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2022年2月の記事一覧

白髪

だれもいない
冬のブランコは冷たそう
こどもはみんな
おとなになって
しまったのかもしれない
そうじゃない
私が今
考えるべきことは何だろう
スーパーマーケットの前で
横幅の広い
リアルお茶の水博士とすれちがった
ちぢれながら水平方向に伸びる白髪
そうじゃない
あらためて考えてみたら
その白髪ほどには
大したことじゃなかった

黄色い背伸び

向日葵の種を一粒隠し持ち
幽霊の後を追えば夕立で
夕立といっても大雪で
冷たい足跡に重なる踵に
銃の頭が挟まって
種と一緒に私も撒かれ
撒かれた途端に埋められて
花が咲くのは夏だろうと
思っていたらもう咲いて
種は千粒、幽霊は
丈に纏まり黄色い背伸び

あなたはいつからあなたでしょうか(原案)

先日投稿した「あなたはいつからあなたでしょうか」の原案です。
少々生々しすぎること、意味が限定されること等の理由でこれを修正したわけですが、このまま消すのも忍びなく、、、ほんとはこちらが好きだったのかも。でも、あとで消すかもしれません。

あなたはいつからあなたでしょうか
わたしはいつからわたしでしょうか
容器の中の肉片に
きれいな日差しがあたっています
かすかなかすれたちいさな声で
わたしがあな

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夕飯

わたしは日暮れを待ちながら
帰らぬあなたを待ちながら
夕飯について悩んでる
迷い始めたからまたカレーになってしまうよ 

三毛猫

座った目をした政治家が
前進せよと言っている

座った目をした坊さんが
信じなさいと言っている

座った目をした酔いどれが
俺はダメだと言っている

座った目をした群衆が
吊るし上げろと言っている

そんなに何かを見下したいのか

座った目をして三毛猫が
静かに私を見上げている

日陰者の花

擦り減り絵筆の出番待ち
トマトスープの残滓を糧に
日陰者の花は空き缶の中で咲く

https://twitter.com/conchiqueke/status/1496400069226295296

振幅2

弦の振動の中に虹が現れることがある。独楽のすりこぎ運動の中に昔の景色が映ることがある。いずれにしても私たちはその振幅のはざまで生まれた光だ。だから手足をじたばたさせて泣き叫ぶ。だから安心して強く心を震わせればいい。

あなたはいつからあなたでしょうか



あなたはいつからあなたでしょうか
わたしはいつからわたしでしょうか

あなたが愛しく感じるたびに
あらたなあなたになりました
わたしが愛しく感じるたびに
あらたなわたしになりました

あなたがわたしをよびとめました
わたしがあなたとよびましょう
あなたの鼓動がはじまって
わたしはわたしになりました

あなたはいつからあなたでしょうか
わたしはいつからわたしでしょうか

約束

箱に収まっていた幼い頃の古いノート
消しゴムで消されていた跡を辿った
電球の光に透かして見たら読めた
大きく伸びやかな字
遥かな今に繋がる誰かとの約束

モノクローム2



テレビに足が生えていた。モノクロームの球児たちが兵隊のように歩行するのをながめていた。乳歯が抜けて生まれた欠落を舌で確かめながら思った。屋根の上で音をたてそれからどうなったのか。いくつの白い欠片がそこでうずくまっているのか。テレビの突起をつまんで捻るとひどくガサツな音がした。一瞬星空を映し出したあとに痩せた侍が人を斬っているところだった。

閃輝暗点

ぎらぎらと輝き
ぎざぎざと歪み
閃輝暗点の欠落が中心から周縁へと旅をする
やがて視界から社会のどこかに移転して
そこでも何かを欠落させる
不安と陶酔は受け継がれる、戦争かな

嵐の日にも

嵐の日にも人は死ぬから
嵐の中で安らぎを祈る
祈りのはざまで人が生き
生きて嵐の中で生む

嵐の日にも人は死ぬから
嵐の中を仲間と歩く
歩く仲間といつかは別れ
別れて歩く人が生む

無意味な線分

無意味な線分、その懐に小さな人が立っている
星と星とをつないでいくと、やがて鎖線がおりてくる
句読点から句読点まで

ブレーキランプ

車と私は螺旋の道にへばりつきながらのぼっていく。捻じ曲げられたその行方、出口に光を期待していたが真っ暗だった。排気ガスの行方が気になって空を見あげたら、地べたで光る私達のブレーキランプを見おろしていた。