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GXリーグの目指す排出量取引制度(その4)

GXリーグ基本構想への期待事項、2つ目「野心的な削減目標」について。

その1〜その3は、こちらです。

これについては、「総排出可能量」を明確に定義することが必要でしょう。
それに基づいて、各企業に排出枠を設定する。各企業はそれを達成するための「野心的な削減目標」を立てる。これしかありません。

現在は、2025年度及び2030年度の目標排出量を登録することとなっており、2050年ネットゼロと整合的かつNDC相当以上の目標を掲げることを推奨しています。

「GXリーグにおける排出量取引の考え方について」説明会資料より

本論に入る前に、確認しておくべきは、取引できる排出量。
資料を見ると、以下の2種類となっています。

「GXリーグにおける排出量取引の考え方について」説明会資料より

「その2」で説明したように、「カーボン・クレジット」は、Cap-and-Tradeのバウンダリー外での削減量となります。(「等」とありますから、さらに増やす予定なのでしょうね。)

カーボン・クレジットによって、自社の排出量をマイナスカウントしてよいとなれば、Cap-and-Tradeバウンダリー内の排出量は増える。
つまり「Cap」をオーバーすることになります。

Cap-and-Tradeでは、Capを徐々に減らしていくことによって「総排出量」を削減するスキームです。これでは、「Cap」の意味がありません。もちろん、使用量を制限したり条件を課すことで抑えることはできるでしょう。

しかし、そもそも「Cap」は極めて、政策的なマターであり、設定が難しいところ。バウンダリー外から持ち込まれる排出量まで考慮してとなると、さらに困難かと思います。

代表的な排出量取引制度であるEU-ETSでは、外部クレジットについて、2013年の第3フェーズからは、下記のような条件となるようです。

・LDCs (Least ・Developing Courtiers)で実施されたCDMによるCER
・ EUとの二国間合意を締結した国からのオフセットクレジット
・ HCFC及びN2O関連プロジェクトによって発行されたCERの利用禁止
・ 2013年以降に京都議定書第二約束期間に数値目標を持たない国で発行されたERUの移転禁止

海外の炭素税・排出量取引事例と我が国への示唆(IEEJ)より

2021年から全国で開始されたCN(中国)-ETSでは、現在のところCEA(China Emission Allowance:排出枠)のみ。(排出量の5%までは中国国内のクレジットであるCCERで相殺できるとしていますが、現在は停止中とのこと)

2005年から実施しているEU-ETSは、第1、第2フェーズと、排出枠(EUA) 価格の低迷など、様々な困難を経て、現在の形となりました。

中国も、2011年に、7省都におけるパイロットに着手し、10年の準備期間を経た後、昨年全国ETSが稼働し始めました。

中国の排出権取引市場については、こちらを参照ください。

世界の排出権取引市場の現状については、こちら。

このような、先例に学びながら、「日本式」の制度を構築していって欲しいですね。次回は、GX-ETSの手続きについて見ていきたいと思います。


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