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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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2022年5月の記事一覧

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1②

カテゴリー1のポイントをもう少し、あと3つだけ。 まず、第1点目。 企業の購入は、以下の2つのタイプに区別されると、前回指摘しました。 1.製造に関連した調達 2.製造に関連しない調達 スコープ3基準には1の例が示されています。 ここで「あれっ」と思うものがありそうです。 そう、3の「資本財」という表現。 原文でも「Capital goods」となっています。 不思議に思いながら、読み進めると、こうあります。 「な〜んだ。やっぱり、カテゴリー2じゃん」 ここで、カテ

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1①

それでは、スコープ3に入っていきましょう。 まずは、カテゴリー1「購入した物品・サービス」です。 スコープ3基準での定義は、こうなってます。 算定する際、最も精度が高い方法は「積み上げベース」です。 サプライヤーに算定をお願いして、排出量データを入手する方法です。 具体的には、赤枠で囲んだデータを依頼します。 場合によっては、サプライヤーにとってのカテゴリー9「輸送・配送(下流)」 まで含めることもあるかもしれません。 しかしながら、これは多大なマンパワーを必要としますし

排出量算定〜スコープ2 間接排出 ③

「削減系クレジットは使えない」 これまでも、何度かご案内してきました。 「既存のものから置き換えるのであれば、このレベルの機種を選択しますよね」という機種を選ぶでしょ?だけど、それよりも、遥かに効率がよい機種を導入するので、さらに削減できます。 いやいや、全く新しい技術を使った最先端の製品を導入するので、圧倒的に削減できます。 な〜んて言って、従来品(BAU:Business As Usual)との差分を「削減量」としてクレジット化したものが、「削減系クレジット」でし

排出量算定〜スコープ2 間接排出②

コーポレート基準におけるスコープ2算定ルールを、補完・改訂する形で「スコープ2ガイダンス」がリリースされていることを、前回お話ししました。 その内容で、算定の際、知っておいた方がよいポイントをご案内。 1.自家発と購買電力の両者を使う場合 自家発による燃料使用→スコープ1 購買電力量→スコープ2 あまりにも簡単ですが、これは「しなければならない(shall)」です。 「差し引きの電力量」をスコープ2で報告すれば? ちょっと詳しく知っていると、思ってしまうかもしれません

排出量算定〜スコープ2 間接排出

スコープ1の次はスコープ2 間接排出。 これについては、突っ込んだ話を紹介済です。 スコープ3のカテゴリー3と絡めて解説しています。 ご参照下さい。 ですので、今回は別の視点の話をしてみたいと思います。 まずは、前回同様、コーポレート基準の定義から。 ここもやはり「所有または管理する」とありますね。 この概念は、忘れずに算定業務を進めていきましょう。 コーポレート基準では、スコープ2は特別なカテゴリーとしています。 そう、スコープ2は温室効果ガス削減ネタの宝庫だと言っ

排出量算定〜スコープ1 直接排出

前置きが長くなりました。 これまでの内容は、こちらからどうぞ。 さて、算定企業は、GHGプロトコルに基づいて算定し報告する場合には、2つのオプションを持っていました。 SBT申請をするに当たっても、スコープ1とスコープ2は必須です。 ちなみに、中小企業向けは、スコープ3はマストではありません。 なお、IPCC第6次評価報告書の公表を受けて、ネットゼロ目標を採用する企業が増えていることを踏まえ、SBTは「ネットゼロ基準」を開発しました。 それにおいても、当然ながら、スコー

排出量算定〜バウンダリの設定

算定の第一歩は「目的設定」であることを説明しました。 以降の話は、「GHGプロトコルに基づいて算定し報告する」という前提で話を進めていきますので、ご了承ください。 さぁ、次こそは計算だー とはならないのが、この業務。 そうですね。「何を」算定するかを決めないと、ダメですよね。 「算定対象範囲(バウンダリ)」を決める必要があります。 対象範囲としては、以下の2種類の境界を考えます。 1.組織境界 2.活動境界 「1.組織境界」は前回チラ見せした、こういうことです。

排出量算定〜はじめの一歩

前回は、「検証を受けることを前提に、排出量を算定してみましょう」というお話をしました。どうせやらざるを得ないのなら、さっさと始めて、先駆けてスキルアップしておきましょう、というお話です。 今回は、実際に着手しましょうというお話。 算定式は、各所で紹介されているので、勢い具体的にデータを集め出した方もいるかもしれません。 いやいや、その前に、算定対象、バウンダリを決めないと始まらないよ。 確かに、それはそうです。 財務諸表における、子会社、関連会社の範囲のアナロジーで、

排出量算定〜今やらなくていつやるの?

昨年から今年にかけて、算定を支援するサービスを提供する事業者が急増していることは、以前ご紹介しました。 着手した、着手する予定、すべきかどうか検討中。 各社、置かれた状況により様々かと思いますが、事業継続のためには「やらない」という選択肢は無いと思います。 アイドリングストップ ミラーレスカメラ AR/VR EV LED ZEV/ZEH 技術が変われば、制度が変われば、人が変われば….. 「あり得なかった」ことが「有り得る」ことに。 さらには「当たり前」にも

販売した製品の使用による排出量(解説編)

前回、カテゴリー11についての、お題を出しておりました。 次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、どのようなエネルギーを必要とするでしょうか。 自家用車 食パン どのような場面を、想像されたでしょうか。 まぁ、そんなに難しく考えることではないのであっさりと。 A.自動車であれば、例えば、 1.移動するときに、ガソリン(軽油、電気)を使う 2.洗車するときに、水道水を使う B.食パンだと 1.焼くと

販売した製品の使用による排出量(出題編)

カテゴリー11「販売した製品の使用」 メーカーにとって悩ましいカテゴリー。 なんってったって、ストーリーを作らないといけないですから。 作る側は、意外とお客様のことを知らなかったりしますし。 算定初年度は手が回らないことが多いです。 これについては、徐々に精度を上げていけばよいでしょう。 今日は、そんな悩ましいカテゴリーの排出量について語りたいと思います。 さて、次の二つのメーカーになったとして想像してみて下さい。 販売した製品の使用に際し、どのような行為に対して、ど何

電力の使用による排出量(解説編)

4月29日のnoteで、電力事業に係わる事業者間で、「排出量はどのようにカウントされるのか?」という記事を書きました。今回は解説編です。 復習しておくと、事業者はこの4者 企業A:燃料採掘事業者 企業B:発電事業者 企業C:送電事業者・電気小売事業者 企業D:最終需要家 で、このような条件を付けていました。 企業Aは採掘にあたり燃料のみを使用する 企業Bは発電した電力を全て企業Dに販売する 企業Bは自社では電力を使用しない 企業Cは企業Bの電力を全量企業Dに送電