【コンサル物語】会計士、海を渡る①
19世紀後半、世界の工場の座からイギリスは陥落しました。代わってその座に着いたのはアメリカでした。アメリカの成長は著しく、ヨーロッパを中心に新大陸へ人と資本が流入していました。アメリカの産業の発展を受け、イギリスで成功した会計事務所の中にはアメリカでの事業を拡大していくところが少なからずありました。その歴史に触れる前に当時の時代背景を見ておきたいと思います。
当時のイギリス産業や経済状況について『近代イギリスの歴史』(木畑洋一/秋田茂)では次のように書かれています。
このジェントルマンの変化は『イギリス近代史講義』(川北稔)でも述べられています。
このようなイギリスの資本主義構造の変化もあり、投資家(大土地所有者、地主階級)に雇われた会計士達は投資先アメリカでの調査も担うようになっていきます。
投資先となるアメリカの状況について、アメリカ史関連の書籍ではおよそ次のようなことが書かれています。
イギリスの投資家の依頼を受けアメリカの仕事を始めたイギリスの会計事務所や会計士は、やがてアメリカに支店を設立し、アメリカ企業の統合、買収に関わっていくことで会計事務所自身もアメリカでの事業を大きく成長させていきます。
さて、この物語の続きは、イギリスからアメリカに渡りそこで残りの人生を送る人々の歴史です。いわば移民の歴史ではありますが、イギリスの投資家やアメリカの独占企業を顧客に持つ富めるものの歴史でもあります。これは当時の時代を説明する一側面ではありますが、会計士視点での歴史です。これとは違った側面もあるということを、私自身も記事を書きながら学びました。
アメリカ国内の工業の発展は膨大な労働者を必要とし、その多くはヨーロッパからの移民が占めていました。彼らは母国を離れ、より良い賃金を求めていましたが、現実の生活は厳しい場合もあったようです。経営者は、競合との競争激化のなかで、過酷な労働条件や解雇といった厳しい労働環境を強いることもありました。これもまた、移民の一側面です。
どちらが正しいということではありませんが、この時代の会計士は経営者側だったということです。そして、コンサル物語が対象とする歴史もそちら側の歴史なのです。
(参考書籍)
『イギリス近代史講義』(川北稔 著)
『一冊でわかるアメリカ史』(関眞興 著)
『大学で学ぶ アメリカ史』(和田光弘 編著)
『アメリカの歴史』(有賀夏紀/油井大三郎 編)
『近代イギリスの歴史』(木畑洋一/秋田茂 編著)
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