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Pure Reason Revolution 『Coming Up To Consciousness』 (2024)

7/10
★★★★★★★☆☆☆


Pure Reason Revolutionはこれまでの4枚で、ポストメタルにも通じるヘヴィなギターリフやシンセサイザーも積極的に取り込んだ攻撃性、華やかなハーモニー、そして10分に迫る大曲をしっかり聴かせる巧みな展開力を磨いてきたが、5枚目となる本作でやや方向転換してきた。プロデュースはこれまで通りボーカルJon Courtneyによるセルフだが、刺激やインパクトで勝負したり卓越した演奏力を誇示するのではなく、コンパクトかつジェントルな歌ものを聴かせる上品な方向に進んでいる。

方向性としてはThe Pineapple Thiefの今年の最新作に通じるところがあるように思うし、実際アルバムにはその主要メンバーであるBruce Soordがギターで、Jon Sykesがベースでサポートしている。また結成メンバーだったChloe AlperがJamesでの活動に専念するため脱退し代わりにAnnicke Shireenがボーカルとして加入。更にMy VitriolのRavi Kesavaramがドラムで加入している。

Pink FloydPorcupine TreeMuseからの影響はいつも通りだが、そこに後期Talk Talk, Elliott Smith, The Smile, 最新作のArctic Monkeys、そして古いジャズの教則本から受けたインスピレーションを混ぜ合わせている。特定の楽器を主軸に置くのではなくむしろ様々な楽器やエフェクターをパッチワークのように組み合わせ、美しいコーラスを持った歌の数々を仕上げている。

アルバムは8つの曲と6つのインタールードで構成されている。どの曲も、研ぎ澄まされた緊張感と優雅な柔らかさが織りなすコントラストを持っている。豪奢なピアノと静寂の組合せが華やかな”Dig Till You Die”、ヘヴィなリフと伸びやかなメロディがカタルシスを生む”Betrayal”, “Useless Animal”、ピアノとボトルネック奏法ギターが上品かつ物悲しいムードを生む”The Gallows”など、曲の完成度は非常に高い。

John Courtneyは本作で、17歳でこの世を去った愛犬への深い悲しみ("Useless Animal")や、やりたくないことをやり続ける人生の虚しさ('Dig Till You Die")など、喪失感のあるテーマを取り上げている。そのせいか、激しい演奏を見せる曲でもどこかに哀愁が見え隠れする。

42分とは思えない満足度。プログレだとかオルタナだとかジャンル云々は抜きにして、単純に一枚の優れた上品なロックアルバムとして、広く聴かれてほしい。



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