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2022年 情報開示の総まとめ

1年前の2022年1月19日、CDPは21年報告書の結果報告会にて、気候変動分野における日本の調査対象企業を、東京証券取引所の再編により、4月に開設するプライム市場の全上場企業、1841社を対象にすると明らかにしました。

それまでは600社程度だったところ、合計1900社ほどになった模様。これまで一部上場企業では、既に対象となっていた企業もあったところ、今回の再編を契機にプライムを選択した企業には、手が回らなかったところもあったことでしょう。

なお、2022年の結果は昨年CDPより発表がなされています。既に紹介しておりますので、参照下さい。

このような、ショッキングな(?)発表で年が明けた2022年ではありましたが、気候変動に限らず、サスティナビリティ関連の情報開示については、様々な動きがありました。

まず、3月には「GXリーグ構想」が政府から発表されました。当初の賛同企業は440社でしたが、再募集を掛けた結果、658社に増加しています。

まぁ、EU-ETSのような排出量取引制度を日本でも導入しようというものですが、あくまでも「ボランタリー」であることが特徴。法的拘束力のあるEUとは根本的に異なるのですが、どこまで「性善説」を利用していけるのか、見守りたいと思います。

排出量取引制度といえば、もう1つ注目に値するのが、ICAOによる「CORSIA」です。国際線を有するエアラインが、排出削減目標を有し、未達であれば「CORSIA適格クレジット」で埋め合わせるもので、基本義務となっています。

もちろん、オフセットする前に削減努力ありき、です。なので、CORSIA適格燃料である「SAF Sustainable Aviation Fuel」の開発も活発化してきました。
日本のユーグレナも頑張っていますが、やはり、海外メーカーの独壇場となっています。ガンバレ、ニッポンのエアライン。


情報開示ルールについては、いわゆる「アルファベット・スープ」状態であったところ、各イニシアチブ、環境NGOも問題認識を持ち始め、統一に動き始めた年でもありました。

そんな中でも、こと環境施策についてはリーダシップをとることが至上命令となっている(!?)欧州の動きが目立ったように思います。

その中でも、注目すべきはやはり「炭素国境調整措置(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)」でしょう。米国もSECが対抗措置を公表しているものの、注目度からすると格下でしたね。

こちらについては、紆余曲折があったものの、欧州議会とEU理事会で暫定合意に至りましたので、23年10月以降に運用が開始されることは間違い無いでしょう。初期は移行期間の位置づけで、報告のみが義務化、それ以降完全な CBAM開始となります。

他方、11月シャルム・アル・シェイクで開催されたCOP27前後で、にわかに脚光を浴びたのが「ネット・ゼロ」及び「カーボンニュートラリティ」

こちらも「定義乱立」状態だったところ、大本営のISOが「Net Zero Guidelines」をリリースして話題になりました。

2022年6月にUNFCCCが発表した「Race to Zero Campaign」において定められた「Race to Zero criteria」がありましたが、より厳密に詳細になっていた点と、何よりも「ISO」が発表したところに意義があるかと。「ISOで決まってますから」とひと言言うだけで納得してもらえるのは、ラクですし。

クレジットの種類、品質及び利用についても、様々な議論がありました。
いわゆる、「オフセットできるのか否か」というイシューです。

GHGプロトコルPCAF、ISO、Pathfinder Frameworkのような算定イニシアチブ、SBTiのような目標設定イニシアチブ、TCFDやCDPのような開示公開イニシアチブ、いずれもそろって、「オフセットはまかりならん」という立場。

それでいながら、クレジットの購入は、BVCM(Beyond Value Chain Mitigation:バリューチェーン外における排出削減)に寄与する、つまり、大企業のバリューチェーンに入らないような中小企業や、個人、団体等における排出削減を応援するものとして、めちゃくちゃ「推し」ています。

ということで、このようなクレジットの取り扱いについてのルールの統一化、明確化が進んだのも2022年。具体的な成果がリリースされるのが、2023年ということになります。

一応、国内でも「カーボン・クレジット・レポート」なるものがまとめられました。国内で説明するのであれば、使いやすいものになっているかと。

最も信用のおける、クレジットに関する「基本書」は、ハイレベル専門家グループが、COP27において発表した報告書でしょう。「ネットゼロのグリーンウォッシュに対してゼロ・トレランスでなければならない」との理念の元、作成されています。

ハイレベル専門家グループとは、アントニオ・グテーレス国連事務総長が、2022年3月31日に非国家主体によるネット・ゼロエミッション誓約に関する専門家グループ「High-Level Expert Group on the Net-Zero Emissions Commitments of Non-State Entities」として設立されたものです。


これまでは「作る側」のお話でしたが、「使う側」も動きがありました。
最たるものは、「First Movers Coalition(FMC)」と「Breakthrough Energy Catalyst(BEC)」

FMCは、COP26で米国のバイデン大統領と世界経済フォーラムが立ち上げたもので、現在50社以上が参加しています。新しい脱炭素技術の開発と普及を加速させることを目的に、費用対効果が低いものの、革新的な技術を活用した先進的な製品を、率先して購入していくものです。

BECは、米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏が、2015 年に設立した Breakthrough Energy が 2021 年に立ち上げたプログラムであり、研究開発・実証を終えた革新的な脱炭素技術(グリー ンテック)を用いた個別プロジェクトへの投資等を行い、当該技術の社会実装を加速させるものです。

なので、FMCはクラファン、BECはファンドという位置づけでしょうか。
個人としてこのようなイニシアチブに参画するのは無理がありますが、このような、地球環境維持に資する商品・サービスが上市された際には、積極的に購入することで、応援してあげたいですね。


2023年が始まったと言うことで、ざっと22年に起こった出来事をおさらいしてみました。振り返って思うのは、とにかく、朝令暮改の世界である点。

サスティナビリティの世界では、成書になるのを待っていたら、何も得られません。成書を見ると言うことは、過去を振り返るということになります。

逆に、実質的な議論が行われている、小委やタスクフォース、ワーキンググループの内容だけを追っかけていたら切りが無いし、次の会合、あるいは、上位の委員会でひっくり返されるかもしれない。

本当に悩ましいのですが、与件を持たず、とにかく、議論の流れを追っかけて全体像を把握し、必要と思われる情報をこちらのnoteでご案内していきたいと思っています。

なお、申し訳ありませんが、過去の記事のフォローはほとんどできません。
上記のような状態なので、最終的な判断はご自身でお願いしたいです。
とはいえ、誠実に記事にしていきますので、ご期待頂ければ幸いです。


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