リスキリングの自己啓発化を防ぐフレームワーク

リスキリング。バズワードである。補助金も出ているらしいし、人材系のコンサルタントが腕をブンブン回しているのが容易に想像できてしまう。 

リスキリングとは、単に何でも良いから学び直し/自己啓発ではなく、明示的に業務に必要な新たなスキルを獲得することである。
特に電動化を始めとするゼロカーボン系やデジタル、介護といった領域が伸びるないしは国/企業として意図的に伸ばそうとしている際に、現状のままでは足りないスキルを補うためなのである。今やってる業務をより上手くやるためではないのである(これは単なる自己研鑽)

一番わかり易いのはVolkswagenやBoschがやってるようなもので、電動化で事業自体が変わるので、伴って業務も変わるよね(コードを書く人が増える、電動化部品の検査をする等)、なら必要な体制やスキルも変わるよね。となった中で、他のドイツの会社も電動化人材は不足だから外注はできないし、今の人員をリスキリングさせるしかないよね、といった逆算思考でリスキリングを勧めているのである。

つまり、
事業(EV生産等)→業務(ソフトウェア開発等)→体制(内/外製)→人材(配置転換/教育)という順番(フレームワーク)で考える必要があるのである。まずは事業や業務が先なのである。事業や業務に必要あるかわかんないけど、(かつベンダーに外注する業務だけど)学んじゃった♡では済まないのである

そう考えると、まず補助金の対象事業が指定されてないのがおかしいと感じられる。一部建設や農業という制限があるのは良い。これら国として明確に伸ばしたい/人手不足という認識があるからであり、もちろん実際リスキリングした人材をどう活用するのかとセットで考えるべきであるが一定は許容できる。問題はその他であって、eラーニングやOJTに補助金出しますみたいなものである。
もしやと思い色々メディアを覗くと、英語を勉強したいだのデジタル(しかも主にツールの使い方)を勉強したいというアンケートもあり、これは自己研鑽化不可避だなと感じた。
極端な話、事業という意味だと、日本だと自動車産業とエネルギー産業以外はリスキリングの必要がないのでは?と感じる。デジタル等は元々必要だったし、もう諦めて外注してる会社ばっかりでしょうし。

もう一つ事業面以外で罠だなと感じるのはデジタルの部分で、たしかに日本の間接人員の生産性は低く、かつデジタル人員が事業会社に少ない(SIerやITコンサルに集中)ので、リスキリングブームに乗じてデジタル強化する選択肢がないとはいわない。ただし、これも業務や体制をまず検討する必要があり、リスキリングの前に無駄な業務(特に会議)はないですか?そもそもその間接業務は自社の人員でやるのではなくオール外注したほうが安いし高品質なのではないですか?といった形である。ここまで考えたうえで、何が何でもデジタルを内製したいので、こういう言語を書ける人が何人必要なのでリスキリングをやる、業務は外注するが、最低何人は海外BPO会社のマネジメントをする必要があるので業務がわかってる人材に英語のリスキリングをする、とここまで考えたうえでのデジタルや英語のリスキリングなら良いと思う。
ただし、どこまでの会社がそこまで考えているだろうか。事業や業務の理解が必要な時点で、人事部任せでは難しいのである。

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