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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2/ブレイディみかこ(新潮社)』を読んだ感想。

気になった章の感想。
※ネタバレ、長文がお嫌な方は、読書メーターへどうぞ。
https://bookmeter.com/reviews/103422046

1  うしろめたさのリサイクル学

不要品をリサイクルしていただけなのに、切ない。
いらないものでも、「人に欲しいと言われたら、惜しくなる」という話を思い出した。


2  A Change is Gonna Come-――変化はやってくるーー

「ヒジャブは女性への抑圧と差別のシンボルだから、一国のリーダーならよけいに被ってほしくない。(後略)(P.28)」という、ブレイディさんのイラン人の友人の発言は、狭い世界に暮らす私にとって、新しい視点だった。(彼女には、ニュージーランドのモスクで銃乱射テロ事件が起きたとき、「愛と思いやりの象徴のような姿と報じられ、多様性と連帯の重要性を示したと賞賛されたアーダーソン首相の行動が、「物をよく知らない大学生が、また感傷的になってああいうことをやっちゃうのよね(P.27)」と見えたらしい。)
試し読みした時も思ったんだけど、日本人に胸の前で手を合わせてお辞儀する人って、滝クリの東京五輪誘致のスピーチに影響されたか、タイと混同してるのかな?ターバン母さんの娘さんのように、一芸、ものすごい歌唱力を持たない子でも、音楽部入部で学校に来れるようになれるのか気になる。


3  ノンバイナリーって何のこと?

ブルースの発祥地や歴史に関するちょっとトリッキーな質問や、ドラムやギターのパーツの名前なども聞く音楽のテストが面白かった。(P.52)
男性でも女性でもない人たちのことを『they』というのは知ってたけど、米国ではすでに単数形?は『ze』とか『ve』とかいうらしいというのは知らなかった。(P.53)


4  ここだけじゃない世界

「12歳の子どもに進路なんて言ってもまだわかるわけないじゃん(P.81)」とは思わないけど、そこから未来が決まってしまうのは、まだ早すぎると思うし、子どもにとって、子どもの立場に立って考えて、いろいろ助言してくれる大人の大切さを思った。
子どもが、ここだけじゃない世界に出られるかどうかは、本人の努力や運以外のものも絡んで来るから。
息子さんの大事な友だちのティムの将来が少しでも明るくなることを祈った。


5  再び、母ちゃんの国にて

続編が出ると、「そういえば、あの話どうなったんだろう?」と気になることもあるけど、読者の反応を考慮した流れは余り好きじゃなかった。コロナ前、日本に沢山インバウンドがやって来てた頃、関西でも、中国の 方々がよく雇われていたことを思い出した。彼/彼女たちは、中国語も英語も日本語も出来て、親切で、日本人って全然あかんねんな…って思ったことを思い出した。(同じようなスキルを持った日本人を雇おうと思ったら、人件費高そうやけど…。)


6  グッド・ラックの季節

英国の「音楽を商品化するというビジネスサイドのことも学ぶらしい」BTEC(商業技術教育委員会ーーイングランド、ウェールズ、北アイルランドの中等教育卒業認定と継続認定を行う)のミュージックのコース、いいなあ。コンサートのプロモーターになったつもりで、クライアントに会場の提案をするためのプレゼン資料を宿題でつくってる子に敵うわけないやん…。ブレイディさんって、音楽ライターもされてたと思うけど、息子さん優秀で羨ましい。
確かに、「自分みたいになるな」という大人がいる街は悲しい。でも、そういったことを言わない大人が住む街だから豊かだとは限らないし、子どもが貧困に陥らない大人に育つとは限らないと思う。


8 君たちは社会を信じられるか

分からなくていいのかも知れないけど、「BOLLOCKS」や、「KKK(クー・クラックス・クラン)」、「マチズモ」が分からなかった。
日本の台風19号による河川の氾濫で、東京の避難所からホームレスの人が追い返されたニュースは、詳しいことは忘れてしまったけど、「(ホームレスの人を受け入れなかった避難所の職員は)社会を見誤っていた、というか、見くびっていた」のかな?ブレイディさんの息子さんのスピーチのテーマはホームレス問題じゃないそうだけど、自分が避難している避難所に、ホームレスの人がやって来たら、苦情を恐れず、受け入れられるか?分からない。避難所の真ん中には入れられなくても、何とか入れる方法を考えたいけど。人間には、肉体の死の他に社会的な死があり、公務員は縦割りが強いと聞くから、難しそう。
これくらいの年頃の方が、社会に関心があって、いろいろ考えていた、社会にぶつけたい気持ちが色々あったなと思う。
英国の国語のスピーチの授業はすごいな、周りにどんな大人(兄弟含む)がいるかで、子どもの関心も左右されるんだなって、当たり前のことを思ったけど。


9 「大選挙」の冬がやってきた

「ミセス・パープルの受難」で、『お前らはいつも俺を黙らせようとする』って言ったおっさんの問題を軽く受け流していいのか?ちょっと疑問に思った。その人がそう言ってるだけかも知れないけど、「俺が喋ってるときに、遮るな!(P.162)」って、先に言ってたんで。「人を怖い目に遭わせてる(P.168)」で済ましてしまうのはどうかなと思った。


10 ゆくディケイド、くるディケイド

PC(ポリティカル・コレクトネス)の問題より、ソウル・クイーンのように才能がなければ音楽部にさえ居場所がなくなるのかな?才能がない子はどうしたら浮上できるのだろう?と考えていたら、ティムにもハッピーな結末が用意されていて良かった。
『Fairytale of New York』の歌詞のように、時代にそぐわなくなっていくものもあるだろうけど、曲そのものを消してしまうのはどうかと思うし、きつい言葉でクリスマスに毒づき合(P.182)っている場面であることも忘れてはならないと思う。アメリカでの成功を求めて、ニューヨークに移住したアイルランド移民のカップルの歌というところに歴史を感じるし。



11 ネバーエンディング・ストーリー

双極性障害が分からなかった。
今じゃなくても、子どもが社会に出る前に、親が子どものために出来ることは、「できる範囲で最高のアカデミックな教育を受けさせること(P.202)」、スペシャルな才能がある子たちは知らない、だけじゃなく、子どもが安心して前に進めるように、背中を押して、ずり落ちそうになったら支えてあげることくらいだと思う。
子どもの重荷にならないことも大事だと思うけど、みんな個性が違うから、そこまでは私には分からない。
子どもほどじゃなくても、大人の身に起こることも、気持ちも毎日変わるし。親には、子どもよりは大人であって欲しいとは思うけど。



前作よりも読みやすく、パワーアップしているような気もしたけど、その分、荒削りの良さがなくなってしまったようで残念だった。
私はブレイディさんの息子さんのように優秀ではなかったけど、こんなんだったら行ってみたいぞ、ブレイディさんの息子さんの通う元底辺中学校、入部してみたいぞ音楽部!
むかしは大器晩成なんて言葉があったらしいけど、そんなもん滅多にないし、大人になってからやり直しのきかない社会になってしまったばかりか、どんどん競争に入る年齢も低くなっていってしまっているように思えるので、中学校ではもう遅いかも知れないけど、日本の公立中学校にも頑張って貰いたい。
『ぼくイエ』は完結してしまったけど、出来れば、ブレイディさんの息子さんが大人になるまで読んでみたかったな。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ (新潮社)


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