イタリアの学校給食

イタリアの学校給食のお話をする前に、まず簡単にイタリアの学校と生活習慣についてお話ししなくてはいけません。

 イタリアにはイタリア特有のシエスタという文化があります。これはお昼過ぎにある休息の時間で、13時すぎ頃から夕方の16時頃~17時頃までの間にあります。この時間はイタリア中の商店、企業、官公庁まであらゆる施設が休みます。 開いてるのはBARや食堂などだけで他はみんな休みます。このため小中学校もお昼までで終わりです。

みんなシエスタの時間を自由に過ごしますが、多くの人々はこの時間にゆっくりと睡眠をとります。私もピエモンテ州にあるリストランテで働かせ ていただいているときに、朝8時に出勤してキッチンの皆んなでお昼にまかないを作って食べて、13時からは一旦家に帰って17時まで休息をとっ てからまた出勤して夜24時まで仕事という毎日でした。 お昼に家に帰ってテレビをつけると日本でも人気のアニメの鳥山明のドラゴンボールやアメリカのザ・シンプソンズが放映されていましたが、「な んでこんな時間に子供向けのアニメがやっているんだろうと?」と不思議でしたが、なるほど子供達が帰ってきて見る時間なんですね。日本では夕方に子供向けの番組がやっていますが、イタリアではお昼に集中して放映されています。 こんな生活が毎日続いたら睡眠過多になってしまうと思うでしょうが、イタリアの社会は朝が早く、6時にはもうBARも賑わい、みんなカフェを飲みに来たり市場に買い物に行ったりします。7時くらいにはもうスーパーも開いて、多くの施設や公共機関は始まり始めます。 

毎日お昼で学校が終わりだと日本の学校と比べると授業時間が足りないのでは?と皆さんは思いますよね。それなら塾に行くのか、いえイタリアでは日本のように塾がありませんし、習い事にも行きません。そもそも子供が家から出るときは親が連れて行かなきゃいけないんです。 しかし大丈夫。日本と違ってイタリアの学校には運動会も家庭科の授業も道徳も実技系の授業一切がなくイベント等もありません。プールもないんです。掃除等も子供達でなく学校が雇った用務員がやるんで子供達は勉強だけして帰ります。なのでお昼までの授業で十分に足りてしまうのです。 イタリアでは子供の送り迎えは親の責任なので親御さん家族かもしくはベビーシッターが来ます。学校は勉強を教える場所なので学校以外での出来事はすべて親の責任です。給食を食べる子は食べてから帰り、食べない子は家に帰ってから食べます。 イタリアの学校給食はチケット制になっていて、1食3ユーロ~5ユーロほど。レートにもよりますが大体400円から650円といったところで しょうか。 もしかしたら日本よりも若干高いかもしれませんが、日本は食材の一部には国庫補助があり安く購入できたり、人件費や設備費、器具などは都道府県別の別予算みたいですから一口に日本より高いとも見れないかと思います。 低所得の家庭は助成の対象で低価格もしくは無料になるそうです。このため日本のように給食費未納の問題は発生しないようです。
イタリアは有機栽培の農業に力を入れている国の一つで、学校給食にも有機が取り入れられていて、一部もしくは全てに有機食材が使われています。 なんと始まったのは1986年で、食器用洗剤まで環境に優しいものが使われ、食材調達の基準も厳しく遺伝子組み換え食品も使えません。 以前イタリアの北東部エミリア=ロマーニャ州の農家に取材に行ったときお伺いしましたが、家畜の餌にも遺伝子組み換えの飼料を使わないそうです。多くの農家が牧草地を持っていて、家畜用の穀物も生産しているのでそもそも海外から仕入れることもないのだそうです。 また、イタリアは地産地消にも力を入れていて、基本的に地元で手にはいる食材は地元から手に入れるよう心がけています。 地元の協同組合からかもしくは独自で調達ルートを作ってそれぞれの学校で食材を手に入れてるそうです。

メニューはサラダか前菜から始まってパスタかリゾットのプリモピアット(日本で言うところの主食)、肉か魚のセコンドピアット(メインディッ シュ)、チーズの主菜、野菜の付け合わせとパン。これが大体主な内容です。同僚のイタリア人にも聞きましたが大体イタリア全土どこもそんなに変わらないと思います。私が通った料理学校でもこんな感じでした。 パンと果物は必ずつきます。家庭内でもパンは基本的に常に毎日食べるもので、食事には欠かせません。食後に果物を食べるのも一般的で皆さん毎日食べます。日本とは違い切って出されず、丸々出てきたのを自分たちでテーブルナイフでカットして食べます。
飲み物はミネラルウォーターです。 配膳は全て係りの大人たちがやります。ちゃんとイタリアの食事のマナーに沿って前菜から順番に一皿ずつ食べます。
有機食材を中心に使い、地元の食材を中心に調達するので、イタリアの有機栽培の生産量と生産農家は日本とは比べ物にならないくらい多いです。 こういった多くの公共の団体も使い、国が推し進めているので需要が生まれ生産高も上がっているのですね。
ここまで読んで皆さんは「イタリアの給食ってすごい!華やか!コース料理みたい!」と思う方もいるかもしれません。しかしイタリア人の友人に聞きましたが、毎日同じような味付けの料理が出され、パスタの麺ものびていたりで美味しくなかったと言われました。しかし他の友人に聞いてみ たら美味しくて自分は好きだったと言っていました。地域や小学校によってかなり変わってくるようで、そこらへんは日本も同じですね。 また、イタリアは絶対にイタリア料理しか出ません。また基本的に地域の郷土料理です。なんで幼稚園や保育園から中学高校卒業まで毎日ずっと同じような料理を食べ続けるのです。 しかし給食も食育のうちです。子供達に郷土食材や料理、自国の食文化と料理を教えるのはとても良いことだと思います。
これまでイタリアの給食の素晴らしいところを紹介しましたが日本の給食は世界トップとも言っていいくらいレベルの高い物かと思います。 バラエティに飛び、栄養価を考え、美味しく暖かな学校給食はどこの国でも見られるものではありません。

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