マガジンのカバー画像

算定と検証の実際

91
躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
運営しているクリエイター

#GHGプロトコル

カテゴリー11を再度考えてみる

回答企業に対して、CDP2024は、大幅な変更が予定されている旨、メールで案内がされていたことは、noteでもご案内しておりました。 公式サイトでもようやく告知がなされましたが、ヘルプセンターという、非常に分かりにくい場所にひっそりと。こちらについてもご案内済みです。 だからと言うわけではありませんが、来年へ向けて、既に準備を始めている企業から問い合わせを受けました。次回からは、カテゴリー11にチャレンジしたいとのこと。素晴らしいですね。 カテゴリー11「販売した製品の

GHGプロトコルとSHK制度の変換

省エネ法の報告と同時に報告している、温対法の報告。 算定報告公表制度(略してSHK制度:ダサッと思うのは私だけ?) GHGプロトコルのスコープ1・2とSHK制度は、共に、組織のGHG排出量を算定する基準なのですが、微妙に異なっており、実務を担当している人間としては、悩ましい問題です。 そこで、大本営の環境省が重い腰を上げて検討に入りました。 9月12日に第4回目が開催され、「GHGプロトコルと整合した算定への換算方法について(案)」が事務局から提示されました。 「ヤッ

取引先に提供する排出量は?(その1)

CDPの回答書作成、お疲れ様です。 締切日にはアクセスが集中するでしょうから、余裕を持って入力作業行いたいですね。「提出」をクリックするまでは何度でも修正できますので、とりあえずは入力しておきたいところ。 なお、提出後でも11月30日までであれば修正が可能です。 CDPグローバルチームへ依頼しましょう。 7月27日後に提出された回答は評価対象外ですから、とにかく、締切日までにどんな形でも一旦提出しておくことが肝要です。 初めての回答であれば、自社の排出量を算定するので精一

排出量算定〜スコープ1 直接排出

前置きが長くなりました。 これまでの内容は、こちらからどうぞ。 さて、算定企業は、GHGプロトコルに基づいて算定し報告する場合には、2つのオプションを持っていました。 SBT申請をするに当たっても、スコープ1とスコープ2は必須です。 ちなみに、中小企業向けは、スコープ3はマストではありません。 なお、IPCC第6次評価報告書の公表を受けて、ネットゼロ目標を採用する企業が増えていることを踏まえ、SBTは「ネットゼロ基準」を開発しました。 それにおいても、当然ながら、スコー

排出量算定〜バウンダリの設定

算定の第一歩は「目的設定」であることを説明しました。 以降の話は、「GHGプロトコルに基づいて算定し報告する」という前提で話を進めていきますので、ご了承ください。 さぁ、次こそは計算だー とはならないのが、この業務。 そうですね。「何を」算定するかを決めないと、ダメですよね。 「算定対象範囲(バウンダリ)」を決める必要があります。 対象範囲としては、以下の2種類の境界を考えます。 1.組織境界 2.活動境界 「1.組織境界」は前回チラ見せした、こういうことです。

排出量算定〜はじめの一歩

前回は、「検証を受けることを前提に、排出量を算定してみましょう」というお話をしました。どうせやらざるを得ないのなら、さっさと始めて、先駆けてスキルアップしておきましょう、というお話です。 今回は、実際に着手しましょうというお話。 算定式は、各所で紹介されているので、勢い具体的にデータを集め出した方もいるかもしれません。 いやいや、その前に、算定対象、バウンダリを決めないと始まらないよ。 確かに、それはそうです。 財務諸表における、子会社、関連会社の範囲のアナロジーで、

排出量算定〜今やらなくていつやるの?

昨年から今年にかけて、算定を支援するサービスを提供する事業者が急増していることは、以前ご紹介しました。 着手した、着手する予定、すべきかどうか検討中。 各社、置かれた状況により様々かと思いますが、事業継続のためには「やらない」という選択肢は無いと思います。 アイドリングストップ ミラーレスカメラ AR/VR EV LED ZEV/ZEH 技術が変われば、制度が変われば、人が変われば….. 「あり得なかった」ことが「有り得る」ことに。 さらには「当たり前」にも

販売した製品の使用による排出量(解説編)

前回、カテゴリー11についての、お題を出しておりました。 次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、どのようなエネルギーを必要とするでしょうか。 自家用車 食パン どのような場面を、想像されたでしょうか。 まぁ、そんなに難しく考えることではないのであっさりと。 A.自動車であれば、例えば、 1.移動するときに、ガソリン(軽油、電気)を使う 2.洗車するときに、水道水を使う B.食パンだと 1.焼くと

販売した製品の使用による排出量(出題編)

カテゴリー11「販売した製品の使用」 メーカーにとって悩ましいカテゴリー。 なんってったって、ストーリーを作らないといけないですから。 作る側は、意外とお客様のことを知らなかったりしますし。 算定初年度は手が回らないことが多いです。 これについては、徐々に精度を上げていけばよいでしょう。 今日は、そんな悩ましいカテゴリーの排出量について語りたいと思います。 さて、次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、ど何

電力の使用による排出量(解説編)

4月29日のnoteで、電力事業に係わる事業者間で、「排出量はどのようにカウントされるのか?」という記事を書きました。今回は解説編です。 復習しておくと、事業者はこの4者 企業A:燃料採掘事業者 企業B:発電事業者 企業C:送電事業者・電気小売事業者 企業D:最終需要家 で、このような条件を付けていました。 企業Aは採掘にあたり燃料のみを使用する 企業Bは発電した電力を全て企業Dに販売する 企業Bは自社では電力を使用しない 企業Cは企業Bの電力を全量企業Dに送電

電力の使用による排出量(出題編)

電力の使用による排出量はスコープ2 発電に用いる燃料の採掘、輸送および送電による排出量はスコープ3 この認識は正しいのですが、バリューチェーン全体を見渡すと?となることがありませんか? まず始めに、カテゴリー3の定義を確認しましょう。 原本「Technical Guidance for scope3 Emissions ver1」にあたるのが王道ですが、日本語訳「スコープ3排出量の算定技術ガイダンス」をご案内。 これを踏まえて、考えてみます。 発電に係わる事業者は、大

素朴な疑問シリーズ〜上流と下流

私が算定を始めて間もない頃、「???」となったのがこの概念。 普通、「上と下」と言われれば、自分・自社を中心として「上と下」と思いますよね。水の流れと同じように、世界共通だと思っていました。 そんな意識で、スコープ3のカテゴリー「4」と「9」の説明を読んでいると「???」となったんですね。 上流にカテゴリー4があるのは分かりますが、下流にもあるじゃないですか。それで、説明を見てみると、こうなってます。 「費用を負担するかしないか」がキモなのか、と思って説明を探すと、こう

素朴な疑問シリーズ〜ダブルカウント

算定しているときにぶち当たる、素朴な疑問。ありますよね。 (というか、そういうことばかりだったりしますが) スコープ3でのFAQでも上位に位置するのは、ダブルカウントだと思います。 例えば、メーカーのカテゴリー9(輸送・配送:下流)は、小売店のカテゴリー4(輸送・配送:上流)ですよね。 メーカーのカテゴリー11(製品の使用)であれば、ユーザーのスコープ1もしくはスコープ2だったりします。 これについては、プロコトルで明確に言及されています。 「スコープ3に内在する」と

基準年にはこだわるべきか?

目標を立てるとき、最初にすることと言えば、現状把握。 「まぁ、受けてみるか」という試験もあるでしょう。現状なんて把握してないぜ、という御仁もいらっしゃるかもしれません。 それでも、過去問をざっとでも目を通して、受けるか否かを判断しているのではないでしょうか。やはり、一応現状は把握しているわけです。一度受けてみれば、合格に対してどれくらい距離があるか確認できますので、さらに、何をしなければならないかが分かりますよね。 それは、現状把握の精度が向上したからです。 さて、C