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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#GXリーグ

GXリーグ戦略?

GXリーグについては、noteで何度かご案内してきています。 賛同及び参画している立場から、「民間主導」で「2050年カーボンニュートラルと社会変革」を実現しようという取組には期待していました。 もちろん、今でも期待していますし、貢献しようと思っていますが、「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」に対するGXリーグの関与の仕方から、少しその立ち位置、役割について「?」となり始めていました。 そもそも、ETS

「いつか来た道なのか」(2)

前回、4月4日開催の「第13回グリーンイノベーションプロジェクト部会」において、GX経済移行債による支援の条件として、GXリーグ参加が義務となった旨お届けしました。 GX経済移行債という「アメ」とGXリーグという「ムチ」を組み合わせた、うまいやり方ではありますが、ここに至るには、紆余曲折がありました。 実務には直結しませんが、Coffe Break代わりにお読み頂ければ幸いです。 さて、皆さんご存知ないかもしれませんが、排出量取引(ETS)は日本でも行われていました。

「いつか来た道」なのか?(1)

4月4日に実施された、「第13回グリーンイノベーションプロジェクト部会」において事務局から提出された資料により、GX経済移行債の支援を受ける企業は、GXリーグ参加が必須となることが明らかになりました。 「参加等」であり「相応のコミット」をすればよいという書きぶりになっていますが、マストであると言ってよいでしょう。 法律に遡及効はありませんので、既に公募が始まっている案件については対象となりません。ご安心ください。 他方、GX経済移行債のみならず、今後は、一般財源で支援を

Voluntaryでも構わない〜結果を出そう

これまで、日本のカーボン・クレジットやETSについては、何度となくお届けしてきました。で、必ずしも、ポジティブな内容でなかったことも事実。 ですが、先日参加したGXスタジオで事務局をされている野村総研の方々や、参画企業及び経産省の方々と意見交換する中で、少し期待値が上がりました。ぎゃくに、「やるじゃないか」とさえ思えてきました。 というのも、これまで、「完全を期す」からこそ、数多の失敗を繰り返してきた体と思います。責任を追及されないように、完成レベルのものを目指すからこそ

GXスタジオ参加してきました

2022年2月1日、 経済産業省 産業技術環境局より「GXリーグ基本構想」発表。2022年度は「賛同企業」によって設立の準備がなされ、2023年度より、「参画企業」によるGXリーグの活動を開始したことは、皆さんご承知のことと思います。 本格稼働した今年度、GX-ETSがその中心ではあるものの、その他3つの取組を推進し、2050年カーボン・ニュートラルを目指していくとしています。 この4つの取組の一つ、「GXスタジオ」の第3回目が開催され、ようやく参加することができました。

カーボンプライシングとGX戦略(3)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、3回目です。 2回目では、「カーボンプライシング」の定義と「GX戦略」の内容について、簡単にご説明しました。「成長志向型カーボンプライシング」のロードマップもざっとご案内したところです。 それを踏まえた上で、どのように活用していけばよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。 中小企業の経営者であれば事業に直結しますし、大企業のサス担当であれば経営戦略に環

GXリーグはどこへ行くのか

期待していたからこそ、何度もご案内してきたGXリーグ基本構想。 9月6日に、第1回学識有識者検討会が開かれ、事務局よりコンセプトが公開されました。 法的拘束力の無い「ボランタリー」な制度を目指しているので、「自ら」「野心的」な削減目標を設定するか否かが重要です。それを、UNFCCCのグルーバルストックテイクのように、互いにその妥当性を検証し、確実に参加企業が目標達成に向けて削減活動を行うかが、キモですよね。 果たして、事務局提示のコンセプトには、目標の妥当性についての検

GXリーグの目指す排出量取引制度(その5)

これまで、4回にわたり、GXリーグ基本構想が検討に着手した、排出量取引制度(GX-ETS)について紹介してきました。 前置きが非常に長くなって恐縮ですが、ようやく、具体的な手続きについてです。本格稼働前と、稼働後に分けて説明がなされました。 排出量取引は、基準年排出量を算定するところがスタートです。 GX-ETSでは、2013年度〜2021年度(昨年度)から自由に選べます。 基準年の排出実績は、第三者検証が必要な点に留意下さい。 この費用は、手出しになります。 次に、2

GXリーグの目指す排出量取引制度(その4)

GXリーグ基本構想への期待事項、2つ目「野心的な削減目標」について。 その1〜その3は、こちらです。 これについては、「総排出可能量」を明確に定義することが必要でしょう。 それに基づいて、各企業に排出枠を設定する。各企業はそれを達成するための「野心的な削減目標」を立てる。これしかありません。 現在は、2025年度及び2030年度の目標排出量を登録することとなっており、2050年ネットゼロと整合的かつNDC相当以上の目標を掲げることを推奨しています。 本論に入る前に、確

GXリーグの目指す排出量取引制度(その2)

「GXリーグ基本構想」の本丸、「排出量取引制度」の検討が動き出したことを受けて、先のnoteでは、これまでの経緯を振り返ってみました。 環境に関わってきた人間なら「いつか来た道」と思うことでしょう。 ・議論は散々やって来た ・何を今さら ・結局やらないんでしょ こういう人もいるでしょう。私もその一人です。 石橋を、叩いて叩いて、叩き壊して渡らない。 こう嘯いたこともあります。 「やらないために、やってるんじゃないの」とも。 ですが、ここは一旦、与件を持たずみてみたいと

GXリーグの目指す排出量取引制度(その1)

440社の賛同を得て、2022年4月1日動き出した「GXリーグ基本構想」 私も「賛同」したこともあり、以前ご案内しました。 22年9月からは、JPXにおいて、試行的な取引が始まりました。 実証期間は、2023年1月までで、売買の対象は「J-クレジット」及び「GXリーグにおける企業由来の超過削減枠」ですが、実際に取引できるのは「J-クレジット」のみ。午前と午後に1回ずつ、約定を成立させます。 条件が整えば「超過削減枠」も売買できるようにするようですが、あくまでも「シミュレー

世界の排出権取引市場動向

日本では、民主党政権時代から、何度となく議論され、試行され、それでも日の目を見ていない「排出権取引」 現在は「GXリーグ基本構想」の下、440の賛同メンバーの協業で、ルール作りが進行中。22年9月から23年1月の5ヶ月間、JPXにて取引所市場の実証事業を行う予定です。とはいえ、GXリーグにおける企業由来の超過削減枠は取り引きされず、J-クレジットのみ。システムの検証がせいぜいでしょうか。 4月に、こちらでもご紹介しております。 しかし、世界に目を向けると、異なった景色が

GXリーグ基本構想

経産省が打ち出した「GXリーグ基本構想」 3月31日締切で賛同企業を募集していましたが、440社に達したとのこと。 排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できるしゃかい(経済と環境および社会の好循環)を目指す。 としていますが、環境NPO/NGOをはじめ、産業界他から様々な不備・課題が指摘されています。クレジット及び排出量取引に携わってきた私からしてみても、同意せざるを得ません。 10年以上も議論を尽くしたじゃ無いですか。 声を大にして言いたいです。 環