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VRFがIFRSに統合

8月1日付で、VRFがIFRSに統合されました。

IFRS財団、CDP及びCDSBは、21年11月に開催されたCOP26において、下記3点をコミットしておりました。

1.CDSBのIFRSへの統合
2.VRFのIFRSへの統合
3.IFRSによる情報開示プロトタイプの公表

1.は1月に完了していたものの、2.は6月期限だったところ間に合わず、今回ようやくというところです。

ちなみに、3.は3月31日に草案が公開済で、7月29日までパブコメを実施していました。年内にファイナライズ、年明けにリリースする予定です。

VRFはIIRCとSASBの統合でできたので、サスティナビリティ開示基準
を含んでおり、CDSBは気候変動開示基準ですので、この統合により、
IFRSが2つの開示基準をオーソライズすることになります。

ISSB:サスティナビリティ開示基準/気候変動開示基準
IASB:国際会計基準

なお、ISSBはSASBを運用する立場で、基準作成にあたり、SASBの産業
ベースのアプローチ手法を踏襲しているので、これまでSASBを採用して
いた企業には、そのまま使い続けるようアドバイスしています。(とはいえ、SASB自体は完全に引き継がれて、消滅します)

アルファベットスープも、ようやく落ち着いてきましたね。

さて、「情報開示」=「TCFD」という方程式が頭の中にある方も多いのでは無いでしょうか。「ISSBやらIFRSやらって、どういうこと?」という声が聞こえてきそうです。

順を追って説明しますね。

そもそも「情報開示」というと、有価証券報告書に代表されるような「財務情報の開示」を指すのが一般的だったと思います。(今でもそうですが)

ところが、近年の超大型台風や風水害、干ばつなど、気候変動が企業の経営に及ぼす影響が無視できなくなってきたことを受けて、「財務情報」だけでなく「非財務情報」も公開して欲しいという機関投資家が増えました。

しかしながら、公開するに当たって共通のルールが無かったことから、各社各様の報告をするしかなかったところ、それだと、他社比較ができないですよね。投資判断に使いたいから要求したのに、その目的を達成できない。

ということで、G20の要請を受けて、金融安定理事会(FSB、Financial Stability Board)が設立したのが「TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures 」です。2017年6月に最終報告書を公表し、2021年10月に、実務ガイドである附属書が改定されました。

これで「めでたしめでたし」とFSBは考えていたのでしょう。というのも、TCFDは「Framework(提言)」ですので、具体的に何をどう公表すればよいかは記載されていないからです。Pre TCFDよりもよくなったけど、不十分。

そこで、FSBはTCFD(Framework)からISSB(Standards)への移行を明言しています。Standards(基準)ですから、具体的な開示項目の記載があり、同セクター内において比較が容易にできることになります。

冒頭に述べた「3.情報開示プロトタイプの公表」がそれに当たります。

FSBが目指す姿

ということで、結論。

未着手の場合は、まずTCFD提言に沿った公開の準備を進めましょう。
プライム市場に上場をしていながら基準を満たしていない場合は急務です。
猶予期間は明確にされていませんが、目処となる年数はあるようですし。

他方、公開済の場合は、草案に眼を通して現状満足できていない箇所を分析、来年の正式リリースを見て、修正に着手すればよいかと。

リリースを受けてCDPの質問書も改定されるでしょうから、CDP対応していれば、漏れなく、ISSB対応もしていることになるでしょう。

年内のファイナライズへ向けて、IFRSからの情報提供もあるでしょうから、適宜ご案内していきますね。

なお、情報開示については、こちらでも紹介しています。
無理に理解する必要はありませんが、ご参考程度にご覧くださいませ。

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