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10年に1度の寒波が到来、大雪に見舞われた日「リスクに関する情報連絡会(第1回)」を実施しました

 1995年1月17日、戦後初の大都市直下型地震「阪神・淡路大震災」が発生、関連死を含め6434人の命が失われる未曽有の災害を私たちは経験しました。あの日から28年目を迎えた2023年1月、大学コンソーシアムひょうご神戸では、第1回目の「リスクに関する情報交換会」を開催しました。歳月の重なりとともに、阪神・淡路大震災の発災時に学内で緊急対応された教職員の多くがご退官・ご退職されることも増え、直接、体験談やマネジメントの知見を伺える機会が少なくなっています。

 想定外の緊急事態に直面した経験からの反省、その教訓を現在に至る大学運営の礎にされている大学人をはじめ、阪神・淡路大震災当時の状況を経験していない若手教職員、全国各地でリスク対応や危機管理マニュアル作成に従事されている方々など、本会では世代や経験の差を越えて、全国から40校の大学関係者51名が共通の課題意識のもとに集いました。

「情報連絡会」を開催する目的は?

 大学コンソーシアムひょうご神戸では、中長期計画Ⅱ期における取組「大学資源を活用する地域プラットフォームの形成」の一つとして 、「緊急時の加盟校間の協力・情報提供体制の構築」を進めています。地域にある各大学が有する資源や強みを生かして自治体・企業・地域団体等と連携し、感染症(新型コロナウイルス感染症等)や災害対応等の不測の事態に備えること検討します。まずは、加盟校が蓄積する経験や知見の共有を行うために、「情報連絡会」を今年度から行うことに。日常的に情報共有を重ねることで、有事の際に加盟校のニーズに応じて連携できる体制を目指しています。

オンラインで連絡会を開催するメリット

 奇しくも、情報交換会当日は、10年に1度の寒波到来による大雪のため、特に関西地方では電車等の公共交通機関の多くがほぼ運休となり、各校で緊急対応がとられることが想定される状況でした。状況を鑑みて連絡会そのものの開催可否を逡巡しましたが、今起きている大雪に関しても情報共有の場になる可能性を考慮して、登壇者と相談の上、開催することに。参加者が学内の急務に対応できるよう、講師の理解を得て開催時間の14時30分から16時30分の間は入退場自由とし、申込者58名のうち、緊急対応で欠席された方を除いて51名もの参加がありました。有事の際でもオンラインであれば必要に応じて参集しやすく、時間と状況にあわせて情報交換を行えることが確認できたのも、今回試行してよかった点です。

全国から40校が参加

 今回の連絡会は「阪神・淡路大震災」の経験から学んだ大学のリスクマネジメントや、今につながる大学の地域貢献の在り方について知見を共有する観点から、参加地域を定めずオンラインで開催しました。兵庫県下の加盟校27校のほかに、宮城、新潟、東京、長野、京都、大阪、広島、山口、宮崎などの県外大学からも13校のご参加がありました。関西地方は大雪で緊急対応が急務な状況であっても、東京などの関東エリアは快晴で天候の影響は全くない状況でした。当然ながら地域によって置かれた状況に違いがあり、有事の際は遠隔地にある大学と情報共有する意義やネットワークをけ可能性実感できる機会にもなりました。

阪神・淡路大震災の教訓からの大学運営について

 第1回となる今回は、第1部で「大学におけるリスクマネジメントと危機管理」をテーマに2人の講師から話題提供いただき、第2部で講師と参加者で「情報交換会」を行いました。一人目の話題提供者・学校法人玉田学園 神戸常盤大学・神戸常盤短期大学部 理事・法人本部長・地域交流センター長の中村忠司氏から、「大学におけるリスクマネジメントと危機管理について」と題してお話いただきました。内容は「阪神・淡路大震災の教訓からのマネジメント」、「リーダーシップの重要性」、「新型コロナウイルス感染症対策としての大学の取り組み」「SDの重要性」など、具体的な大学の実践例を交えた考察です。話題提供時に説明頂いた神戸常盤大学「危機管理マニュアル」については、希望する23大学・団体にデータ提供のご協力もいただきました。 

参加者の声

■大学における危機管理の基本目標の設定「大学運営/経営の視点」について気付きをいただけた。
■阪神・淡路大震災の経験から様々に考え、行動されていることに感心した。
■実体験を踏まえた内容とその際の反省などで、今の大学の危機管理マニュアルが作成されており、参考にしたい」「実体験からのマニュアル整備と地域連携の重要性が非常に参考になった。

「教育学新聞」での全国各地の大学取材の経験から

 二人目の講師・日本私立大学協会 広報部 編集係長 教育学新聞 小林功英氏からは、「私立大学の危機管理体制 身を守る 母校を護る 地域を衛る」と題して、「私立大学の取り組み事例紹介」、「危機管理の3つの要諦(1.迅速かつ正確な情報共有、2. 訓練とマニュアルのPDCAサイクル、3.学生を巻き込む)」などの話題提供をいただきました。

参加者の声

■元気をいただけた。マニュアルを「まずは作ってみる!次は実施してみる!そして見直しが大事」。
■学内で議論が多くマニュアル整備が進まないため、まずはマニュアルを作る後押しをいただけた。
■全国的な事例を知る機会になった。私立大学の危機対応のノウハウを知ることが出来た。
■安否確認システムを導入されている大学での課題(低返答率)や、大学間での安否確認システム連携等についても言及があり、参考となった。また、PDCAサイクルを回す手法についても気付きがあった。

「情報交換会」では大学間連携でできることや状況を検討

 第2部の情報交換会では、今年度から取り組み始めた大学間連携におけるリスクマネジメント体制の構築に向けて策定した「大学コンソーシアムひょうご神戸 緊急時連絡・連携体制図」について説明。この「緊急時連絡・連携体制図」は具体的には、連携団体間で連絡網を作成し、共有・運用することから始めるもの。体制図に基づく連絡網は、緊急時だけでなく平時にも活用することを意図しています。いざという時に加盟校のニーズに応じた、大学間連携におけるリスクマネジメントのあり方を継続的に検討できるように、講師や参加者との質疑応答や意見交換を行いました。

 例えば、神戸常盤大学では自学の緊急連絡網を活用して、年始に専任職員160名で電話での訓練を行ったところ、時間内に伝達できると確認できたそうです。また、参加者からは「本学では部署として連絡網を持っているが活用したことはない。ただし日常的にTEAMS、LINE、メール複数を活用しており24時間不測の事態に対応できるようになっている。記録が残り、携帯電話でも確認可能なのがメリット」など、仕組みとしては整えていても、活用に至っていない事例も話題に。さらに、「大学の避難訓練は行っているか」との問いかけには、「現在はコロナ禍で訓練はおざなりになってしまっている。「防火訓練」はしているが、「防災訓練」はできていない。2016年に学生20,000人規模の防災訓練を行った。当時は安否確認カードを配布しOCRで読み込ませていたが、今後、アプリの活用が課題となる」と、コロナ禍を経て、実地訓練が中断している現状もわかりました。

当日の様子
【神戸常盤大学・神戸常盤短期大学部 中村氏(左)/ 日本私立大学協会 小林氏(右)】

参加者の関心・今後、期待するテーマなど

■安否確認システムの各大学での平時での活用方法や訓練実施方法などお伺いしたい。
■大学規模に合わせたマニュアルや経験の共有ができれば有難い。本学では地域との連携も重視している。神戸常盤大学様のマニュアルをぜひ参考にさせていただく。
■意見交換での話にも出ていたが、緊急の情報共有が必要となった際、どのようなITツールを活用しているか事例を知りたい。私立大学を取り巻く環境は益々厳しくなっており、色々な観点で情報を共有できることは有益である。
■情報漏洩や、ツイッターなどの書き込み、今回多くの大学に送られてきた爆弾テロの偽情報に対する対策などについて、各大学の対応などを示してほしい。
■ネット炎上への対処法について、他大学の経験を聞きたい。

まとめ

 参加の事後アンケートにおいて全体フォーラムの内容について「よかった」81%、「まあまあよかった」19%、「あまりよくなかった」「よくなかった」は0%。参加後アンケートでは「他大学でも同じようなことが課題であることがわかりました」「リスクマネジメントに係る他法人様の具体例を伺うことができてよかった」「マニュアル作成の参考になった」「小規模大学と大規模大学双方のお話を聞くことができ、参考になった」など、具体的に日常業務の参考にしていただける回答をいただきました。

 このほか、「全国的な大雪の中でのリスクマネジメント、危機管理に関する講演で、自然災害に対する備えの重要性を認識しながら拝聴できた」「自分の身近ですぐにできることとして、日頃からベクトル合わせをしたいと意識することが出来た。身近な仲間とどんな意識を持って働いているか、有事のことを考える前にまずは日頃のコミュニケーションが円滑か意識しなければと思った」など、目的としていた「緊急時の加盟校間の協力・情報提供体制の構築」について、経験や蓄積する経験や知見を幅広く共有いただきました。ご参加いただいた皆様に御礼申し上げます。今後も「リスクに関する情報交換会」の実施を継続してまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

記:大学コンソーシアムひょうご神戸事務局 中水かおる