つながりの変化と欲求
前回の記事「シェアって何?シェアキッチンって何?」では、シェアすることを通して、そこで生まれる人の繋がりを重要視することになることで。地域における人の繋がりも変わってきているというところで終わりました。
どのようにつながりが変わってきたのでしょうか。
家族のあり方の変化
核家族化や少子化が進み超高齢化社会となった日本では、65歳以上の高齢者がいる4世帯のうち1世帯が単身、つまり独居老人となっています。また、国立社会保障・人口問題研究所によれば、2015年で50歳の時点で一度も結婚をしたことがない、男性の生涯未婚者は4人に1人になり、更に単身世帯が増えていくことが予測されています。
高齢者の孤独死が社会問題としてメディアで取り上げられることも多くなり、家族のあり方にも変化が起きています。
例えば、婚姻関係に拘らない人や子どもを持たない夫婦、ひとり親世帯の増加により家族の世帯規模が小さくなっています。
また、職業やライフスタイル、人間関係や消費などのあらゆることが、社会の規範や規制といった枠組にとらわれず自由に生きることを望む社会になることで、地域との関わりがない、隣の人の顔を知らないといった人も増えています。
つながりの変化
今やドラマや映画の世界の話になってしまいますが、過去には、父親の言うことは絶対!という家長優先主義で結婚も本人の意思とは無関係に家と家との結びつきが重要視されていました。
隣近所との結びつきも強く、冠婚葬祭、農作業も協同で行い、困っている住民には手を差し伸べて生活していました。助け合って生活をする反面、地域の慣習やルールから外れると村八分にされるなど、しがらみもありました。
親の言いなりなんかで結婚出来ない!好きな人と結婚する。オラ東京に出るさとばかりに若者が都会へどんどん行き、地域は過疎化が進みます。
若者は都会で就職。終身雇用、年功序列が当たり前だったころは、みんなで、同じ目標のために頑張るという連帯感が生まれ、お互いが助け合うのが当然とされていました。
それが、バブル崩壊で年功序列や終身雇用は破綻し、リーマンショックでは共に働いていた仲間が派遣切りやリストラにあい、会社でのつながりも崩壊していきます。
このように私たちの生活は、時代の流れと共に血縁、地縁、社縁とつながりが変化し、つながりが希薄になっていきます。
わずらわしいと思っていた血縁や地縁は、人びとを拘束する力も強いけれども、いざというときのセーフティネットとして機能していたのです。
そして現在、つながりの希薄化により孤独や孤立への不安を抱く人も増えています。仕事以外で趣味や地域の活動など積極的にしている、つながりを持つ人と持たない人の差が顕著になり、隣人や趣味や地域でのつながりを持たない人は社会にポンと取り残されたような状態になり、つながりがない事に不安を抱きます。
人にとって人と人のつながりは、生きていくうえで不可欠なもので、孤独な人は、社会的な繋がりがある人よりも、早期死亡リスクが2倍と言われています。(「早期死亡リスクは2倍? 「孤独」をあなどってはいけない」,Bussines insider,2020/5/22閲覧)
ここまできて、シェアキッチンと何の関係もないよね。思うかもしれませんが、つながりが希薄化する社会で、食を通じて地域とのつながりを作るような取り組みが行われる例がしばしば見られます。
今回はここまでにして、次回は、食で人と地域のつながりを作る例と食を共にすることについてです。
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この記事は、著者の論文「シェアキッチンから生まれる繋がりに関する研究−「ちょいみせキッチンを事例として」−」から抜粋、改編しています。
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