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排出量算定従事者マストデータ〜その4

「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」をテーマに4回目。

1〜3はこちら

1次データが得にくいのはスコープ3の各カテゴリー共通の課題ですが、その中でも、廃棄物は入手困難。だからこそ、切り込んでいきたい。

そのために、IPCCガイドラインに沿って日本のインベントリを算定している報告書で勉強している最中でした。

算定は、5つのカテゴリーに分けて行われていました。

A.固形廃棄物の処分
B.固形廃棄物の生物処理
C.廃棄物の焼却と野焼き
D.排水の処理と放出
E.その他

前回、AとBまで終わりましたので、今回はCを見ていきます。
焼却は熱回収及び燃料として使用するか否かで別れています。

ただ、一般廃棄物の「野焼き」は廃掃法により禁止されているので、「発生していない」と報告するそうです。

他方、産業廃棄物は「違法」に実施されているとし、報告はしているとか。
データなんてあるの?と疑問に思いましたが、1996年以降については、環境省環境再生・資源循環局「産業廃棄物行政組織等調査報告書」に示される、野外焼却される産業廃棄物廃プラスチック類の量を用いているそうです。

まぁ、私達が算定する上では意味がありませんので、今回は「廃棄物の焼却」のみを読み進んでいくことにします。

区分毎に、CO2、メタン及びN2Oの算定対象の有無が定まっています。

熱回収無しの場合の算定区分
熱回収あり・燃料使用ありの算定区分

表中の略語の意味はこちら。

NA Not Applicable 該当しない
NO No Occurrint 発生しない
IE Included Elsewhere 他に含む

CO2は、回収の有無及び一廃/産廃に関係なく、生物起源成分は対象外。
メタン・N2Oは、全て算定対象ではありながらも、発生しない場合もあれば、他の分野においてカウントされているということのようです。

なお、温対法の報告では、「廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用・廃棄物燃料の使用」において、CO2、メタン、N2Oが排出される活動区分と排出係数が示されています。

ごみ発電を行い他者に供給した場合、控除できる/できないなど、詳細は「第Ⅱ編 温室効果ガス排出量の算定方法」に直接当たって下さいね。

さて、それでは、重要な排出係数についての記述を見ていきましょう。
一般廃棄物/産業廃棄物、熱回収あり/無し、の区分毎に、CO2、メタン、N2Oのガス種毎の排出係数を求める計算式が決まっています。

「一般廃棄物/CO2/熱回収無し」はこちら。

一般廃棄物/熱回収無しのCO2排出係数

これが、「産業廃棄物/CO2/熱回収無し」になると、

産業廃棄物/熱回収無しのCO2排出係数

違いは、引用する統計データが、一般廃棄物なのか産業廃棄物なのか。
環境省の産連表DBで、廃棄物処理が、公営と民間で分かれていたのは、このためだったのでしょう。

産業連関表ベースの排出原単位(環境省)
一般廃棄物の焼却に関する石油由来のCO2排出係数(乾燥ベース)

CO2はこれでよいとして、メタンとN2Oは?

これは簡単で、インベントリの報告では、環境省「循環利用量調査報告書」及び同調査データに示された一般廃棄物焼却量(排出量ベース)に、環境省「日本の廃棄物処理」から算出した焼却炉の各燃焼方式あるいはガス化溶融炉の償却比率を乗じて推定された値を使います。

このように、毎年アップデートされてるんですね。

燃焼方式別メタン排出係数(一般廃棄物)
燃焼方式別N2O排出係数(一般廃棄物)

これが産業廃棄物になると、さらに簡単で、デフォルト値があるそうです。

種類別メタン排出係数(産業廃棄物)
下水汚泥の焼却におけるN2O排出係数(排出ベース)
産業廃棄物の種類別のN2O排出係数(排出ベース)

ということで、排出係数まで見ましたので、排出量に移りましょう。
計算式はこちら。

一般廃棄物/熱回収無しのCO2排出量
一般廃棄物/熱回収ありのCO2排出量

見比べると一目瞭然。
エネルギー回収する比率をかけるか、しない比率をかけるかです。
メタンとN2Oも一緒です。

報告書では、「酸化係数」や「炭素含有率」「炭素の石油由来割合」といった排出係数の算出に用いるデータの出自や品質、不確実性や時系列の一貫性などについての論証が詳細に記述されています。

実務においては、これを踏まえた上で、あとは入手したデータを元に機械的に毎年算定を行えばOK。

長く続いた、廃棄物処理における排出量の算定の学習も、下水処理のみ。
あと少し、お付き合い下さい。


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