マガジンのカバー画像

528
運営しているクリエイター

2022年11月の記事一覧

私は歩く

あなたが積もる
あなたが積もる
あなたが積もる
あなたが積もるよ

たくさん泣いた
たくさん泣いた
たくさん泣いた
たくさん泣いたね

私は歩く
私は歩く
私は歩く
私は歩くよ

たくさん咲いた
たくさん咲いた
たくさん咲いた
たくさん咲いたね

ハナウタナベさんの朗読花歌

ふくらはぎ

ふくらはぎとか痛い朝
柔らか歯ブラシなどつかう
こむらが返って明けた朝
正座がなぜだか気持ちいい
そいつもこいつも
それらもこれらも
百段階段のぼったせいだ
残りの段数、想いながら
夕日が綺麗と
急かされたせいだ

世界が終わる日

世界が終わる日の三割引シールが
ヒトのおでこに貼られていく
評論家詰めの瓶が
野菜室の中で悲しい議論を始める
突然裏庭に深くて大きな溝が生まれ
大気が飲み込まれていく
吸える分がなくなると海が低温沸騰し
真っ暗な宇宙が降りてくる
冷蔵庫の扉を閉じてやり過ごす
乾涸びると思う

出荷

出荷の際には品質保全の為に布を纏わせる
こんなふうに帽子もね
可愛いよ、さようなら

いつまでも離してくれないものだから
こんなふうに私もね
可愛いよ、いっしょだね

今宵の月は電球色

儚くそよぐティッシュペーパー
鼻水に浸してやる
今宵の月はほら電球色
ひよこにかえって暖まる

看板

追い越されたけれど
立ち止まって看板を見てる
列が長く伸びていく
私はゆっくりと後尾に追いつき
やがて先頭を追い越して
役に立たない隣の列に並ぶ
関係のない話を聞き
相槌を打つ

後を追ってきた看板が
自分の列に並んだ
誰かがまた追い越して行ったけれど
関係ないよね
看板の列に看板が並ぶ

音がやむ

サイレン、音がやむ
タイヤはゆっくりと転がる
空も転がる、青いまま
赤い光が転がる、取り巻く顔々
それもこれも消える、
消える。