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地方のスモールビジネス備忘録。北の達人の経営思想の凄みを感じた話。『売上最小化、利益最大化の法則』感想。

先日、北の達人コーポレーションの社長さんの本が出たよと、ある経営者の方に教えて頂きました。早速購入して読んでみたところ、キャッチーなタイトルからは想像できないほどの骨太な内容で、大変興味深く拝読しました。

スモールビジネス型の事業を行っていたり、始めようとしている方にとってオススメの、経営の本質部分までカバーしている保存版だと思いました。


好きな切り口で経営を学べる

経営哲学や戦略に関する本は、具体的にどうすれば良いか分からないことがあります。同じように、ノウハウやケーススタディといった戦術に関する本は、具体的過ぎて自分に適用するのが難しい場合があります。

本書では例えば、汎用性の高い「5段階利益管理表」という戦術レベルの実践を通じて、管理会計の戦略レベルや哲学部分にまで至ることも可能な内容になっています。そのほか、マーケティングや人材についても同様の学びを得ることができると思います。

経営哲学・戦略・戦術といった縦の切り口と、管理会計・商品・人材といった横の切り口のように主要な経営要素をカバーしていて、これらの組み合わせのなかから、読み手が自分の興味や課題に合わせた示唆を得ることができるようになっています。


企業規模向けオススメの読み方

贅沢な悩みではありますが、得られる学びの切り口と深さが多様すぎて、自分にどう活かすか難しいという場合もあるかもしれません。そんな場合は、次の「営業利益額」の企業規模別におすすめの活用方法を勝手にご紹介します。

① ~1000万円
本に書いてあることをそのままマネする。

② 1000万円~1億円
本に書いてある戦術レベルと戦略レベルの話を分けて理解して、応用する。

③ 1億円~30億円
自分がやっていることの再確認と言語化。


北の達人が経営ノウハウを公開した理由?

スモールビジネス視点から見て、経営全体をカバーする素晴らしい本が出て嬉しい一方で、北の達人がどうしてこのタイミングで、自社の経営ノウハウを公開するような本を出版したのか、という部分も気になりました。ビジネスモデル的に、社長や会社が有名になるメリットがあまり大きくないはずですし、本書の中にもそのような記載がありました。

本書の最後にもありますが、北の達人では、現在の100億円規模から1000億円規模の売上を次の目標として掲げています。1000億円達成の手段のひとつとして「DtoCによるグローバルメーカー」つまりマス市場への商品投入を計画しているとのこと。

これまでは例えば、商品の質(10)× マーケティング(10)× 知名度(1)=100億円でしたが、今後マス商品を展開するとなると知名度の重要性が増して、商品の質(10)× マーケティング(10)× 認知度(10)=1000億円のように、新たなチャレンジが必要になってくるのだと思います。

知名度を増やしていくためには商品が良いだけでも、宣伝広告がうまいだけでもダメで、PR活動による認知度アップが欠かせません。このPR活動部分を、これまでのマーケティングのノウハウと同じ経営哲学と戦略によって組み立ててコントロールしていくことで、1000億円という次のステージに向かう新たなエンジンを作って動かしているのかなと感じました。

その一環としての出版活動だったり、ラジオ局の買収だったり、布石を打っているのかなと思います。こちらは本書内の「目立つプロモーション」との矛盾を感じる方もあるかもしれませんが、それは戦術レベルの話で、戦略レベルでは完全に一貫しているのが本当にすごいと感じます。「目立たないPR」的な仕掛けを展開していくためには、先ほどのラジオメディアの内製化というのは欠かせないのかもしれません。


良い意味で堅実すぎる

せっかくなのでコーポレートサイトに公開されているIR資料も拝見したところ、1000億円達成という目標に対して、マス商品展開以外の施策も同時並行で行われているようです。

① マス向け商品の開発
50億~100億レベルの商品(群)を10個~20個成功させることで1000億円を達成する、これまでのビジネスモデルとは異なる次のステージへの挑戦。


②「北の快適工房」ビジネスモデルの横展開
マス向け商品展開を進めるのと同時に、成功モデルである「北の快適工房」の横展開を進めている。北の快適工房の売上100億とすると、別業界や商品カテゴリで同様の事業を10個成功させることができれば1000億達成という道筋が可能。


マス向け商品ノウハウ×横展開の相乗効果

将来的にマス向け商品が成功し、ひとつの事業で1000億円達成したとすると、今度はそのマス向け商品のノウハウの横展開が可能。そうすると、1000億円×10社で1兆円の大台まで見えてきます。

逆に、どちらか一方がうまく行かなかったとしても1000億円の達成の確率は、どちらか一方だけやった場合よりも確実に高まるため、事業リスクの幅をコントロールする、より厳密にいうとリスクの下限をコントロールしているのが手堅いと思います。

このように、縦横方向を同時に伸ばしていく経営戦略によって確実な1000億円達成と、今からその先の1兆円までを見据えているように感じました。

ゼロから価値を生み出していく創業者の方の話は凄みと説得力があって大変興味深いですし、心から尊敬しています。経営支援を行う者として、事業を行う方やその会社にとって、少しでも貢献できればという想いを新たにしました。

以上、地方のスモールビジネス備忘録でした。

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