セミナー案内文を作る〜素材をそろえる
セミナーの案内文は企画そのものですが、案外事細かに説明しているものが世にないので、書いてみます。
第1回は「素材の整備」。
要素が明確でないまま文章にまとめようとすると、読み手にとって分かりにくい案内文になります。見た瞬間に反応するような案内でないと、申し込みにはつながりません。
本稿では、書く前段の素材整理の枠組みや手順をお伝えします。
動機を見出す
取り組みを継続するには「原動力」が必要です。まぐれ当たりで注目を浴びたり、儲かったりすることもありますが、原動力である「Why」を明確にしておかないと、困難に直面して精神がすり減り、やがて心が折れます。
Whyを掘り下げる
どんな状態を実現したい(Vision)とか、自分がどんなことを使命(Mission)にしたいとか、目指す「あり方」を明確にします。
例えば私が開催する「主催学」講座の場合、「自分で自分のコミュニティを作り、自分らしく自立した人生を歩む人を増やす」ことを目指しており、自らの使命を「人が自らの可能性を発揮する後押しをする」と考えています。
これらが最初から固まっていることはまずありません。なのでまずは仮決めし、実践を通じて修正を重ねていくのが現実的な進め方です。
実利を明確にする
Mission/Visionが「ロマン」とすれば、実利は「ソロバン」です。実利なき取り組みは単なる自己犠牲で、持続可能になりません。
実利は短期的な直接収益とは限りません。関係構築のような長期的・間接的なものもあります。ただ、ご縁そのものは目的ではなく、最終目標につながる手段であり、手段を目的と勘違いしないよう気をつけます。Mission/Visionとの関連も明確にして、具体的な言葉にしてみるといいでしょう。
単体目的を具体化する
1回1回の実施にも「これは何のためにやるか」を明確にします。目的が複数ある場合、どれとどれで、優先順位や関係性も整理します。
最終ゴールにどうつながるかも明確にしておきます。
価値を仮定する
参加者は対価を払ってイベントに参加します。無償セミナーでも時間という対価を払っています。
何かしら対価に値する価値を見出しているから、限りある時間やお金を、飲み会に行く、服を買う、貯蓄や投資に回す、といった他の使い途ではなく、わざわざそのセミナーに割いているのです。
もちろん、人により理由は異なりますし、無意識のことも多いでしょう。しかし、仮でもいいので提供側が価値を明確にしなければ、ターゲットに届きません。
ターゲットと課題を具体化する
価値を考えるのに必要な要素は以下です。
私の「主催学」講座ではターゲットを以下としました。
さらに絞り込みをしていきます。
また、コミュニティを作りたいといった表層的なニーズは同じでも、動機や目指すものが違う「似て非なる」層と比較対照すると、さらに特徴が際立ちます。
ターゲットを具体化すれば課題や価値も自ずと明らかになります。
価値(課題と解決策)を明らかにする
課題が分かれば、それをどう解決するか、解決したらどんな価値(必ずしも金銭的な物とは限りません)が実現するか、明らかにできます。
例えば、場づくりに一歩踏み出せずにいる人なら、以下のような課題があるでしょう。
課題を解決して場を立ち上げられれば、以下のような価値を得られるでしょう。
総合的な価値は、参加費を考える材料にもなります。
課題解決策としてコンテンツを定義する
コンテンツは、自分が過去にやってきたこと、自分が実現したいことから考えがちです。しかし参加者は、コンテンツが自身の課題を解決することが明確でなければ、時間やお金という対価を払ってまで参加しようとは思えません。
どんな原因とメカニズムで課題が発生しているか分かれば、解決策も見えてきます。例えば、やり方が分からないから場づくりに一歩踏み出せないなら、方法論を教えることでその課題は解消するでしょうし、テーマが定まらないことなら、掘り下げワークショップが解決策となります。
そのように、ターゲット・課題とコンテンツを整合させます。
講師がコンテンツを「語るに値する」ことを裏付ける
起業未経験の講師による起業セミナーに行こうとは思えないでしょう。
予め出来上がっている製品と違い、イベントのようなコンテンツは実際に参加するまで効果が分かりません。よって、事前に何かしらの根拠で価値を信じてもらわないと、対価を払う決定はしてもらえません。
なので、参加者が「この人なら自分の課題を解決してくれる」と信じるに足る要素を、予め整理しておく必要があります。
例えば、コミュニティのつくり方を教えるなら、コミュニティを立ち上げた「経験」があることに加え、人が見て分かる「成果」も必要でしょう。異なる状況でも複数の成果を出し続けた事実を示せなければ、再現可能な「スキル」とは言えません。そのスキルが他者にも伝わる「方法論」として言語化されていると尚良いでしょう。
講師ができても自分ができるようにならなければ、受講者にとって価値があるとは言えないでしょう。人に教え、スキルを身に付けさせ、成果を出させるという観点でも、経験→成果→スキル→方法論を整理し、その裏付けとなる事実をまずは揃えます。
また、講師や主催者がなぜそれをやりたいのか、それを通じて何を実現したいのかが腹落ちしないと、参加意向が弱まります。冒頭の「Why」を、ターゲットに伝わり共感できるものにしましょう。
具体化段階では、上記3つに加え、講師やコンテンツが持つ他にない価値や他と比較しての優位性も問われます。まずは基本要素の整理が先ですが、差異化や付加価値も頭の片隅に置いて考えると良いです。
要素を具体化してみる
戦略やコンテンツばかり考えると、時間ばかりかかりまとまりません。仮でいいので具体情報を入れるとまとまりやすくなります。
ターゲットに刺さる簡潔な言葉を考える
必要最小限の内容と価値が伝わる簡潔な文章をつくります。基本要素を洗い出し、相手の関心や自身の強みに合わせ、取捨選択・優先づけをして、簡潔な一文にまとめます。
ターゲットに案内の詳細を読ませることを目的に、冒頭に置くことも多いです。
タイトルも仮決めします。ターゲットが直感的に反応し、イベントページを開きたくなる、簡潔な語句が良いでしょう。サブタイトルで補完することもあります。
よく、タイトル・サブタイトルと冒頭文に同じ表現を入れてしまう人がいます。ここは申込みを左右する最重要なところで、文字数も限られるので、互いに補うように、裏を返せば、機能や言葉の重複を避けるようにします。
まとめ
本稿では、案内文を作るための素材を整備の枠組みについてお話ししました。まずは以下の2点を明確にし、整合させます。
その上で、日時、場所、人数や収支の規模、関係者と自身の役割などの具体要素を仮置きし、企画の骨子を形にします。
さらに、誰が、何を、どのように提供し、それがどんな人にどう役立つのか、ターゲットに伝わる端的な表現にしてみます。
ポイントは、個々の要素に時間をかけるより、まずは素早く一通り書き上げることです。その上で、各要素が整合しているか確かめましょう。
テンプレート
ご参考:場の主催学@自由大学
実践を通じて場づくりを学ぶ講座です。既に開講しておりますが、継続実施予定なので、ご参考まで。
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