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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#排出量取引

世界銀行のCPレポート 斜め読み(1)

世界銀行(世銀)は、こちらのダッシュボードを通じて、世界のカーボン・プライシング(CP)の情報を発信しています。 説明をしておくと、CPには次の3つの種類に区分されます。 排出量取引(Emisssion Trading Scheme:ETS)のみであれば、ICAP(International Carbon Action Partnership)も重要な情報源です。 導入されている国・地域がマップやリストで示されますし、排出権価格(Allowance Price)のチャー

ICAP Status Report リリース(3)

世界のETSの現状を包括的に報告するICAPのレポート「Emissions Trading Worldwide」の2023年版がリリースされましたので、そのご案内をしております。非常に信頼できる情報源で、私のアンチョコです(笑)。 今回は3回目。排出権価格や各国のETSの特長についてご案内します。 1回目、2回目はこちらです。 まずは、皆さん一番気になる、排出権価格(Allowance Price)。 左側が2008年〜2022年の長期、右側が2022年の短期の推移です。

ICAP Status Report リリース(1)

毎年楽しみにしているレポート、ICAPの2023年版がリリースされました。 ICAP(International Carbon Action Partnership)が2014年から発行しているレポートで、世界のETS(Emissions Trading Systems 排出権取引制度)の現状を包括的に取り扱っています。 EU-ETSは2005年開始、国内クレジット(現 J-クレジット)は2009年開始。 私も、2009年よりクレジットに携わってきましたが、当初は、ETS

政策を成功に結びつけるCCTSD

ローカルな話で恐縮ですが、昨日の23年2月19日、地元佐賀県は鳥栖市の市長選挙の投票日でした。5期目を目指す現市長に、県議4期の実績をひっさげて挑戦する自民推薦の新人の対戦。自民は現市長に4期連続で敗れているところ、論点も多く、注目されていました。 結果は、新人が702票差で現職を破り、初当選でした。(ちなみに、小学校の先輩で、一緒に少年野球をやったりしてました) この結果とその要因をつらつらと思っているうちに、これって、環境政策を始めとする施策の成否につながるなぁとの思

GXリーグの目指す排出量取引制度(その5)

これまで、4回にわたり、GXリーグ基本構想が検討に着手した、排出量取引制度(GX-ETS)について紹介してきました。 前置きが非常に長くなって恐縮ですが、ようやく、具体的な手続きについてです。本格稼働前と、稼働後に分けて説明がなされました。 排出量取引は、基準年排出量を算定するところがスタートです。 GX-ETSでは、2013年度〜2021年度(昨年度)から自由に選べます。 基準年の排出実績は、第三者検証が必要な点に留意下さい。 この費用は、手出しになります。 次に、2

韓国の排出権取引市場について(その1)

排出権取引市場(ETS)の現状について、これまで何度かお伝えしてきました。 今回は、お隣、韓国のETSについて、IGESがセミナーを開催されましたので、その内容を簡単にお伝えしようと思います。 ちなみに、IGESでは、気候変動トラック及び炭素市場トラックという、私が最も関心の高いテーマについて、時機を得たセミナーを開催されており、情報ソースとして、いつもお世話になっております。 なお、国内のETSは、目下「自主的なクレジット取引制度(GX-ETS)」という位置づけで、G

GXリーグの目指す排出量取引制度(その4)

GXリーグ基本構想への期待事項、2つ目「野心的な削減目標」について。 その1〜その3は、こちらです。 これについては、「総排出可能量」を明確に定義することが必要でしょう。 それに基づいて、各企業に排出枠を設定する。各企業はそれを達成するための「野心的な削減目標」を立てる。これしかありません。 現在は、2025年度及び2030年度の目標排出量を登録することとなっており、2050年ネットゼロと整合的かつNDC相当以上の目標を掲げることを推奨しています。 本論に入る前に、確

GXリーグの目指す排出量取引制度(その2)

「GXリーグ基本構想」の本丸、「排出量取引制度」の検討が動き出したことを受けて、先のnoteでは、これまでの経緯を振り返ってみました。 環境に関わってきた人間なら「いつか来た道」と思うことでしょう。 ・議論は散々やって来た ・何を今さら ・結局やらないんでしょ こういう人もいるでしょう。私もその一人です。 石橋を、叩いて叩いて、叩き壊して渡らない。 こう嘯いたこともあります。 「やらないために、やってるんじゃないの」とも。 ですが、ここは一旦、与件を持たずみてみたいと

GXリーグの目指す排出量取引制度(その1)

440社の賛同を得て、2022年4月1日動き出した「GXリーグ基本構想」 私も「賛同」したこともあり、以前ご案内しました。 22年9月からは、JPXにおいて、試行的な取引が始まりました。 実証期間は、2023年1月までで、売買の対象は「J-クレジット」及び「GXリーグにおける企業由来の超過削減枠」ですが、実際に取引できるのは「J-クレジット」のみ。午前と午後に1回ずつ、約定を成立させます。 条件が整えば「超過削減枠」も売買できるようにするようですが、あくまでも「シミュレー

素朴な疑問シリーズ〜排出権?排出量?

平成20年「福田ビジョン(覚えてます?)」に基づき、排出量取引の国内統合市場の試行的実施が開始されました。 1.試行排出量取引スキーム 2.国内クレジット 3.京都クレジット この3つを「統合」した国内市場を設け、クレジットの売買をする構想。 カーボンプライシングの一翼として再び議論されている「排出量取引」市場が、国内で産声を上げたのです。 まぁ、「知る人ぞ知る」ではありますが、一応、新聞やメディアで報道されたので、記憶にある方もいらっしゃるかと。 ですが、新たな概念

データ散歩〜排出量取引市場

便利な時代になりました。 居ながらにして、さまざまなデータを収集することができます。 もちろん、信頼性の高いデータを検索し、真贋を判断するスキルも必要ですが、コストをかけずに、簡単にレビュー、概観することができます。 そんなデータを、時々ご紹介していきたいと思っています。 今回は、世界の排出量取引市場をご案内。 これについては、環境省が「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」の中で議論を重ねており、3月末には方向性を示したところです。 とはいえ、「排出量取引

排出量削減の第一歩に最適です

旧い設備を最新の高効率機器に更新すれば、手っ取り早く、自社排出分であるスコープ1と2を減らすことができます。分かりきった話です。でも、その時に引っかかるのが、 イニシャルコストがかかる 効果が長続きしない 1.は当然ですよね。 「ランニングが下がるから」と言われても「先立つものが…」 「使える補助金があるんじゃない?」との声が聞こえてきそうですが、 「探す手間」「申請する負荷」が頭をもたげます。 2.もよく聞く話です。 更新翌年度は前年比で下がりますが、そこまで。 2

GXリーグ基本構想

経産省が打ち出した「GXリーグ基本構想」 3月31日締切で賛同企業を募集していましたが、440社に達したとのこと。 排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できるしゃかい(経済と環境および社会の好循環)を目指す。 としていますが、環境NPO/NGOをはじめ、産業界他から様々な不備・課題が指摘されています。クレジット及び排出量取引に携わってきた私からしてみても、同意せざるを得ません。 10年以上も議論を尽くしたじゃ無いですか。 声を大にして言いたいです。 環