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リピート|散文

「そこで何をしてるの?」
 
 その言葉が福音のようなものだったと気づくのはずっと後のことだった。 物事は絶えず流転して見える。そしてとどまって、空っぽで混沌として絡まり合い、無機と有機が織りなしている。
 
 その時、その事を見るために僕の肌は遠くの反響に反応するように粟立ち、目には涙さえ浮かぶ。何度も何度でも。僕は一つの燕になったように感じる。それはいつだって素早く速やかに君へと向かう。
 
 僕は黙って空を見上げる。コンクリートの壁と壁の間に馬鹿みたいに真っ青な空がその時の僕らの若さと同じようにはっきりと鋭く切り取られている。何度でも何度も繰り返そう。僕は手のひらを力を込めて握り返す。
 
 僕は起き上がって、肩を竦める。何もしてやしない。僕は眠っていて眠っていただけなんだ。そして君が目覚めさせた。

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