見出し画像

SDGsに関する企業の意識調査(2022年)

帝国データバンクが、SDGsに関する企業の意識調査を2020年から行っています。今年で3回目ですが、「世界でもSDGsという言葉、概念の浸透が著しく高い」という日本の特殊事情及び、ガラパゴス化しやすい状況も、見て取れるような気がしました。

まず、結果のサマリーを見てみましょう。

大企業が中小企業よりも積極的なのは、「あるある」ですよね。

温暖化対策ひとつとっても、資金力も人的資源も限られる中小企業は、目の前の課題に注力せざるを得ません。だからこそ、私も「GHG削減パートナー」として支援しているわけです。リソースに余裕が出れば、長期的視点に立った経営へシフトできます。

そもそも、中小企業でさえ48.9%が「積極的」と回答していることが驚き。
これも、「SDGsへの取り組みによる効果を実感」している企業が66.5%も存在しているからなのでしょう。

何を持って「実感」しているかは不明ですが、恐らく、「お客様や機関投資家、取引先、地域社会などのステークホルダーが、SDGsに取り組んでいる企業を評価している」ようだと、定性的に感じているからだと推測します。

購買行動によって、企業の商品開発等の事業活動を、より気候変動・生物多様性・労働環境・ダイバーシティに配慮した方向へ移行させる、「エシカル消費」という概念が広まっていることと、リンクしているようで、好ましいとは思います。

しかし、「言っていること」と行動が異なっていることは当たり前です。まして、アンケートなどでは「べき論」で回答する人は多いことでしょう。

これは逆も然りで、ステークホルダーがプラスに評価してくれるから、とりあえず「自社商品でSDGsのターゲットに合致しているものにマークだけつけておく」という、ウォッシュに近いことを行っている企業も存在します。

これって、何だか、SDGsのドレスを纏った仮面夫婦みたい。
実の無い施策を愚直に実行する、日本のお家芸を見ているようです。


それでは、中身を少し見てみましょう。

「SDGsへの理解と取り組み」については、着実に増加しています。「言葉も知らない」は0.6%ですから、聞いたことがないビジネスパーソンはいないということですね。

SDGsへの理解と取り組み

「SDGs17ターゲットのうち、力を入れている項目」をみると、ターゲット8「働きがいも経済成長も」がトップ。ただ、これは、SDGsの目標にあるからではなく、目下取り組まざるを得ない課題であり、たまたま、目標にあったから「ラベル付け」しました、感が拭えないですねぇ。

SDGs17ターゲットのうち、現在力を入れている項目(複数回答)

GHG削減パートナー、環境コンサルタントとしては、海と陸の豊かさ、安全な水へのアクセスについても、コミットして欲しいです。押し並べて、商品やサービスに直接的に結びつきやすいターゲットが上位に来ている気がしないでもないです。

なお、アンケートでは、「SDGs17ターゲットのうち、今後最も取り組みたい項目」も尋ねていますが、現在力を入れている項目と殆ど同じなので割愛します。

最後は「SDGsへの取り組みによる効果」です。

SDGsへの取り組みによる効果(複数回答)

まずは、定性的でも効果を「実感できている」という、ポジティブな回答が多いことは評価できるとして、これを、定量的にしていきたいところ。

開示項目とその内容について、機関投資家の方と話す機会もあるのですが、
「開示が目的になっているものは不要」と指摘されることもありました。突っ込んで聞くと、「開示するためにコストをかけたのに、結果を伴わない、単なる負荷になっているものは、やる意味が無い」ということのようです。

ですので、ステークホルダーの中で、お客様と同じく重要な、金の貸し手である機関投資家に対しては、定量データを示しながら、SDGsに取り組む意義を示す必要がありそうです。

GHG排出量算定支援を行っている私としては、かけて頂いている負担に応えるだけの結果、成果を出していかなければならない、と我が身を振り返ったところです。


ちなみに、冒頭で述べた「日本の特殊事情」は個人的に感じていたところですが、夫馬さんがズバリ指摘されていました。SDGsが流布しているのは世界で日本くらいで、海外ではESGの方が認知度では圧倒しているそう。

SDGsが国連で採択された2015年を起点にこの2つのワードの検索数を調べると、日本は18年頃からSDGsが急増する一方、ESGは横ばい。主要国の米・仏では15年の段階からESGが一定の検索数を確保し、以後も伸びているが、SDGsの検索は地を這っているとか。

ちなみに、インドではSDGsはさほど検索されず、ESGが18年頃から目に見えて増えているそうです。

今回のアンケートは、「調査対象は全国25,405社で、有効回答企業数は11,337社(回答率44.6%)」という情報しかありません。

回答傾向を見ると、主に国内をマーケットにしている企業のように思われます。国内に参入している海外の企業や、海外をマーケットとしている企業が含まれていれば、夫馬さんの意見を踏まえると、そもそも、SDGs自体を知らず、アンケートが成り立たないこともあるのでは?と思いました。

ガラパゴス化しないためには、一にも二にも、双方向のコミュニケーションが必須です。「どう伝えるか」ではなく「どう伝わっているか」

加えて、お客様が、どのような購買行動を起こすか。そのお客様は、一義的には国内のみであっても、海外も見ておく必要があります。

日本人は、結局海外モデルを、時間が経過した後に取り入れます。日本で鳴かず飛ばずだった商品が海外で人気となり、やおら、国内で火がつくことって、「あるある」ですよね。

悲しいかな、まだまだ、「タイムマシン経営」は有効でしょう。

ベースは世界でありながらも、国・地域に適合した商品を導入する。
「グローカル」という視点。そんな、R&Dができればベストですよね。

これからも、環境対策を「コストセンター」にしない、利益を生み出す「プロフィットセンター」にする、そんな支援を行っていきたいです。


もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。