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2023年3月の記事一覧

憎しみの心、軽蔑

私の孤独は洗濯物の端っこで
丸まりながら絡み付き
雨音に耳を澄ましている
まだ人間の誰にも気付かれてはいない
余剰次元がほどかれて
陽射しの中で現れる心
酷い質問に浸かりながら
もうすぐ生まれる憎しみの心
軽蔑
一緒に投入された塩化ビニールの皺が
地球最後の雲のようだ

伽藍堂

期外収縮の雑音が空咳を促す
その反動で短針がわずかに進む
群衆は今日も埃っぽい
頷きながら居眠りする人達の背は淡く
伽藍堂の床に落ちる影だけが濃い

辿り着けるじゃないですか

妖怪ってよく踊ってるじゃないですか
そうそう、円くなって
それで一緒に踊るじゃないですか
でも、それだけじゃ駄目なんです
時計のネジも回すじゃないですか
そうそう、くりりくりりと
それで一緒に流れていくじゃないですか
時みたいな少しいい加減な妖怪と一緒に
するとほら、辿り着けるじゃないですか

【朗読花歌】辿り着けるじゃないですか(←ハナウタナベさんのnote)

価値価値と煩い髑髏

正しいことを言う資格を一々問いただす奴がいる
恥ずべき事はそうして黙らせてしまう事だろう
払う、祓う、目頭の刺々しい結晶
価値価値と煩い髑髏からは全力で逃げる

傾いた汚れ

壁にベッドを寄せて眠る
疲れは壁になすりつける
九十度傾いた私の歴史を
汚れながら毎晩見ている

図書館

横顔ばかりの記憶を頼りに図書館を探す
木漏れ日を背に貼り付けたまま入館する
特に拒まれることもない
小径のような静寂を辿る
詩歌の棚から本を引き剥がす
擦れ出た微かな音が虫のようだった

明け方カラス

明け方カラスは連敗中
漆黒マナコが水浸し
もういいか
物語を捨て身体を拾う