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排出量算定〜スコープ1 直接排出

前置きが長くなりました。
これまでの内容は、こちらからどうぞ。

さて、算定企業は、GHGプロトコルに基づいて算定し報告する場合には、2つのオプションを持っていました。

SBT申請をするに当たっても、スコープ1とスコープ2は必須です。
ちなみに、中小企業向けは、スコープ3はマストではありません。

グリーン・バリューチェーンプラットフォーム SBT詳細資料より

なお、IPCC第6次評価報告書の公表を受けて、ネットゼロ目標を採用する企業が増えていることを踏まえ、SBTは「ネットゼロ基準」を開発しました。
それにおいても、当然ながら、スコープ1とスコープ2は必須です。

SBTiネットゼロ基準

さぁ、今度こそ算定です。
GHGプロトコルの、コーポレート基準を参照しながら進めていきます。
定義を確認しておきましょう。

スコープ1:温室効果ガスの直接排出
事業者は、自らが所有または管理する排出源からの温室効果ガスの排出を、スコープ1として報告する。

コーポレート基準 

さらりと書かれていますが、「所有又は管理する」排出源という表現に注意して下さい。

「直接」排出とは、「その場」で実際に温室効果ガスが排出されているということですが、それだけでは不十分なんです。

また、「所有するか否か」に加えて「管理しているか否か」も判断基準に含まれます。これは、算定の目的が「排出削減の機会を探る」ことである点に鑑みれば、「なるほど」と思うのではないでしょうか。

他人の所有物でも、自分の管理下にあれば、排出量が少なくなるような効率的な運用ができますよね。究極「使わない」という選択肢もある。

これに対して、スコープ3はどうでしょう。

直接指示を出すことはできませんよね。全く別個の法主体なのですから。
しかし、働きかけて影響を及ぼすことはできる。
その位置づけが、スコープ3なんです。

ですから、前回ご紹介した、組織境界における「支配力基準」「出資比率基準」の考え方も、この視点に立っていることが分かりますよね。

直接排出はコーポレート基準にこのような例が紹介されています。

・電気、熱、上記の製造:固定の排出源、例えばボイラー、炉、タービンにおける燃料の燃焼から排出される
・物理的、化学的な工程:セメント、アルミニウム、アジピン酸、アンモニアの製造や廃棄物の処理の過程で排出されることが多い
・原材料、製品、廃棄物、及び従業員の輸送:事業者が所有/管理する移動燃焼源(トラック、列車、船舶、飛行機、バス、及び自動車)から排出される
・漏洩排出:意図的、非意図的な漏出であり、設備の連結部、封印部、パッキンやガスケットの漏出や、炭鉱メタンや換気部からの排出、冷蔵設備や空調設備の使用時のHFCの排出、及びガス輸送時のメタンの漏出などがある

コーポレート基準

さて、ここで質問です。
以前ご紹介した、「オンサイトPPA」はどうなるでしょう。

1.オンサイトPPA
需要家所有の敷地(オンサイト)を貸
発電事業者所有の発電所で発電して
その電気を購入して
自社敷地内で使う

簡単ですね。

「発電事業者所有」ですから、スコープ1ではありません。
そう、スコープ2の「間接排出」です。
単純に、電力を購入しているんですけど、それを発電しているのが、たまたま自社の敷地内にあるだけのことです。

これが「自社所有」であれば、スコープ1になる。これも当然ですね。
算定は「使用電力量✕原単位」じゃないですよ。
発電するに当たって消費した、燃料の使用量が原単位です。

それでは、自社の敷地内にある自社の処理施設で廃棄物を処理した場合はいかがですか?

そう。
電力を使えばスコープ2、化石燃料を使えばスコープ1ですね。
ただ、産廃処理事業者が自社の敷地内に設備を設置して処理をしているのであれば、スコープ3カテゴリー5「事業から出る廃棄物」となります。

このポイントさえ理解できれば、社用車で出勤した場合はスコープ1、自家用車で出勤した場合はスコープ3カテゴリー7「雇用者の通勤」となることも、ガッテンしてもらえますよね。

どうですか?
スコープ1、2とスコープ3の区別が、分かってきたのではないでしょうか。

このような感じで、「腑に落ちる」説明をしていきたいと思います。
次回は、スコープ2をお届けします。

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