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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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#CDP

算定を止めるな!

CDPの衝撃的なニュースで、年が明けた2022年。 損失と損害(ロス&ダメージ)基金設立を採択したCOP27で暮れました。 そのCDP気候変動レポートも、12月末に結果が公表され、「ヤレヤレ」とひと息ついている担当者も、多いのではないでしょうか。 ただ、ここひと言「算定を止めるな!」 そもそも、算定の目的は、自社のバリューチェーンの排出量を「見える化」することにより、より多く排出しているところ(ホットスポット)を特定し、優先順位をつけて、計画的に削減活動を実施することで

2022年 情報開示の総まとめ

1年前の2022年1月19日、CDPは21年報告書の結果報告会にて、気候変動分野における日本の調査対象企業を、東京証券取引所の再編により、4月に開設するプライム市場の全上場企業、1841社を対象にすると明らかにしました。 それまでは600社程度だったところ、合計1900社ほどになった模様。これまで一部上場企業では、既に対象となっていた企業もあったところ、今回の再編を契機にプライムを選択した企業には、手が回らなかったところもあったことでしょう。 なお、2022年の結果は昨年

GHG削減待ったなしです

2023年に突入しました。 2022年は、4月にnoteを始めたのが、個人的に大きな進歩。 というのも、これまで、個人的な発信をほとんどしてこなかったからです。 もちろん単発的にはありましたが、継続したことがありませんでした。 ただ、お客様の脱二酸化炭素化、持続可能な研究開発、地域活性化等を支援していく中で、その活動のコアとなる部分はほとんど共通しており、繰り返しご説明する過程で、かなりの程度蓄積され、もっと活用できるようにしたいと思い、重い腰を上げたのでした。 具体的に

再度「合目的的」に考えてみた(2)

「合目的的」と言う言葉が妙に納得させるワードなので、果たして、これで説明していていいものか、という不安になる方もいらっしゃるかも。 と自分自身不安に思ったので、払拭するお話をしてみたいと思います。 前回はこちら。 スコープ3基準の第4章「算定と報告の原則」には「スコープ3インベントリーのGHG算定と報告は以下の原則に基づく必要がある。」とあります。 その原則とは、以下の5つです。 ちょっと難しいので、簡単に言うと、 関連性:公開されるデータは、ステークホルダーの意思決

再度「合目的的」に考えてみた(1)

先日、排出係数の扱いについて説明しました。 「排出係数の更新はどのようにすべきか」というFAQに対して、CDPの目的に着目し、「合目的的に判断しましょう」という話です。 今回は、もう少し突っ込んで、特に皆さんの関心の高いスコープ3について、考えていきたいと思います。 ここで、スコープ3の目的を考えましょう。 企業が自社の事業活動が、手の届かない範囲において排出にどの程度影響を及ぼすかを把握し、また自社の活動の変化により上流/下流においてどのような変化をするかを推測する

排出係数は最新に更新すべきなの?

CDP回答絡みで、もう少し。 算定を毎年継続していると、どんどんスキルが上がってきますよね。 データ収集の粒度が細かくなったり、カバーする範囲が拡がったり。 それに併せて、使用する原単位も、産業連関表ベースの粗い2次データから、より現状に即した2次データへ、さらには、サプライヤーとの協力により1次デーが得られるようになったカテゴリーもあるかもしれません。 となると湧いてくるのが、この疑問。 過去の排出量に関しても、排出係数を更新すべきなのか。 基準年の排出量を元に、短

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー2

カテゴリー2は「資本財」 つまり、財務会計上「固定資産」として扱われているものです。 ですので概念としては分かりやすいのですが、いざ算定しようとすると分かりにくいのが、このカテゴリーの特徴ではないでしょうか。 算定に着手したばかりの企業であれば、このカテゴリーは、最初は「ざっくり」かなり「ざっくり」捉える程度でよいと思います。 ・カテゴリー1と重複するところがあるため仕訳に悩む ・複数の事業者が関与する場合が多い(建築物や製造ラインなど) ・導入や建築が長期にわたる場合

素朴な疑問シリーズ〜ダブルカウント

算定しているときにぶち当たる、素朴な疑問。ありますよね。 (というか、そういうことばかりだったりしますが) スコープ3でのFAQでも上位に位置するのは、ダブルカウントだと思います。 例えば、メーカーのカテゴリー9(輸送・配送:下流)は、小売店のカテゴリー4(輸送・配送:上流)ですよね。 メーカーのカテゴリー11(製品の使用)であれば、ユーザーのスコープ1もしくはスコープ2だったりします。 これについては、プロコトルで明確に言及されています。 「スコープ3に内在する」と

スコープ3のカバー率についての疑問

昨日のnoteで、長期SBTのスコープ3のカバー率は90%が条件とお伝えしましたが、補足をしておきます。 まず「カバー率」というときは、そのスコープトータルに対する比率です。 マニュアルに掲載されている、以下の表を見て下さい。 ここに書いていることは、こういうことです、 スコープ1+2の排出量合計に対して最低95%以上カバーしなさい スコープ3の排出量合計に対して最低67%以上カバーしなさい ですが、スコープ1、2はいいとして、スコープ3については、そもそも「合計が

基準年にはこだわるべきか?

目標を立てるとき、最初にすることと言えば、現状把握。 「まぁ、受けてみるか」という試験もあるでしょう。現状なんて把握してないぜ、という御仁もいらっしゃるかもしれません。 それでも、過去問をざっとでも目を通して、受けるか否かを判断しているのではないでしょうか。やはり、一応現状は把握しているわけです。一度受けてみれば、合格に対してどれくらい距離があるか確認できますので、さらに、何をしなければならないかが分かりますよね。 それは、現状把握の精度が向上したからです。 さて、C