【コンサル物語】会計士誕生の歴史③〜文学作品に登場する会計士 シャーロック・ホームズ編〜
19世紀のイギリスで生まれた会計士という職業。産業の発展を支える将来性のある職業ではありましたがまだまだ地位は低く、国のお墨付き(勅許)を得て地位向上を目指そうと当時の会計士達は奮闘していました。前回は歴史書などから会計士の評判をご紹介しましたが、今回は目線をもっと身近にして、当時の文学作品に登場する会計士から世間一般の認識に迫ってみたいと思います。
最初にご紹介するのは、多くの方がご存じの探偵小説の名作『名探偵シャーロック・ホームズ』シリーズです。ホームズシリーズで描かれている時代は19世紀後半のロンドンが中心ですので、まさにコンサル物語の題材にふさわしい文学作品です。
ホームズシリーズの中には会計士が登場する場面がいくつかあり、その描かれ方から当時の会計士の一側面を知ることができます。
例えば『シャーロック・ホームズの冒険』に収められている短編「赤毛組合」という話では、依頼人の説明の中に会計士が登場します。
原文でも太字下線部でしっかり ”accountant”(会計士) が使われています。
ここで登場する会計士は、事務所で数字を一生懸命追いかけている会計士とはほど遠いイメージです。会計士でありながら小ビルの管理人もやっているのが一つの現実だったようです。
もう一つご紹介しましょう。『シャーロック・ホームズの思い出』に収められている短編「株式仲買店員」では、依頼人とともに犯人と思われる人物に会いに行く場面で、ホームズは探偵であることを隠すために自分をハリスという名の会計士だと偽ります。しかも失業中の会計士だと。
こちらも原文では “accountant” (会計士) と言っています。
失業している会計士だと名乗るのは何とも不思議な感じもしますが、当時は会計士の一側面として普通だったと考えることもできるわけです。要するに、会計士は増えたけど会計士の仕事だけで食べていける人は限られていた、ということです。
ホームズシリーズで忘れてはならないのはホームズの実兄マイクロフト・ホームズの職業が会計士だということでしょう。「ギリシャ語通訳」ではホームズが相棒ワトソンに初めて自分の兄弟について話し出すシーンがあります。ここでホームズは実の兄が自分以上の能力の持ち主であり、職業は会計士だということを初めて明かすのです。
ディオゲネスクラブは人と付き合う気のない非社交的な人間が大勢加入しているクラブだという説明があり、兄のマイクロフトは毎日4時45分から7時40分までそこにいる、という。あまり印象良くは描かれていません。
そして、兄マイクロフトの姿がこちらです。
とまあ、先の2作品に登場する会計士とは違い、兄マイクロフトは会計士という職業でしっかり生活をしていることが分かります。ただ、そこに描かれているのは少しマニアックで頭が切れる変わり者ではないでしょうか(ホームズ自身も変わり者ですかね)
ホームズシリーズでは上に挙げただけでも、ビルの管理人をする会計士、失業中の会計士、政府機関の監査をする会計士、という様に多種多様な会計士が登場します。ホームズシリーズの読者層が持つ会計士という職業のイメージはピンからキリまであったということが分かります。そして、主人公の兄弟の職業が会計士に設定されることからは、会計士がこの時代の注目される職業の一つだったこともうかがい知れます。
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