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わたしの幸せな結婚(顎木あくみ)|ファンレター

毎週木曜日は少女小説・ティーンズラブ小説の感想を、ファンレターを書くような気持ちで綴っています。
今回は、顎木あくみさんの「わたしの幸せな結婚」です。

ライトノベルはすべてKindleで購入しています。昨年は年間で400冊ほど購入し、Kindleunlimitedでも100冊ほど読んでいたので、Amazonをみるとおススメ商品に少女小説やティーンズラブが並びます。私が最初に「わたしの幸せな結婚」を目にしたのはそのレコメンド商品にならぶ表紙でした。

とってもシンプルで目を惹くタイトルに綺麗なイラストで私の興味関心にとても近かったのですが、「わたしの幸せな結婚」というパワーワードにひっかかってなかなか手をだせずにいました。アラサー・独身な上にこれといった人もおらず。そんな日常が当たり前になり、正直恋愛ごとが面倒くさいと思うようにもなっていました。とはいっても、いいなぁと思う相手がいれば結婚したいと思う気持ちもあって、なんとなく"結婚"という言葉に苦手意識を持っていました。だからは、このタイトルだけを見たとき私は「この物語はヒロインのお嬢様が幸せな結婚をするサクセスストーリーなんだろうな」と物語ではなく現実的なイメージが沸いて、あらすじも読まずに避けていました。(ごめんなさい)

それが、いつだったか小説家になろうのディスプレイ広告にコミカライズ版が表示されていて、その数コマを見て気になり小説版を購入しました。

<あらすじはこちら>
異能の家系に生まれながら、その能力を受け継がなかった娘、斎森美世。能力を開花させた異母妹に使用人のように扱われていた。親にも愛されず、誰にも必要とされない娘。唯一の味方だった幼馴染も異母妹と結婚し家を継ぐことに。邪魔者になった美世は冷酷無慈悲と噂される久堂家に嫁ぐことに…。和風ファンタジー×嫁入り。結婚から始まる恋愛の物語。

タイトルだけ見ると、てっきり幸せなラブストーリーなんだろうなぁと思っていたのですが、あらすじを読む限り全然幸せそうじゃない。むしろ、辛そう……。何が「わたしの幸せな結婚」なんだろう?そう疑問に思いました。

美世、よく生きていてくれた。

まずはじめに思ったのは、美世を抱きしめてあげたい。守ってあげたい。美世は斎森家で存在すらも認められていないような空気以下の扱いを受けています。美世の両親は政略結婚で、父は美世の母と結婚するために愛していた人と別れさせられたという経緯があり、その元恋人は後妻として斎森家に嫁いできます。愛する人と結婚した女の娘、特殊な"異能"を受け継ぐために別れさせられたのにそれを持たない娘。美世は斎森家の娘であるにも関わらず、食事も与えられず、衣服も与えられず自分であまりものなどを探してこなければならないという環境での生活を強いられてきました。母を早くに亡くしてしまい美世には守ってくれる存在が誰もおらず、1人でずっと耐えて育ちました。食べ物すら手に入れることが困難で、あまりものを探し持ち出していたり……。

ヒロインなのになんでこんなに酷い環境なの?いくら憎い相手の子どもだからって、最低限の衣食住は与えてもいいんじゃないの?仮にもあなたの娘でしょ?と父親と義母にたいしてどうしてそこまでするのかという気持ち悪さも感じました。

物語は美世が義妹の代わりに、一番有力な貴族である久堂家に嫁いだことからはじまります。久堂家は地位も権力も持ち"条件"はとてもいいものの、当主が冷酷である、婚約者候補が次々に追い返されているといったことで恐れられていました。父はかわいい"かわいい娘"を嫁がせたくないので、美世の存在を思い出し着の身着のまま、ほぼ手ぶらで家から追い出したのです。

ここから、想像通りに久堂家当主の婚約者となり幸せになっていくんだな……というのは正解ですが、そこまでのストーリーに悲しいこと、やるせないことなどいろいろな感情が混ざります。美世は実父に、義母に、義妹に虐げられて生きていたので簡単にその習慣や癖、思考は変わりません。存在さえも認めてもらえない、食べるものも着るものもない生活を送っていたので、そこに居させてもらえるだけで美世にとってありがたいことで、追い出されるようなことだけはされたくありません。斎森家を出られたことに安堵しつつも久堂家から追い出されたら行き場がないので、嫌われないように邪魔にならないように迷惑かけないように……一挙手一投足神経を張り巡らせています。生きることに必死で、それ以外のことも周りのことにも目を向けたり、考えたりするってこと難しいですよね。周りの人の邪魔にならないように、そして嫌われないように酷いことをされないような言葉や行動を選ぶしかありません。

美世の育ちをみているからか、清霞の態度がとても腹正しいしこんなヒーローやだ!もっと美世を甘やかして!!なんて思ったものです。だって、美世が初めて自分以外の人に食べてもらうために作った食事を口もつけず、美世を責めたてて席をたつのだから。もし自分の立場があって、毒が入れられていたら危険だと思うのならば、もっと別の言い方で食事を断ることだってできたでしょう。100歩譲って「信用できない」って言うにしても、あれはない。私の清霞の評価は-100点。もうちょっと甘やかして!!と読みながらちょっと目が潤みました。

美世は自分の内にため込むし、自己肯定感も低いからマイナスに考えてしまったりと、正直に言うと私のあまり得意ではないタイプだけど美世が妹のように思え、守ってあげたくなってしまうんですよね。なのに、彼女は自分と向き合いつつ少しずつ心を開き、相手をよく見て考えて最善の選択をしていく。美世は弱い。弱いけれど、耐えて耐えて耐えて少しずつ地に根を張るようにパっとみただけではわからない強さを秘めている。

彼女を虐げていた一見強者に見える父、義母、義妹の弱さが際立って見えて。幼馴染の弱さが清霞の強さを際立ち。

とても悲しいストーリーの中から生まれたばかりの美世の幸せが当たり前に続きますように……と願ってしまう。

ダ・ヴィンチ 2021年1月号、コミック ダ・ヴィンチのコーナーで
モダンにしてレトロな煌めく時代 "大正ロマン"になぜ惹かれるのか?『わたしの幸せな結婚』対談 顎木あくみ×高坂りと
が掲載されています。KindleUnlimitedでも読めますので、ご覧いただくと本作が誕生した裏話が分かのでおススメです。

コミカライズもされているので、マンガが好きな方はぜひご一読ください。



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