第02章:ゆうしゃ の たーん
勇者はいとも簡単に僧侶の症状を和らげてみせた。僧侶は期待に胸を膨らました。
僧侶「勇者さまは、かつて私と同じ症状に悩まされていたと聞きました。でも、勇者さまというお立場や、その立ち振る舞いを見ると、とても信じられません。」
勇者「はははっ、そうですか。これでも当時は、相当な苦悩を抱えていましたよ。では、自己紹介も兼ねて、まずは私の経験についてお話をしましょうか。」
僧侶「はい、是非。」
勇者は、あばれアスパラの素揚げを一口食べ、僧侶にどうぞとジェスチャーをし、ゆっくりと語り始めた。
勇者「では、そうですね、、あれは、私が37歳で勇者に就任した年のことでした。セントラルギルドの北アリアン勇者として。」
僧侶「それはすごいですね。大手ギルドの勇者さまだとは伺っておりましたが、花形エリアじゃないですか。」
勇者「同期の中でも比較的早い昇格でした。がむしゃらに働いていたら、運も味方して大抜擢されたという感じですね。パーティは精鋭ぞろいで、そのリーダーですから、とても名誉には思いましたよ。でも、今思えばプレッシャーの方が強かったかもしれません。」
僧侶「そういうものなんですね。」
勇者「勇者に任命され3カ月が経とうとしたある日、私の人生は一変しました。」
僧侶「(ゴクリ、、)」
勇者「その日は、朝から休憩をする暇もなくモンスターとの戦いを繰り返していました。夜になり町に戻ろうかと考えていた時、ふと気配を感じ振り返ると、すぐ背後にモンスターがいたんです。驚いてすくみ上がってしまいましたが、幸い、モンスター側も驚いたようで逃げていきました。ほっとした直後、血の気がひくような感覚に襲われ、そのまま気を失いました。」
僧侶「貧血ですか?」
勇者「血管迷走神経反射と言われる症状です。詳しくは後で説明しますが、これは問題の序章にすぎませんでした。」
僧侶「何があったのですか。」
勇者「倒れたその日以来、徐々に、私の心身に様々な呪いが牙をむきました。倒れた日の3日後、モンスターを狩りに行くことになったのですが、突然の動悸と不安感に襲われ、また血の気が引き、倒れそうな感覚に襲われました。その日以降もたびたび、改善されることなく、どんどん悪くなっていく感じがしました。」
僧侶「、、、」
勇者「症状がまた出るんじゃないかと強い恐怖を感じていました。モンスターを狩りに行く時もそうですが、乗馬している時、武器屋で列に並んだ時、王様へ報告しなければならない時など、他の場面でも、また倒れそうな感覚、パニックに襲われるようになりました。」
僧侶「勇者さま!私もです!私もまさにその症状に苦しんでいるんです!」
勇者「こうなると、日常生活に支障がでてきます。ホントに苦悩しました。私は、なんとか、勇者の仕事を休職することなく乗り切ることができたわけですが、正直、外に出ることは苦痛で仕方がなかったです。でも安心してください、最後は克服できましたから。」
[攻略の手引き]
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