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地方のスモールビジネス備忘録。銀行法改正で試される地方銀行の覚悟。(元銀行員の視点)

2021年11月22日に改正銀行法が施行となりました。この改正により今後、地方銀行が大きな変化を迫られることになりそうです。

(日経新聞)銀行、広告・人材派遣など可能に 改正法で問われる創意


改正内容を一言でいうと、銀行が他の事業をやっても良くなったということです。これまでは、銀行が本業外へ事業多角化をすると損失が出てしまった時に預金者にとってリスクがある、ということで色々と規制がありました。

それでも少しずつ規制緩和されて、保険商品や投資信託の販売がOKとなったり、地域商社設立が可能になったりと段階的に緩和されてきてましたが、今回の改正は大幅な緩和となり、実質的に何でもありになったと言えます。

(参考)金融庁 法改正に関する説明資料PDF


地方銀行の存在意義

可能性が広がったとはいえ、銀行からすると簡単に関連事業を開始するという訳にはいかない現実もあるかと思います。銀行の経営判断として、銀行の資源を活かした事業の多角化をどのように進めるかという戦略面での課題がひとつ。そして、戦略が描けたとしても銀行内部にそれを推進できる人材が十分に存在しないという戦術・人材面での課題もあるからです。

法改正による事業規制緩和によって、これまでは競争原理が働きづらかった地方銀行ですが、今後は全国的に二極化が進んでいくように思います。将来的には、銀行同士の買収だけでなく、銀行以外の企業に買収されたり、外資企業やファンドに買収されたりと、地方銀行の統廃合がこれまで以上のスピードと多様な形で進む可能性もあります。

二極化していくという話に戻ると、銀行業界に競争原理が働くことで一部の独力で稼げる銀行とその他、というように実力の違いではっきりと分かれていくのではないかと思います。

①独力で稼げる銀行
完全に自前でゼロから事業企画や人材育成を進めるのは厳しいと思うので、外部企業との協業や買収によってスピード感のある事業構築が可能な銀行の存在感が大きくなります。自行の方針を定めて、それに必要な人材とノウハウをいかに集めてグループ会社内で活用できるかがポイントとなりそうです。

②他社に使われる銀行
主体的に自行の事業展開の方針を描けずに、これまでと変わらない「銀行業」を継続する場合、他社の代理店として使われるだけになってしまう可能性があります。銀行が持つ信頼性と顧客データ、顧客との距離感といった強みを他者に切り売りするだけでも収益アップになるかもしれませんが、遠くない将来に自行の存在意義が問われることになるリスクがあります。

競合は銀行じゃない

実際、今回の銀行法改正をビジネスチャンスと捉えて、すでに大手は動き始めています。

NRIの新サービス自体は素晴らしい取り組みだと思います。ただ、銀行の広告業進出支援と銀行主体に見えて、銀行のメディアとしての価値を利用したNRI主体のマーケティング支援事業というビジネスモデルです。これは、今回の銀行法改正で銀行に解放された「データ分析・マーケティング・広告」事業が本来的に目指す形では無いのかなと思います。

もちろん、このNRIのような、全国の銀行を顧客と捉えたBtoBビジネスの数と質が増えていくことは、全体としては良いことだと思います。あくまで銀行視点で見たときに、今後NRIのような「便利なサービス」が増えていったときに、このようなサービスを使わされる、もっというとそのような企業に「使われる」状況を想定しておく必要があります。

改正銀行法は銀行にとっての自由化ではありますが、むしろ新たに開かれた市場に参入する銀行以外の企業が恩恵を受けるかもしれません。

試される銀行の覚悟

地方創生を国の重要な課題と位置付けて、2015年から「まち・ひと・しごと創生」が謳われています。当初から地銀など地方金融機関が果たす役割は大きいのでは期待されていましたが、これまでの役割と貢献度合いはかなり限定的なのが実際だと思います。

銀行本部の専門部署ならまだしも、支店レベルでは資金ニーズ以外の経営相談ニーズの収集発掘と対応は難しいという現場レベルの問題はありますが、一番の要因は「銀行にとってメリットが無い(少なすぎる)」ということでした。

ただでさえ融資利率が低い状況で、さらに個別の経営支援を無償でやる理由も余裕も銀行にはありません。これまでどおり融資を行ったり、保険商品や投資商品の手数料収入で稼ぐことが優先されるのは自然です。

もちろん、このような現状を国も銀行側も分かっていない訳が無く、2015年から本格的に始動した地方創生をさらに一歩進めるという意思表示としての銀行法改正という面もありそうです。

今回の規制緩和によって自由度が増す反面、銀行とは何かという課題を突き付けられることとなった地方銀行ではありますが、これまで以上に地方金融機関や各企業が緊密な連携を取れるということでもあるので、各プレーヤー同士が良い関係を築きつつ地方活性化の新たな流れに繋がればと思います。

以上、地方のスモールビジネス備忘録でした。

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