【コンサル物語】会計士誕生の歴史①〜19世紀イギリス〜
今でこそBig4コンサルとしてコンサルティング業界で確固たる地位を築いているBig4各社(Deloitte・PWC・EY・KPMG)ですが、会社としての始まりをたどっていくと19世紀のイギリスにさかのぼることになります。この時代に会計士という職業が誕生し、ロンドン市街に構えたいくつかの個人事務所は、後々数十万人を抱える巨大組織(Big4)へと成長していきます。そこで数回に渡り、19世紀のイギリスで会計士が誕生した背景や当時の会計士の実態を紐解くことでBig4が誕生した歴史に迫りたいと思います。
そもそも19世紀イギリスとはどのような時代だったのでしょうか。イギリス史、会計史に関する本をまとめるとおよそ次のようなことが書かれています。
このように19世紀のイギリスでは、鉄道会社のような巨大で複雑化した会社の帳簿を正しく財務報告すること、粉飾決算を見逃さないこと、増加する会社倒産の破産業務を担えること、そのような会計の専門性が求められるようになりました。それは会計士という職業の登場を待つ状況でした。そしてイギリスには会計士と名乗る人が一人また一人と現れ会計業務を専門的に行い始めたのです。
イギリス政府も帳簿や会計に要求される変化をくみ取り、無法地帯だった会計分野にルールを適用することで会計士という新しい職業を法律の面から後押ししました。その一部をご紹介します。
1831年 破産法
・政府ははじめて会計士という職業を認め、商人、銀行、会計士、貿易商だけが破産を管理することができると定めた
1844年 株式会社法(登記法、会社法)
・企業財務に関する規則が定められ、専門教育を受けた会計士が監査を行うようになった
1856年 改正法
・具体的な貸借対照表のひな形が例示された
1862年 会社法
・株式会社の設立時、事業活動期、解散時と、あらゆる段階で会計士が必要とされることとなった
関連法が整備されることで会計士の需要は高まり、職業として確立されていきました。その結果、会計士を目指す人が増えていったのでしょう。実際、ロンドンでは会計士が大幅に増えており、1799年にわずか11人だった登録者が1860年には300人以上(27倍)に増えていましたが、そのほとんどは1840年以降に登録した人達でした。会計事務所自体も1811年には24ヶ所しかなかったのが、1883年には840ヶ所(35倍)に増えています。ウイリアム・デロイト会計事務所(1845年 後のDeloitte)、プライス・ウォーターハウス会計事務所(1849年 後のPWC)、ウィリアム・クーパー会計事務所(1854年 後のPWC)のように20世紀にBig4として巨大な組織になっていく会計事務所もこの時代のロンドンで小さな個人事務所として誕生しています。
新しい会計業務と会計士という職業に対して、国は法律を制定することで発展を支える結果となりました。19世紀にイギリスで誕生した会計士は20世紀を前にして各国に渡って行きます。その一つアメリカ合衆国に渡った会計士達は20世紀に経営コンサルタントという職業を新たに生み出していきました。
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