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食材の切り方を変えると、料理がたのしくなる

10年以上も前の話です。
料理本の編集担当になって経験も浅く、すべてがはじめてのとき、料理研究家さんの撮影に立ち会わせていただいたことがあります。

今回のご依頼は「にんじん」「大根」の冬野菜を使い切るレシピのご考案です。なんどかレシピ考案のやり取りをさせていただき、「撮影コンテ」を用意します。先生がご提案くださるレシピはすべて文字ベースですから、「こんな仕上がりかしら?」と想像します。そしてスタイリストさんといっしょに相談しながら、器のオーダーや撮影のイメージも打ち合わせします。

撮影当日
先生が作られた料理は、、、、想像以上のものでした。

にんじんがまるごと1本、タテ半分に切られた細長い状態でビーフシチューの中で煮込まれていたのです。

先生のレシピを見ますとたしかに「にんじんを半分に切る」と書かれています。でもヨコ半分に切るとは書かれていません。であるならば、タテ半分に切っても「半分に切る」となります。そうか、タテに切る方法もあったのかと目からうろこがおちました。

先生がおっしゃるには
「にんじんはヨコ半分に切ると上半分は太くて、しっぽのほうが細くなるでしょう。でもタテ半分に切れば均等になるからこれがいいかと思って」と。

たしかにそのとおりです。
食材の切り方は一つじゃない

この経験はいろいろな場面で応用できる貴重な体験となりました。たとえば
・玉ねぎはタテ半分に切るんじゃなくて、ヨコ半分に切ってみよう
・さんまはヨコ半分に切って、はらわたを指でかき出してみる
・豆腐は包丁で切らず手でちぎる

まいにちの料理は、豪華なものを作る必要はなくって、冷蔵庫にある食材で何が作れる?どう切ってみたらいい?みたいな「ゲーム感覚」があると、料理がたのしくなっていくんだと思います。



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