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食物の排出量に関わるエトセトラ

毎年4月に公開されている「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第4条1及び第12条1に基づいて、附属書I締約国(いわゆる先進国、もちろん、日本も含まれます)は、毎年自国の温室効果ガスインベントリを作成し、4月15日までに条約事務局へ提出することが義務付けられています。

日本も毎年作成し、推計・公表するとともに、排出・吸収量データ及び関連情報を含む温室効果ガスインベントリを条約事務局に提出しています。

つまり、これが、日本の対外的な公式の温室効果ガス排出量という訳です。

これを見ながら思うのは、「割合としては大きくはないものの、農業分野からの排出量も無視できない」ということ

以前、このデータベースについては、シリーズでご案内しました。

2020 年度の農業分野の温室効果ガス排出量の内訳を見ると、稲作からの CH 4 排出(37%)が最も多く、家畜の消化管内発酵に伴うCH4排出(24%)、窒素肥料等の施肥に伴うN2O排出等の農用地の土壌からのN2O排出(18%)となっています。

米の生産起因の排出量が全体の1/3と大きな割合を示していますが、家畜起因も合計すると稲作を超えています。

飼育期間や、飼料・水などの使用等々を考慮すると、排出量削減のために「肉食から草食へ」というのは明らかですね。

ということで、本日は、食物の排出量のデータをご案内したいと思います。

こちらは、食品1kgあたりのGHG排出量。
ファーストフードの王道、ビーフハンバーガーがダントツ。
チーズもそうですが、やはり畜産系は多いですねぇ。
飼料の生産による排出量に加え、メタンやN2Oの排出も効いています。

Our World in Dataより

ところで、牛乳とココナッツミルクで差が無いのが不思議な気がします。
といいますのも、牛乳は「牛の乳」ですので、メタンの排出があるところ、ココナッツミルクはないからです。どうしてでしょう。

素材生産に関する、サプライチェーン毎の排出量を示したのがこちらですが、ここに答えがありました。

Our World in Dataより

「Processing」つまり、加工工程の排出量が大きくなっているわけです。
牛乳は、搾乳して殺菌してパッキングするだけですから当然ですね。

先ほどのグラフと、こちらのグラフを比較すると、このようなことが色々分かってきて、興味深いです。これを見ると、肉の生産は、飼育に加え、土地利用変化の寄与も大きいことが分かります。

その点、農産物でも、コーヒーやチョコレートのように、土地利用変化の寄与がある場合、全体として排出量が大きくなっていると言えそうです。

また、一見して分かるのは、植物由来の方が動物由来よりも圧倒的、10倍から50倍も排出量が少ないと言うこと。「肉食から草食へ」はことほど左様に「真実」だと言えるでしょう。

なお、ナッツでは、土地利用変化が「マイナス」になっています。

これは、生産のために、元々穀物畑だったところへ植林されたことにより、樹木による吸収量が反映されたものと言うことです。

GHGの算定や削減では、「見えない」ものが相手だけに、実感が湧かないこともあろうかと思います。時折、このように、視覚で理解するようなグラフィカルなデータもご紹介していこうと思います。ご期待ください。

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