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できることを一つ一つ床に降ろしていく

歳を取ると、

今までできていたことが

段々できなくなる。

楽しかった思い出も

記憶から薄れていき、

得意だった料理も

頭の中からレシピが一枚一枚消えていく。

どこまでも一人で行けたのが、

家の外に出るのでも人の手を借りなければならない。


今までできたことを

一つ一つ床に降ろしていって、

一列に並べていくような作業。

人生の前半では

目の前にあるものを拾い集めては肩に乗せ、

ずい分と“えばって”歩いていた。

できることをかき集められるだけかき集めて、

気が付いたら人生の折り返し地点。

せっかくのコレクションも、

これから少しずつ手放し始めなければならない。

どんな人でも

赤ん坊のころはなにもできなくて、

大人になるにつれ、

できることを増やしていく。

そして同じように、

人生の後半では

歳を取るにつれ、

できることを手放していく。

どんどん身軽になっていく一方で、

どんどん不自由になっていく。

その不自由と上手に付き合っていくことが、

「老いる」ということだ。

今までできたことを

一つ一つ床に降ろして

一列に並べて、

「ああ、自分が集めてきたものはこれか」と、

できなくなってから懐かしむ。

今までできたことができなくなることは、

頂いたものをお返しするようなものだ。





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