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note de 小説「時間旅行者レポート」その10

Nu・・・・n Nu・・・・n

と静かにしかしけたたましく
Zeitmeschineは動いている。

ここは完全個室のため
息苦しい。

換気口は設計されて
いるのだろうし
空調も完備されては
いるだろう。

しかし
なんといっても
こんな大きな機械が
動いているのだ。

その周りを多くの研究員が
シラミのように動き回って
いるので

その息苦しさと暑苦しさ
といったらない。

ーーーーーーーーーー


「あなたには今から
このゴーグルをつけて
いただきます」

08はそういうと
ボクのRayーBanを
胸ポケットから取り出すと
特殊なゴーグルをボクに
あてがった。


「ウェアラブル端末ですよ。

これであなたがどこに行こうとも
現在22世紀の我々の指示を伝達
出来ます。

それに
この端末から
あなたは私たちにアクセス
出来るのです。

ですが
現地に行った際には
誰にも気づかれては
いけませんし

落としたり
誰かの手に渡ってはいけません。

歴史が変わりますから。

そうなれば大変です。



ここだけの話なんですが

未来人が過去に行って歴史を
進めてしまった過去、というか
未来での事件があるんです。

その時間犯罪者って
誰だと思います?」


いきなり問われ
ボクは思いつくまま
名前を考えた。

そして
一人の人物の
名前を挙げた。


「あの人、ですよね。
もしかしたら・・・


歴史上の天才。

画家にして医者
科学者にして天文学者の


「そうです。
レオナルド・ダ・ヴィンチ

その人です。
彼は未来人です。

彼は歴史を動かしました。
ルネッサンス運動をこの
ヨーロッパにもたらしたのです。

そこから歴史は大きく動きます。

しかし
彼はまだ産まれていません。


遠い未来に産まれて
このZeitmeschineを利用し

遠い過去に旅をして
監視の目をかいくぐり
歴史を変えてしまいました。

天才、というか
彼は未来では
ただの馬鹿モノです。

絵画を多少はカジッていた
だけの普通のヒト。

それが
過去にいけば
天才と称され
歴史の本に載るのです

これは恐ろしいことです。
未来のDimentionz社の落ち度です」


ーーーーーーーーーーー


水をいただけないか、と
頼んだ。

室内の乾燥しきった環境と

迫り来る緊張と

誰も知る由のない歴史上の真実
とで


喉がはりつきそうなほど
乾いていたのだ。


やがて差し出された
冷たい水をボクは
音を立てながら
飲み干した。

ーーーーーーーーーーーーーーーー


「落ち着きましたか
Dr.オリバー。

さぁ、では今から
あなたが乗る
Zeitmaschineをご紹介
しましょう。

機械に近づくだけ
という条件で

決済を頂きました」


08とボクは
巨大な樹木のような
Zeitmaschine
向かって歩き出した。


近づけば近づくほど・・・


その巨大さに
圧倒される。

どすぐろさを放つ
重厚感は本当に
圧倒される。


たった一人の
人間を時空を越えて
送り出すためには
こんな設備が必要なのか。



08は言う。

「ハーバー博士は
まだ満足されていません。

あの方の目指すところは

手軽さです。


これは博士の受け売りですが

例えば自宅の書斎の引き出しを
開けるだけで自由に時間旅行が出来る
タイムマシンという乗り物

とか


試作品の瞬間移動のシステムも
もう少し簡素化して

輪をくぐるだけで別の空間に
移動できるくらいの手軽さで
なければならない

と。

ハーバー博士が得た着想は

すべて極東ヤーパンで
大昔から続いている
アニメーションから
だそうです。


面白いでしょう。
すべては博士の
アニメ趣味の一旦から
スタートしているんですよ。


DORA・・なんとか
言いましたね。

わたしもさほど詳しくは
ないのですが・・・

すいません」



博士の着眼点が
アニメだと知らされたが
それにしても
その趣味の延長線上が
これか。

Zeitmaschine。

それにしてもすばらしい。

これは22世紀に
産まれた天才
ハーバー博士の偉業なのだ。

これに乗り込むちっぽけな
アリ一匹がボクなんだ。


途方にくれるボクを
すれ違う研究員たちが
会釈をする。

拍手をくれる
ヒトまでいたし

握手をせがまれたりも
した。

不馴れだった。

ーーーーーーーーーーーー


ひとまず
この人造の樹木を
一回りしたあと

わたしは
旅立ちまでの
レクチャーを受けた。

死刑台の13段目まで
すぐそこまで来ていた。


ーーーーーーーーーーーーー

続きます。




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