解像度を上げる 〜自分の講座を企画する全思考過程(4)
年間200件の社会人講座を実現するプロデューサーが、企画の方法論を詳説します。
一般的なビジネスパーソンが、自らの知見を、セミナー等の学びのコンテンツに、全く白紙の状態から完成させるまでの全プロセスを、考え方も含めてお伝えします。
今回は、これまでの材料を整理・深掘りして解像度を上げるプロセスです。
※この連載は3/23~26実施「自分の講座を企画する!オンラインゼミ」の内容を記事化したものです
「似て非なる」ターゲットを峻別してミスマッチを防ぐ
講座でよくあるのは、想定ターゲットに近いけれど、微妙にレベルや分野が異なる層が来てしまい、時に満足して頂けないことがあります。
例えば「XXの最前線」としながら内容が「入門編」であったり、「インバウンド」のような幅広いテーマで案内を書いておきながら、中身は特定の業界の話だったりするようなことです。
主催者に悪意がある訳でなく、コンテンツやターゲットの理解が甘く、ターゲットに近いけれど本質的に異なるターゲットが反応するような、焦点の甘い案内文を書いてしまったことが原因です。
自身に馴染みのない分野の講座を企画する時に起きがちな問題で、これを回避するには、本来のターゲットと似て非なる層を明確に分けて理解しておくことが必要です。
目的の解像度を上げる
各回のターゲットは、各回の目的によって定まります。
よって、目的の解像度を上げることが、ターゲットの解像度を上げ、ミスマッチを予防することになります。
目的は、案件を獲得したい、プロダクトを形にしたい、人を採用したいなどの最終目標と、それに紐づく各回の目標に分けてみると整理しやすいでしょう。
・コンテンツのVer.1を完成させる締切を設け、自分を追い込む
・予想した客層が反応するか、どれくらいの反響があるか
・実際に話し、参加者の反応をみて、改善点を洗い出す
・内容を記事化し、PRに活用する
といったコンテンツの完成のための回もあれば、
・見込み顧客を獲得する
・採用ターゲットとの接点を獲得する
といった、最終目標に至るための各回目標を定めることもあります。
ターゲットの解像度を上げる
「似て非なる」ターゲットを峻別するには、課題や関心が異なる、近いけれど微妙に違う層を区別しなければなりません。
経験上、最も多いのはレベルやフェーズの違いです。
経験フェーズや習熟レベルの違い
未経験の人と、そこそこ経験している人とでは、見えてくる課題も違います。経験者は具体的な状況が分かるので、簡単に説明しても理解できますが、未経験者はそうではありません。
未経験者が経験者向けの話を聞けば「説明が足りない」と思いますし、経験者が未経験者向けの話を聞けば「分かりきった話が長い」と思います。
レベルに関しても同様です。
また、分野によっては流派のようなものもあり、批判的に物事を捉えられないタイプの人は、自分の信奉するものを否定されたような印象を持つと、感情的な反応をする場合もあります。
そういったことが懸念される分野は、きちんと流派の違いが分かるようにした方が無難でしょう。
範囲のフォーカスの違い
範囲は、例えば「インバウンドビジネス」というと非常に幅広い業種が含まれますが、「ホテル事業」いえば対象は狭まる、ということです。
ホテルの話ししかしないのに「インバウンド」とタイトルをつけてしまうと、メディカルツーリズムなど、内容と関係ない人が混じってしまい、不満を持たせてしまうことになります。
これは、講師の責任ではなく、企画者がコンテンツとターゲットの理解が甘いことが原因です。
内容のアレンジによっては、旅館や飲食などにも示唆のある内容にできるかもしれません。
範囲をそのように限定するか抽象化して広めるかで、ターゲットと課題の範囲も変わるので、それに合わせて内容もアレンジする必要があります。
課題の解像度を上げる
ターゲットが明確になれば、課題も絞られるので、次は、課題をより具体的にします。
課題発生の根源を考えてみる
課題を「理想状態と現状のギャップ」とすると、課題が新たに発生したなら、現状か理想が変化したということでしょう。
新しい部門に異動になった、パンデミックなどの外部環境の変化、新たに目標を立てた、などの変化を辿るといいでしょう。
また、過去に同じ課題を解決しようと取り組んできているなら、どう考え、どういう手を打ったのか、その成否や原因、積み残された課題は何か、どうすれば解決しそうか、などを考えておくと、経験者に刺さる表現を考えられるでしょう。
ターゲットが直感的に反応する表現を考える
最終的に案内文を作るにあたっては、ターゲットが「あ、これは今の私に必要なものだ」と、直感的に反応し、申し込みをするような表記にする必要があります。
相手に端的に刺さる表現を考えるにあたっては、以下のような分類を念頭に置きながら、レベルを調整しています。
例えば、新規事業が成功しない/成功させたい、新規事業の成功確度を上げる方法論が見つからない/確度を上げる新しい方法論、など、読み手がまだ不満レベルなのか、原因が見えているのか、解決の道筋までわかっているのか、具体的な解決策まで絞り込んでいるのかによって、当てる言葉も違うでしょう。
場合によっては不満にすら気づいていないかもしれません。
クラウド会計ソフトが出てくるまで、小規模事業者は「会計処理は面倒なもの」が当たり前だと思っていたかもしれませんが、いざソリューションが眼前に出されると、「あ、これだ!」と思うでしょう。
隠れた欲求も、現実としてはあります。勉強会の体をとりながら、大半の参加者の目的は交流である、といったものです。
この手のものは直接的には言いにくいので、分かる人に分かるように書くのが現実的な対応かもしれません。
価値を言葉にする
課題が解決すれば、それが価値となります。
ターゲットが、この講座を受講すればどのような良い事があるか、より直接的な表現にする事で、申し込みへの意欲を高める事ができるでしょう。
価値を具体化する参考に「価値要素のピラミッド」があります。
顧客が求める普遍的な価値を、分類したものです。
自身の講座が、どんなターゲットのどのような課題を解決するか、それによってどんな価値が実現するか、この要素に照らし合わせると、言葉にしやすくなるでしょう。
次回は、最終的に講座のターゲットを絞り、要素間の整合を取る考え方について述べます。
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参考記事:筆者について
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