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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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#スコープ3

サステナ担当悩みどころ(2 )

サス担の方々が、日々の実務の中で直面するお悩み事、様々ありますよね。 前回単発で書いたところ、また、色々と質問を受けました。 なので、時折ご案内していこうと思います。 2回目の今回は、「検証を受けるときのデータ」についてです。 SSBJが日本版S1・S2の確定基準を今年度末までに公表することに加え、金融庁が、有価証券報告書において、財務情報と併せてサスティナビリティ関連情報についても開示義務化を目指しているなど、開示周りが俄然盛り上がっているのは、ご案内の通り。 自主開

カテゴリー11を再度考えてみる

回答企業に対して、CDP2024は、大幅な変更が予定されている旨、メールで案内がされていたことは、noteでもご案内しておりました。 公式サイトでもようやく告知がなされましたが、ヘルプセンターという、非常に分かりにくい場所にひっそりと。こちらについてもご案内済みです。 だからと言うわけではありませんが、来年へ向けて、既に準備を始めている企業から問い合わせを受けました。次回からは、カテゴリー11にチャレンジしたいとのこと。素晴らしいですね。 カテゴリー11「販売した製品の

GHG削減待ったなしです

2023年に突入しました。 2022年は、4月にnoteを始めたのが、個人的に大きな進歩。 というのも、これまで、個人的な発信をほとんどしてこなかったからです。 もちろん単発的にはありましたが、継続したことがありませんでした。 ただ、お客様の脱二酸化炭素化、持続可能な研究開発、地域活性化等を支援していく中で、その活動のコアとなる部分はほとんど共通しており、繰り返しご説明する過程で、かなりの程度蓄積され、もっと活用できるようにしたいと思い、重い腰を上げたのでした。 具体的に

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1②

カテゴリー1のポイントをもう少し、あと3つだけ。 まず、第1点目。 企業の購入は、以下の2つのタイプに区別されると、前回指摘しました。 1.製造に関連した調達 2.製造に関連しない調達 スコープ3基準には1の例が示されています。 ここで「あれっ」と思うものがありそうです。 そう、3の「資本財」という表現。 原文でも「Capital goods」となっています。 不思議に思いながら、読み進めると、こうあります。 「な〜んだ。やっぱり、カテゴリー2じゃん」 ここで、カテ

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1①

それでは、スコープ3に入っていきましょう。 まずは、カテゴリー1「購入した物品・サービス」です。 スコープ3基準での定義は、こうなってます。 算定する際、最も精度が高い方法は「積み上げベース」です。 サプライヤーに算定をお願いして、排出量データを入手する方法です。 具体的には、赤枠で囲んだデータを依頼します。 場合によっては、サプライヤーにとってのカテゴリー9「輸送・配送(下流)」 まで含めることもあるかもしれません。 しかしながら、これは多大なマンパワーを必要としますし

排出量算定〜スコープ2 間接排出 ③

「削減系クレジットは使えない」 これまでも、何度かご案内してきました。 「既存のものから置き換えるのであれば、このレベルの機種を選択しますよね」という機種を選ぶでしょ?だけど、それよりも、遥かに効率がよい機種を導入するので、さらに削減できます。 いやいや、全く新しい技術を使った最先端の製品を導入するので、圧倒的に削減できます。 な〜んて言って、従来品(BAU:Business As Usual)との差分を「削減量」としてクレジット化したものが、「削減系クレジット」でし

排出量算定〜バウンダリの設定

算定の第一歩は「目的設定」であることを説明しました。 以降の話は、「GHGプロトコルに基づいて算定し報告する」という前提で話を進めていきますので、ご了承ください。 さぁ、次こそは計算だー とはならないのが、この業務。 そうですね。「何を」算定するかを決めないと、ダメですよね。 「算定対象範囲(バウンダリ)」を決める必要があります。 対象範囲としては、以下の2種類の境界を考えます。 1.組織境界 2.活動境界 「1.組織境界」は前回チラ見せした、こういうことです。

排出量算定〜はじめの一歩

前回は、「検証を受けることを前提に、排出量を算定してみましょう」というお話をしました。どうせやらざるを得ないのなら、さっさと始めて、先駆けてスキルアップしておきましょう、というお話です。 今回は、実際に着手しましょうというお話。 算定式は、各所で紹介されているので、勢い具体的にデータを集め出した方もいるかもしれません。 いやいや、その前に、算定対象、バウンダリを決めないと始まらないよ。 確かに、それはそうです。 財務諸表における、子会社、関連会社の範囲のアナロジーで、

販売した製品の使用による排出量(解説編)

前回、カテゴリー11についての、お題を出しておりました。 次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、どのようなエネルギーを必要とするでしょうか。 自家用車 食パン どのような場面を、想像されたでしょうか。 まぁ、そんなに難しく考えることではないのであっさりと。 A.自動車であれば、例えば、 1.移動するときに、ガソリン(軽油、電気)を使う 2.洗車するときに、水道水を使う B.食パンだと 1.焼くと

販売した製品の使用による排出量(出題編)

カテゴリー11「販売した製品の使用」 メーカーにとって悩ましいカテゴリー。 なんってったって、ストーリーを作らないといけないですから。 作る側は、意外とお客様のことを知らなかったりしますし。 算定初年度は手が回らないことが多いです。 これについては、徐々に精度を上げていけばよいでしょう。 今日は、そんな悩ましいカテゴリーの排出量について語りたいと思います。 さて、次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、ど何

電力の使用による排出量(解説編)

4月29日のnoteで、電力事業に係わる事業者間で、「排出量はどのようにカウントされるのか?」という記事を書きました。今回は解説編です。 復習しておくと、事業者はこの4者 企業A:燃料採掘事業者 企業B:発電事業者 企業C:送電事業者・電気小売事業者 企業D:最終需要家 で、このような条件を付けていました。 企業Aは採掘にあたり燃料のみを使用する 企業Bは発電した電力を全て企業Dに販売する 企業Bは自社では電力を使用しない 企業Cは企業Bの電力を全量企業Dに送電

電力の使用による排出量(出題編)

電力の使用による排出量はスコープ2 発電に用いる燃料の採掘、輸送および送電による排出量はスコープ3 この認識は正しいのですが、バリューチェーン全体を見渡すと?となることがありませんか? まず始めに、カテゴリー3の定義を確認しましょう。 原本「Technical Guidance for scope3 Emissions ver1」にあたるのが王道ですが、日本語訳「スコープ3排出量の算定技術ガイダンス」をご案内。 これを踏まえて、考えてみます。 発電に係わる事業者は、大

素朴な疑問シリーズ〜上流と下流

私が算定を始めて間もない頃、「???」となったのがこの概念。 普通、「上と下」と言われれば、自分・自社を中心として「上と下」と思いますよね。水の流れと同じように、世界共通だと思っていました。 そんな意識で、スコープ3のカテゴリー「4」と「9」の説明を読んでいると「???」となったんですね。 上流にカテゴリー4があるのは分かりますが、下流にもあるじゃないですか。それで、説明を見てみると、こうなってます。 「費用を負担するかしないか」がキモなのか、と思って説明を探すと、こう

素朴な疑問シリーズ〜ダブルカウント

算定しているときにぶち当たる、素朴な疑問。ありますよね。 (というか、そういうことばかりだったりしますが) スコープ3でのFAQでも上位に位置するのは、ダブルカウントだと思います。 例えば、メーカーのカテゴリー9(輸送・配送:下流)は、小売店のカテゴリー4(輸送・配送:上流)ですよね。 メーカーのカテゴリー11(製品の使用)であれば、ユーザーのスコープ1もしくはスコープ2だったりします。 これについては、プロコトルで明確に言及されています。 「スコープ3に内在する」と