見出し画像

『光のとこにいてね/一穂ミチ(文藝春秋)』を読んだ感想。

一章ごとの感想になってます。
※長文、ネタバレがお嫌いな方は、読書メーターへどうぞ。
https://bookmeter.com/users/1097368/authors/6427



第一章 羽のところ


主人公達が出会うためには必要な場面だけど、母親のはすっぱな素顔いんの?
不倫?までさせる必要あるの?
果遠ちゃんに、「小綺麗なホームレス」みたいな、極端な格好させる必要あるの?
と思ってしまった。
一纏まりが短いので読みやすい。
なくても大丈夫だと思うけど、初版限定スピンオフ掌編は、早めに読んでおいた方がいいかも。(出版社は、本編読了後に読むことをすすめているけど。)
私も、小学校のとき、同級生に勉強を教えて貰った方が分かりやすかったことを思い出した。
?タイトルは、果遠ちゃんが、きみどりを埋めるためにスコップを探しに戻る前、結珠ちゃんに待っててと言った後にかけた言葉から?
死んだハムスターをトイレに流すのは、やめて欲しいと思った。


第二章 雨のところ


果遠ちゃんが美少女に成長して、再登場して驚いた。彼女のお母さんも美人だったけど。
私も生理が来たとき、お赤飯炊かれて嫌だった。
めちゃくちゃ読みやすくて、さくさく進んだ。
お兄ちゃんが藤野さんを自宅に招いたのは、軽いお見合い、結珠ちゃんと付き合わせるためかな?
お母さんがピアノを捨ててしまったわけは分かるような、分からないような微妙な感じだった。
また、結珠ちゃんは、合唱祭の、伴奏係になるかも知れないし。合唱祭まで練習しないといけないのに。小学校の先生になるのは反対だとしても……。

オーガニックは高いのに、母子家庭で、よくそんなの買えるな……と思っていたら、店長が下心で果遠ちゃんのお母さんにあげていたとは……。監査でバレたらしいけど、業務上横領に問われるのは店長では?
果遠ちゃんのお母さんは、面倒ごとは嫌らしいけど、無料の市民相談とか、女性相談センターとか行ってみたら?と思ってしまった。
果遠ちゃんも、こういったことを知られるのは嫌かも知れないけど、S女はキリスト教系の学校みたいだから、このまま学校に通えるか、相談だけでもしてみたら?と思ってしまった。
(これは親を捨てるのとは別だし、親が当てにならないなら尚のこと、将来は大事。)
果遠ちゃんとの、二度目の別れの場面、また、彼女の口から、「光のとこにいてね」が出て来た。
何か、第一章から薄らと感じていたことではあるけど、「裕福な家に生まれたから幸せとは限らない」、「美人に生まれたから幸せとは限らない」と言われているような気がした。

第三章 光のところ


無事、再会できて良かったけど、パターンやな……と思ってしまった。結珠ちゃんは病気で休職中、果遠ちゃんは田舎でスナックのママになっていて、二人とも結婚してる。果遠ちゃんには、小二の娘までいる。
果遠ちゃんは、高校を退学する前に、藤野にメールを送ってしまったそうだけど、あの後、やり取りが出来れば良かったのにと思ってしまった。結果は同じだったかも知れないけど、あの頃の果遠ちゃんが、「ちゃんとした大人(P.221)」だと思える人が一人でもいて良かった。生徒が退学することになったり、不登校になったりしたとき、学校の先生に出来ることは少ないし、藤野にも何か出来たとは思えないけど。
十四年も経っているのに、結珠ちゃんはパッヘルベルのカノンを弾けるって、すごいな。果遠ちゃんとの思い出の曲とはいえ、私ならとっくに忘れてしまってて、弾きたいと思っても弾けない。
果遠ちゃんのお母さんも、高校を出ていないみたいだけど、お母さんはともかく、果遠ちゃんは大検を取ってみてもいいんじゃないか?と思ってしまった。
かぶれやすい=「人と違う自分が好き、みたいな。(P.247)」は、ちょっと?だったけど。

第三章になって、ようやく二人の関係が動き出して、面白くなってきた。
ここはどこかな?和歌山かな?と思いながら読んでいたら、近大マグロと、トルコの軍艦が座礁した話が出て来た。
私は小学校が嫌いだったし、学校の先生も好きじゃないけど、果遠ちゃんと、結珠ちゃんが休職した話を聞きながら、「 保護者から『これだから子どものいない先生は』って言われた時は途方に暮れちゃったな。(抜粋)(P.261)」と読んで、苦笑してしまった。
子どもがいたらいたで、今度は、「子どもがいる先生は、自分の子ども優先で、自分の子どもは私立に行かせて、公立を馬鹿にしてる」って言われるでしょう?って、思ってしまって。
(結珠ちゃんの勤め先が、私立か公立かは分からないけど。)
SNSがない時代から、保護者も子どもも、先生のプライベートはきちんと把握してるので、怖いですよ……。
私も、どこから出て来るのか知らないけど、「A先生の奥さんの実家は、同じ住宅地のあそこにあって、たまに訪ねて来てるらしい」とか言われているのを聞いたことがあるし。
小学校の先生はハードなので、特に低学年持ってると、「膀胱炎になるよ」と聞いたことがある。「授業が終わって、行こうと思っても、子どもが話しかけて来るので、相手しないといけない」と、その先生は言ってたけど、私は、「(その人と、その人が知ってる人達は)いい先生だな」と思っただけだった。

和歌山弁はよく分からないので、違和感を覚えながらも、我慢して読んでたんだけど、瀬々の面談の前辺りから、気になって仕方がなくなってしまった。
和歌山ではないけど、和歌山に近い三重県に住んでいた人達の言葉が独特だったのを覚えているし、ここに書かれている言葉とは丸っきり違ったので。
最初は、地域差かな?と思ってたんだけど。(特に、水人さんの言葉が引っかかってしまって……。)
(あってたら、ごめんなさい。)

藤野って、本当によく出来た夫だな……。

結珠ちゃんがきちんと友達と付き合ってきたからだろうけど、高校時代、亜沙子さん達、「内部生オンリーの「お昼を食べるメンバー」(P.90 )」に、お弁当の中身がいつも同じで気づかわれていたこととか、結珠ちゃんは果遠ちゃん以外に深入りされるのを拒否してたけど、亜沙子さんが結珠ちゃんの休職理由も知っていて、踏み込んできたのが、私は不思議と嫌じゃなかった。妊娠すると、マタニティハイになったり、幻覚みたり、鬱みたいになったりする人達もいるけど、私はそっちしか知らなかったので、びっくりしてしまった。
ここで、変に分かり合う、結珠ちゃんが感動で胸が熱くなる展開にならなくて良かったと思ったし、亜沙子さんの勇気と深追いしないで、結珠ちゃんに電話を切られる前に、結珠ちゃんを気づかう言葉をかけたのが、読んでて嫌じゃなかった。
私は、彼女のように出来る自信はないけど。
私は人に気づかわれることが嫌だった人を知っているし、彼女は私がそれを知っていて、彼女を気づかわないようにしているのも嫌だったらしいから。

本人達より、家族の方が二人の気持ちに気づいているような気がした。

結珠ちゃんと直くんのお父さんの、「それより、(P.313) 」に驚いた。
あまり家庭のことには関心がない人みたいだけど、中学生の息子が家出して、姉のところとはいえ、和歌山まで一人でやって来たのに……。しかも、不登校だったらしいし、結珠ちゃんがこっちにいるのも、藤野が、仕事も続けられないほど参っていた結珠ちゃんを、「環境を変えてゆっくりさせてやりたいと思った(P.222 )」からなのに……。
瀬々ちゃんが直くんを気に入ってるのは、何か、果遠ちゃんと親子だな……って気がして笑ってしまった。
病気療養のためとはいえ、結珠ちゃんのお母さんも、中学生の息子を父親と残して、よく長野へ行ってしまったな……と思ってしまった。
(こういう考え方は、もう時代に反しているのかも知れないし、病気療養中の人達や、子育て中の人達に余計なプレッシャーかけて、傷つけるような事はしたくないんだけど。ただそう思っただけで、どちらがいいとか悪いとかではないです。)

果遠ちゃんのママとおばあちゃんの母子関係も、本当のところはどうだったのか分からないけど、孫を寝かせない、着衣で見えないところ、脇腹や二の腕をつねり上げるのが、虐待慣れしているようで嫌だなあ……と思ってしまった。

水人さんにも下心があったといったら言い過ぎかも知れないけど、果遠ちゃんの言うことを聞いて、おばあちゃんに心臓マッサージをしなかったら、彼女を手に入れられるかも知れないという暗い考えが頭を過ったのかも知れないと思ってしまった。彼自身が、果遠ちゃんのことを「鶴の女房」と言っているので。

高校を中退する前に、果遠ちゃんが、おばあちゃんから虐待されていることを誰にも相談できなかったことも悔やまれるけど、おばあちゃんが倒れたときに、とりあえず、心臓マッサージしてみてから考えることが出来なかったように、一番怖いことは、無力感にとりつかれて、思考停止しまうことかも知れないと思ってしまった。
こうすれば絶対よくなる!保証なんてないので、何とも言えないところだけど。

果遠ちゃんと結珠ちゃんの想いが、ようやく通じ合って良かった。

ギュスターヴ・ル・グレイの写真が見たくなってしまった。

結珠ちゃんのママの過去は、想像以上にすごかったな。
団地のあのおじさんに、それほどの魅力は感じなかったけど。
どうやって、結珠ちゃんのお父さんと知り合って、後妻になったのか知りたいかも。
あそこの団地に住んでる人達は、貧乏人ばかりって、おまけのスピンオフに書いてあったけど、結珠ちゃんのお母さんからは、それっぽさは少しも感じられないので。
すぐ効く睡眠導入剤は処方されたことがないけど、病院も睡眠導入剤の処方にはかなり厳しくなっているので、不思議だった。
睡眠導入剤って、あんなに早く効くものなんかな?結珠ちゃんのお母さんは、ビールを二杯?飲んでいたけど、強すぎると危ないんでは?と思ってしまった。
薬の効きやすさも、人によるんだろうけど。水人さんって、かなりガタイのいい人だったと思うし。

最終的に、上手く行って良かったけど、一体、何だったんだろう?と思ってしまった。
水人さんの家族は、瀬々ちゃんは受け入れられても、果遠ちゃんはダメみたいだし。
将来のことを考えると、直くんは、お兄さんのところ、九州の離島に行くよりは、東京に戻った方がいいような気もするけど。
これで、ようやく、果遠ちゃんと結珠ちゃんは、ずっと一緒にいられるようになるのかな?

チサさんも、果遠ちゃんのおばあちゃんもお母さんも、結珠ちゃんのお母さんも、あまり幸せではなかったような気がするので、結珠ちゃんと果遠ちゃんには幸せになって貰いたい。

そのようにいかない時もあるけど、結珠ちゃんの、「心の中の家に誰をどこまで入れるかは直が決めていいの(P.431)」ってのは、上手いなあ……と思ってしまった。

最後は、ホラーというか、ギャグというか、ちょっと無理そうな気がしたけど。結珠ちゃんに、こんな根性があったんだ……って驚いた。危ないから絶対に真似して欲しくないけど。



この記事が参加している募集

読書感想文

よろしければ、サポートお願いします。もっと良い記事が書けるように、使わせて頂きます。