐する人のコストや維持管理のための設備費など思っているよりコストがかかるものです。BPaaSに変わることでこれらのコストは全くかからなくなり、持続可能な生産性向上を何かに依存することなく実現することが可能です。
4. 新たなエコシステムによって産業全体が潤う
最後は遠心力で対象となる領域が拡大していくという話です。SaaSはAPIという仕組みによって、他のソリューションと簡単にデータ連携することが可能です。これは提供するサービスの役割が分かれていて密結合していないかつ、クラウドだからネットさえあればどこでも繋がるという二つの要素によって成り立っています。国外のSaaSは特にAPI連携を重視していて、複数のサービスが繋がることで、ひとつのサービスでは提供できない価値提供をしています。BPaaSにおいても同様の変化を起こせると考えており、ユーザーは様々なビジネスプロセス、そしてデータを意識することなく使えるようになります。SaaSと同様に、BPaaSで既存の建設サービスを提供しているプレイヤーと連携することで、結果的に生産性向上のエコシステムが構築され産業全体の発展につながるのではないでしょうか。

フォトラクションを含めてBPaaSを提供している企業(BPaaSと表現していない企業の方が圧倒的多数ですが)もチャレンジの真っ只中です。

Photoructionは建設BPaaSとして、次のレベル目指した生産性向上を通じて、しっかりと産業貢献が出来るよう頑張っていきたいと考えています。

BPaaSで創る、新しい建設生産のカタチ

建設業においてBPaaSが使われるイメージは、クラウドにある建設会社が実際の建設会社と協力して、建物を作り上げていくといったイメージをしています。

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建設会社で働く方々はクラウドにある建設会社(BPaaS)を意識することなく使うことができる。つまりアウトソーシグをアプリケーションの機能を使うかのように実行できるのです。

それによって、建設会社が実施していたノンコアな作業が少しずつBPaaSで効率化することができることにより、超効率的な建設生産が可能になるのではないでしょうか。

また、BPaaSで提供されるビジネスプロセスは、特化したオペレーションとテクノロジーを用いた標準化によってそれ自体が効率化された内容となっています。

そのため、従来のBPOよりも少ない時間と人で実行することができるため、実質的に産業の労働量を増やすことができ、最終的には産業の人手不足の解消に繋がると考えています。

これらの世界観を実現する最初の一歩が、今回リリースしたアウトソーシングの仕組みをPhotoructionにビルドインしたBPO機能です。初期リリースでは以下3つを実装しました。

1. 選んで使えるBPOメニューリスト
Photoructionに「BPO」と言う表示がされ、そこをクリックすると対象の工事現場で使えるBPOメニューが表示されます(AppStoreのようなイメージ)。そこから実行したいBPOメニューを選んで使用できます

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2. 決められた設問に答えるだけで使えるオーダー機能
選んだ後は数個の設問が出てきます。そこを変更することで、目的にあったBPOメニューの内容にカスタマイズ可能です。どのメニューも2,3分あれば選択できるようになっており、手軽にBPOを利用できます。

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3. BPOメニューの今を可視化できるプロセス機能
BPOメニューが現状どんな状態なのかをリアルタイムに見ることができます。利用料金であったり、BPOによってできた成果物もデータとしてみれるため、その後の活用も非常に簡単です。

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前述した世界観を実現するためには機能も内部のオペレーションもまだまだ磨く必要があります。

今後もさらなる機能開発とメニュー拡充をしていけたらと思っています。

BPaaSを創る会社をどう創るか

最後に長くなりましたが、Photoructionはリリースして5年で、ようやく本来提供したかったサービスとしてのスタートを切ることが出来ます。

以下は、2015年にまだ会社すらなかった時に、一人でコツコツと書いたPhotoructionの企画書の一枚です。

図1 (2)

表現の仕方は変わりましたが、左上に大きく「Eye」と書いてあるのが、今回アウトソーシングの仕組みを組み込んだPhotoructionです。機械学習から始まった思考の旅路は、Next SaaSとしてのBPaaSに辿り着きました。

この企画書から1年後に会社を設立し、今ではありがたいことに100名に近い仲間とともにPhotoructionを創っています。

プロダクトもビジネスも、内部のオペレーションも、まだまだこれから10倍、100倍といったクオリティに進化させていく必要があります。

だからこそ良いプロダクトを作るためには、素晴らしい会社を創る必要があります。業務フローを再構築しテクノロジーで提供する。そのためにはITだけではなく建設業としての文化も必要です。

一見相反する二つの文化を綺麗に融合することが出来た時に、建物を建てるための新しい建設技術にまでPhotoructionを昇華させることができると信じています。

私がITと建設どちらも好きだったところから生まれたプロダクトを、今度はIT企業と建設業の文化が混じった企業がアップデートしていくことで持続可能な仕組みにしていき、長期目線でしっかりと産業貢献していけたらと思います。

NEXT SaaSとも言えるBPaaSに興味のある方、一緒に高いチャレンジをしていきたいと思っている方はぜひご連絡ください!

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