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村上隆のYoutubeが面白すぎる

高橋龍太郎コレクションを見てから村上隆の作品が気になって、「村上隆」でYoutubeを検索してみた。結構コンテンツが存在していて、これがめっっっっちゃ面白く、僕に刺さりまくった。

例えばこんなの

https://www.youtube.com/watch?v=I8lBaOxBwNY&t=25s

https://www.youtube.com/watch?v=e933OBnx1xk


マーケット感覚

 村上隆はアートの説明をしているのだが、同時にビジネスの話をしてくれているように聞こえた。
 欧米や日本のアートマーケットには、それぞれどのような顧客がいて、どのような競合がおり、ゆえに自身のポジショニングがどうであるか、非常に意識的であるように見えた。ポジショニング踏まえてマーケットへの参入方法であったり、作品の作り方や、浸透後の生存戦略まで説明してくれる。
 ここが、普段会社勤めしている自分に刺さりまくった1つの要素だと思う。これって新商品開発で3Cだの4PだのLTVだのを意識するという話と同じだ。

 村上隆の提唱するスーパーフラットには、商業アートであるアニメーションや漫画と、現代アートの垣根をなくすという一面がある。この作風がアートとビジネスをリンクさせて語る土台を作っている気がする。さらに彼はカイカイキキという工房の社長でもあるため、マーケット脳の回路がより強化されていっていると想像した。

デカい思想に結びつけて語るのが上手い

 資本主義とか社会主義とか、ポストモダンとか量子力学とか、やたらデカい思想体系や論理体系を、論理整然と語る人に僕は弱い。ただデカい思想を語る人には同時に胡散臭さ感じることが多い。
 村上隆は自身の作品とデカめの思想を結び付けて語るのがとても上手い。かつ副作用である胡散臭さを感じさせない丁度いい塩梅で語れている気がする。

 確かに語りはデカいんだが、その語りをサポートする実体験の例示の強さが語りに負けてないのが面白い。アメリカの市場に飛び込んで泥臭くアート界をサバイブした経験、世界のトップオブトップの資産家たちと直接対峙しアートを売った経験、カニエに代表される世界的アーティストとの交流、などの圧倒的な経験群。デカい思想をデカい経験で裏付けられると受け手はただただ圧倒されてしまう。
 それでいて元々はお金の無い家庭で育った出自であったり、日本のマーケットから長らく批判されてきたという弱者としての体験も持ち合わせている。マッチョネさとナイーブさ、両面でデカい思想をサポートできる強強の論客が村上隆だと思っている。

シンプルに話すの上手い

 物事を筋道立てて理路整然と話すことができていて、話がわかりやすい。あと声が通っている。

 批評家とかキュレーターみたいなポジションならまだしも、実際に手を動かすクリエイターは寡黙であったり、論理的に話すことが得意ではないというステレオタイプを砕いてくる圧巻の喋りっぷり。ここは話をカットするyoutubeの編集技術が寄与している部分は大きいと思う。

なぜこんなにもハマるのか

 漫画やアニメを例に説明してくれるから頭に入ってきやすいのはある。そしてアメリカのHIP HOPと多くコラボレートしているように、音楽のメタファーで思想を語ることも多い。
 共感を持って村上隆の話を聞けてしまうのは、結局のところカルチャーと結び付きの強い彼の作風に依拠するのかもしれない。

 僕はエヴァンゲリオンであったり攻殻機動隊のような、衒学的なアニメーション作品によって幼少期に脳を破壊されている。例に漏れ思想的な何かであったり、日本のオタク文化的なものに興味を持つわけで。それでいて日々はサラリーマンとしてマーケットについて考えているわけで。尚且つヒッポホップが大好きで中途半端に曲を作ったりしたこともあるわけで。僕のような人間に村上隆が刺さりすぎるのは自明なのであった。


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