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『孫子』と『戦争論』



ここ数日で政府からコロナウイルスによる外出規制が緩和されるようになった。
とはいっても完全に沈静化したわけではないから休日はまだステイホームすることにしている。
緊急事態宣言というイレギュラーな事態なので、どこも手探りな対応なので通常と異なり土日はカラオケや図書館も閉鎖していたので、蔵書を読み直す機会が増えた。そこでふと『孫子』を読みかえした。

今書店に行くと最強の武術書とかビジネス書として『孫子』がフューチャーされているけど、一体どれくらいの人が『孫子』を理解して読んでいるのだろう?『論語』もそうだがビジネス書として読まれたり書かれてる書籍は原典の解釈があまりにもかけ離れているものが多い。研究者が長年にかけて研究した研究書を鵜呑みにして、本来の意味と強引にビジネスの心得を繋げて読者を取り込もうとしているのが分かると全く別なものになってしまいがち、形骸化となってしまう。

『孫子』は十三の編から構成されてる。大半は争いを避けるためのノウハウが書かれている。そう『孫子』は喧嘩の指南書ではなく、どうすれば戦わずに負けないかを説いている典籍なのだ。ここで注目するのは”負けない”ということ。勝つのではなく負けないことが大切になってくる。そしてそれを戦わないで遂行するということが大切になる。
有名な例では武田信玄の有名な「風林火山」も出典は『孫子』の「九変」。オリジナルは「風林火山陰雷」と6つの言葉が集約されている。これは戦う際に長期戦にするのではなく、短期で争いを終えるためのいわばスローガンなのである。
それに敵をとどめを刺すのではく、味方に付ける。敵を殺さず、自分の懐に入れることでお互いに得になると説いている。

実に人間味のある戦法の解説が説かれている。私はとても心惹かれた。なぜなら綺麗事を一切言わないところなのである。人間を知り尽くし、更に心理を突いた戦い方、そして利己主義ではなく、WIN-WINの関係を保つことに重きを置いている。これは人類のバイブルではないか!人を知り尽くした戦法を遙か昔の紀元前に説いていた。
武将武田信玄、徳川家康は読み込み上に立つことが出来た。冷静な戦いを指揮できた指揮官に『孫子』は虎の巻なのだ。

しかし、帝国明治の日本は『孫子』ではなく、ナポレオンの『戦争論』(クラウゼヴィッツ著)を虎の巻にしてしまった。
『戦争論』は『孫子』とは相対する書籍、文字通り戦うための指南書だった。勝つためのノウハウ満載の内容が戦時真っ只中の世界各国で大いに受けた。そして世界大戦での日本の行く末を見ればどうなったかお分かりかと思う。敗戦国はもとより勝利した国も疲弊してボロボロになった。戦いは悲惨しか生み出さないことを既に『孫子』は知っていたのだ。
ビジネス書としてよりも哲学書というほうが読んでいて人を理解していると納得できる。

最後に一番大切な文言。
『怒りをもって師を興すべからず』感情で喧嘩をしたら必ず負けてしまう。ナポレオンはこれが出来なかった。

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