Zoom飲みやRemoに足りない5つの本質的機能
一時期はZoom飲み会が流行ったり、Remoのようなオンライン交流ツールが出てきたものの、対面で実現する関係構築のレベルには程遠く、イマイチ日常化する感じがしません。
余白がない、自然な形での連絡先交換ができない、人となりが分からないので心理的バリアを排除しきれない、など様々な理由が言われていますが、今日はその根本的な理由を考えてみようと思います。
内向的な人間が交流会を200回やった洞察
まず何の根拠をもって私がこの話をするかを説明します。私は2007年にひょんなことから個人でご近所コミュニティを立ち上げ、当初6年で集中的に約200回のイベントを実施しました。
知り合いを徒に増やすことに意味を感じないので、非公開・紹介制でやっていましたが、本質的で自然な繋がりの場をどう作るかを考え、改善を重ねたところ、思いの外好評で人が人を呼び、登録者が1,300人を超え、築地本願寺で300人近くの飲み会をやるまでになりました。
その経緯は下記に記しています。
都合1年独り世界放浪したような非社交的な人間が、たまたまの成り行きで人の集まりをやる羽目になり、主催者としての醒めた目で、マニアックに仕組化してきた13年半の知見がベースにあります。
余談ですが、数多くの主催者を見てきましたが、健全に成長する場の主催者は内向的な人間が多い気がします。
「人と会うこと、人が集まることは誰にとっても楽しいのが当たり前」と考えているようなパリピは、知らない人の場に行くことを不安に思う人の気持ちに沿った場の設計ができないのでは、と思うことがあります(あくまで私見です)。
参加者が交流会に来る目的は「良い出会い」
交流会に参加する人の目的は、今の自分の延長線上にはなさそうな、ちょっと違う分野やレベルの人とのご縁を得ることだと思います。ビジネスであろうとプライベートであろうと、自分に良い何かをもたらす人を求めるでしょう。
そう考えると、交流会というフォーマットで主催者が参加者の満足度を高めるのに必要なのは、仲人よろしく「この人とこの人は良い繋がりになりそうだ」と思う人同士を、的確かつ効率的につなげていくことや、参加者自らそれができる仕組みを作ることでしょう。
また、そもそもの前提として、参加者やその関係性のクオリティも重要です。
1)話し相手を「チェンジ」しにくい
オフラインの懇親会なら、飲み物や料理を取りに行くなり、トイレに行くなり、何かしらの口実をつけて、今話している人から離れられます。
なぜ「チェンジ」が重要かというと、開催時間、参加人数、一度に話せる人数が決まっている中で、良い人と会う確率を高めるには、今話している相手から別の人々のところに移る必要があるからです。
もちろん名刺を配り歩くようなことをしても意味はないので、1回あたりある程度じっくり話す必要もあるかもしれません。しかし「これは違うな」と思えば即座に変えられるようでないと、時間を無駄にします。
Zoomで交流会をやる場合、これができません。参加者全員を共同ホストのするという裏技もありますが、管理者が面倒だし、参加者もそれを自然に理解できる訳ではないでしょう。
Remoはまだパーティー会場でテーブルを移るようなUIで、機能としては移動できるようにはなっておりますが、見ているとやはり心理的に動きにくい感じのところはあります。
オンラインならではの「席チェン」機能が必要
オフラインなら、主催者が会場を回り、合いそうな人と人とを繋げたり、長い間同じメンツで話している一団がいれば、あえてバラすようなことをするのですが、なかなかその機能を気軽に実現できるツールはありません。
あるオフラインの交流会では、銅鑼を鳴らして全体が一斉に席替えをしていましたが、そのような一斉アナウンスも役立つかもしれません。
他には、Remoであれば、途中から新しい参加者が会場に入り、あるルームで1人でいる状況で、その人が「誰か来て〜」と全体に気軽にアナウンスできれば、そろそろ相手を変えたいなと思っている人が「ちょっと行ってきます」と言いやすくなるでしょう。
そのようなちょっとした、席を変える口実となる機能を様々に充実させると良いでしょう。
2)話すグループを柔軟に変えられない
オフラインの立食であれば、最初2人で話していたところに相手の友人が1人加わり、さらに自分の友人2人組が合流し、やがて2:3に分かれて、自分は新しい相手と差しで話す、というのが当たり前に起こります。
しかしZoomでもRemoでも、ルームにいる人数はそこまでフレキシブルには変わりませんし、それ以上に、オンラインの特性上、同じルームにいる人で話せるのは1人で、その人が話している間、他の人は黙って聞かなければなりません。1:1でも会話効率が悪いこの形式を、1:多でやっているので、更に効率が悪いです。
同じルームにいて、なかなか話せないけれどちょっと話したい、という人とちょっとだけ気軽に個別で話す機能や、同じテーブルの隣の人にちょっと小声で話しかけるような機能があると良いかもしれません。
3)自分でマッチング精度を上げられない
私が交流会をやっていた時は、毎回参加者全員の氏名・所属を記し、業界別に並べたリストを作成して配っていました。
これは紹介制で、主催者と参加者の関係のベースがあるからできることでもありますが、このリストがあることにより、参加者は自分で話したい人の目星をつけられ、自分で探すこともできれば、主催者や周りの人に聞いて、意中の相手にたどり着くことができます。
通常の交流会は、多くの人がいても何をしているどこの誰かがわからず、なんとなく目の前にいた人と次々話して終わりになってしまいます。もし出会えていれば有意義になったはずのつながりが作られずに終わってしまうことも多いでしょう。
SXSWのような海外の大きな展示会では、参加者が自分で自分の情報を登録し、自分が会いたい人を検索し、メッセージを送れるアプリを提供しています。そのようにして、参加者自体が自分で会うべき人とのマッチング精度を高める仕組みがあると、オンラインでの交流が、より有意義になると考えます。
4)主催者がマッチングしにくい
もう1つのマッチング精度を上げる方法が、主催者など、各参加者の属性やニーズを横断的に理解している人が目利きをして、人と人とを繋げることです。Zoomのホストのように、メンバーをあるルームから他のルームに移せる機能のイメージです。
そのマッチングの際には、関係のある業界だったり、最近の動向に基づいてご縁のありそうな人を繋げます。マッチングを効果的に行うためには、参加者自身で情報を登録・公開し、自分の貢献できることや会いたい人がわかるようにできると、主催者としても人と人とを引き合わせやすくなります。
5)自然な「また今度」が言いにくい
オフラインでは最初に名刺交換をしてとりあえず連絡先を交換したり、別れ際に個別にfacebookなどの連絡先をやり取りするでしょう。
しかし、オンラインでは、最初にそのような時間はなく、最後はブレイクアウトの時間終了で今後の話をすることなく、強制的に退出となることが多い印象です。また、ルームに他の人もいる中で、特定の人だけと個別に連絡先を交換しようとは、なかなか言いにくいものです。
あとであれは誰だったかと思っても、見つけることも難しいし、突然連絡するのも憚られるでしょう。オンライン名刺交換も機能としてはありますが習慣として根付いている感じでもありません。全体として、今の自然な心情に沿った連絡先の交換フローになっていません。
こなような課題に対し、前述のような、参加者自身が事後の連絡を受け入れると意思表示しているリストが後からでも参照可能になっていれば、個別に連絡もしやすいでしょう。
また、いきなりfacebookのようなプライベート空間ではなく、もう1クッションおいた連絡手段があると、用心深い参加者でもより安心できるのではないかと思います。
ご案内:新しいオンライン交流ツールを試す会
オンライン化の実践知を共創するオンライン・コミュニティ「ゆる共」では、連続起業家の池森さんが企画・開発したオンライン交流会ツール「eryngii」を試してみましょう。
ZoomやRemoなど既存ツールを使った交流会にいまいち物足りなさを感じているイベント主催者には、自分の必要な機能が実装されたツールをつくる機会になるので、ぜひお越しください。
ご紹介:オンラインセミナーの方法論をまとめた書籍
様々な知見をまとめたのでよろしければご覧ください。
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