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「未来をひらくコミュニケーションデザイン〜SmartHR×SHE×コンセントのデザイナー5名が語る」イベントを開催しました

こんにちは、コンセントのコミュニケーションデザイナー、青木です。

2024年8月、株式会社SmartHRさん・SHE株式会社さんとの共催でコミュニケーションデザイナーの今について考えるイベント「未来をひらくコミュニケーションデザイン 〜SmartHR×SHE×コンセントのデザイナー5名が語る」を、コンセント本社オフィスにて開催しました。

3月に開催したデザイナー交流会「DESIGN HALFWAY」シリーズの第二弾です。


1.ライトニングトーク

DESIGN HALFWAYは、「デザインに向き合う人々が自由に語り合う場をつくる」ことを目的として立ち上げたイベントです。
今回は、SmartHRから田嶋諒さんと名和大気さん、SHEから野澤未帆さん、そしてコンセントからは山﨑菜緒と大鹿純平の5名が登壇。
まずは、各登壇者がコミュニケーションデザインをそれぞれのことばで紐解き、その向き合い方や実践していることについて語りました。

フェーズと時代で変化するコミュニケーション

✏️田嶋諒(株式会社SmartHR ブランディング統括本部 サービスデザインユニット チーフ)

「ピザを入れる箱のデザインを新しくしたい」。宅配ピザ屋からそんな依頼が来たならば、デザイナーは諸条件を確認し、それに適うデザインを提案する「逆算的なデザイン」を行うことが多いかもしれません。
それに対し田嶋さんは、依頼相手のことを多面的に考えることからはじめます。
依頼主のピザ屋だけでなくピザ屋を取り巻くステークホルダーを想像することで、箱のデザインにとどまらず、それぞれの相手が一番盛り上がるコミュニケーションを生むためには? という体験にアイデアをジャンプさせるのです。
重要なのは、こうしたアイデアは企業の成長フェーズや社会動向によって変化させる必要があるということ。全国展開を行うピザ屋なら? 配達者はどんな雇用形態? など、その背景を視野に入れて考えるのだと語ります。
与件を多角的に捉え、さまざまな状況に思いを寄せたコミュニケーションを設計するのが、田嶋さんのコミュニケーションデザインです。

田嶋さんのチームが手がけた事例。シンプルなデザインの裏には、背景への深い洞察と見たひとの心を動かすための工夫が。(登壇スライドより抜粋)


日本独自のコミュニケーションデザインの可能性

✏️名和大気(株式会社SmartHR ブランディング統括本部 ブランドデザインユニット チーフ)

美意識やアイデンティティ、世の中のありようといった自身の関心事から、日本独自のコミュニケーションデザインとそのアプローチについて思索を深める名和さん。
思索のヒントを得るものとして例に挙げたのは、華道茶道です。思想や作法を調べると、その一つ一つに他者と交わる上での意図があり、まさにコミュニケーションデザインだったとの気づきがあったそう。伝統文化を参照することで、グローバル社会における日本独自のアイデンティティを感じさせるデザインが生まれるのではと話します。
コミュニケーションデザインのアプローチを探る方法は、伝統を参照するもよし、PDCAを回して仮説・検証を繰り返し試行錯誤するもよし、自由でいいんだよというポジティブなメッセージで締めくくりました。

名和さんから参加者へのあたたかいエール。(登壇スライドより抜粋)


大手制作会社からスタートアップ事業会社へ。私の波乗りキャリア戦略

✏️野澤未帆(SHE株式会社 SHEデザインユニット クリエイティブディレクター)

野澤さんは、前職の広告制作会社では「ビジュアル起点のアイデア力で、プロモーション全体を跳ねさせること」を武器に活躍。しかし、もっと1つのサービスに向き合う経験を積みたい、そして自身の武器を更新したいとの思いから事業会社であるSHEに転職しました。
転職後は大きくふたつの変化があったそう。
ひとつは、コミュニケーションデザインへの認識が「盛り上げる」ものから「盛り上げながら“育てる”」ものになったということ。一度制作したら終わりではなく、その先も皆でアウトプットを育てていこうというムードは、前職ではなかった感覚だと語ります。
もうひとつは、サービス開発に直接携わることで、社会課題に向き合っているという実感を持つようになったことを挙げました。
転職によって、極めて自覚的に自身の価値をアップデートしようとする野澤さん。その挑戦は、コミュニケーションデザイナーの価値そのものを高めていくことにもつながっています。

野澤さんが手がけたサービスのリブランディングとイベントのメインVI策定。「盛り上げ育てる」、「社会課題への貢献」を感じさせる事例。(登壇スライドより抜粋)


言葉と景色

✏️山﨑菜緒(株式会社コンセント コミュニケーションデザイナー/アートディレクター)

かつてはグラフィックデザイナーを名乗っていた山﨑。当時の経験から、デザイナーが持つべき素養として「複雑性に耐える力」を挙げます。
グラフィックワークは、全体と細部の相互作用を常に意識し続けなければならない複雑なもの。そこで培われる「複雑性への耐性」を活かし、デザイナーはクライアントが抱える課題の複雑性をともに担うことができるのだと続けます。
複雑性をほぐし対話するための整理。言葉と景色(言語化と可視化と言い換えられるかもしれません)を行き来し複雑性を手なずけ、アウトプットとして差し出すこと。
それらを通じたコミュニケーション形成こそが、コミュニケーションデザイナーの大事な仕事であると位置づけます。
コミュニケーションデザイナーを名乗ることになったときには、戸惑いがありましたが、しかし世の中が複雑性にあふれる今、デザイナーだってその役割を複雑なまま受け容れればよいのだと覚悟を決めたそう。
「耐性がある」デザイナーでありながら複雑なものに惑う心も持ち合わせる自分だからこそ、クライアントの課題解決への結節点になれるのではないかと展望を語りました。

複雑性に耐える力のあるデザイナーだからこそ、やるべきことがある。(登壇スライドより抜粋)


合気道というコミュニケーション

✏️大鹿純平(株式会社コンセント コミュニケーションデザイナー/クリエイティブディレクター)

「合気道のようなデザインをする」とクライアントに評された経験から、自身を「受け止めて、伝え寄り添う人」と表現する大鹿。
クライアントの課題と対峙する際には、彼らの奥底にある「感情」を知るためのコミュニケーションを大切にしています。
それは子育てにおける子どもとのコミュニケーションにも似ていて、うまく言語化できない相手の感情に寄り添い、「どう」課題に感じているのかを探る行為です。この過程を経るからこそ、デザイナーのアウトプットスキルが意味を成す。
さらに、子どもが小さな成功体験を積むことで成長していく様と重ね合わせ、デザインもクライアントとともに「未完成を何度も一緒に創りながら」成果を積み上げるのが自然な形ではないかと話します。
同時に、それらはすべて自身が幸せになるための営みであることも忘れません。
周囲の大切なひとたちが喜んでくれることを楽しみに、大鹿はこれからも「未完成」を創り続けます。

ほんの少しの差で意味合いは変わってしまうから、相手の感情に丁寧に寄り添い、ともに積み上げる。(登壇スライドより抜粋)


2.パネルディスカッション

続いては全員によるパネルディスカッションです。2つの問いについて意見交換を行いました。

〈テーマ1〉コミュニケーションデザイナーが組織の内部に与えるものは?

事業会社であるSHEの野澤さんとSmartHRの田嶋さんは、内部のウゴキを促進させるものとしての効用を挙げました。
野澤さんは、まとまらない議論の打開策を導くものとして、またプロジェクトの初期段階でメンバーに気づきを与えるものとして、素早くアウトプットし可視化してみせることが自分の役目だと話します。

田嶋さんは、コミュニケーションデザイナーは遊び心と愛情を与える存在であってほしいと応じます。
皆が理詰めで考えてばかりいると、遊び心を忘れて堅くなってしまうことがある。そんなとき、会社や事業に対する愛情でもって、思わず周囲がクスッとできるような遊び心を提示できる存在でありたいと話しました。
一方、コンセントに所属し、クライアントワークを主とする大鹿は、クライアントが目的を見失いそうになったときに、それを気づかせ本質に立ち戻らせることを挙げました。
これは、クライアント組織のことを客観視できる外の人間ならではの見解と言えるかもしれません。

〈テーマ2〉コミュニケーションってそもそもデザインできるもの?

デザインできるが、その結果できないところが見つかるということの連続だと回答したのは名和さん。「できる」と思って一旦デザインをしたものでも、そこから抜け落ちてしまうものは必ずある。だからPDCAを回し続けると話します。
野澤さんはLINEの独特なスタンプコミュニケーションを例にとり、「あの使い方は、開発側は想定していなかったのでは」と、計算外の広がりの可能性について言及。
なるべくコミュニケーションの在り方を計算してデザインしたいと思う一方、そこにとどまらない拡張性にも価値を見出しているように伺えました。
同様に大鹿も、提示したデザインが狙いと異なる印象を持たれたとしても、それは新しい見方を与えてもらったとポジティブに受けとめるそう。

山﨑は、コミュニケーションは「し続けるもの」という前提から、「できる・できない」という即時的なニュアンスで捉えるのではなく、時間軸をもってその成果を判断することを提起。
失敗したと思ったことが、後に好転した経験についても触れました。

3.懇親会

その後は登壇者と参加者の懇親会です。
登壇者を中心に参加者同士で活発な会話がなされ、会場は一気に賑やかに。トークセッションの内容について、皆で考えや理解を深めている様子が伺えました。

まとめと気づき

5名それぞれのキャリアや考え方を通して語られた、コミュニケーションデザインという営みについて。頷きながら熱心にメモをとる参加者の姿が数多く見られ、終了後のアンケートでは以下のような声が寄せられました。

  • コミュニケーションデザインという登場して間もない分野について考えることができ、大変有意義でした。みなさんの話で新しい視点をインプットできたので、今後のデザイン活動に活かしたいです。

  • コミュニケーションデザインは良くも悪くも示す範囲が広く、扱いが難しいと感じていましたが、登壇者の方も模索している部分も多いとのことで、少しだけ安心しました。今日のお話をふまえて、自分の会社でのコミュニケーションデザインの在り方を考えてみたいと思います。

5人のトークに聞き入る参加者たち。お越しくださり、ありがとうございました!

わたし自身も、同じコミュニケーションデザインに携わる者として共感することばかりでした。
前提の深掘り、関係構築、複雑性や偶発性、そしてアウトプットを育て続けること…。こうして眺めてみると、なんだかコミュニケーションデザインは、わたしたちが日々を生きていくための所作をなぞる行為のような気がしてくるのでした。
田嶋さん、名和さん、野澤さん、この度はどうもありがとうございました。
今後もコンセントでは「DESIGN HALFWAY」として、コミュニケーションデザインにまつわるさまざまな交流イベントを企画する予定です。
次回の開催もお楽しみに!

ロゴをもじった“デザハポーズ”で締め!


DESIGN HALFWAYについて

「デザインに向き合う人々が自由に語り合う場をつくりたい」という目的で、コンセントが企画・運営する交流イベントです。
共催いただける企業さま、デザイナーさまは、お問合せフォームからご連絡ください!

▼お問合せフォーム
https://forms.office.com/r/cksUFqkvpJ

常にデザインと向き合っているわたしたち。
でもここは、まだ道の半ば。
現在地に辿り着くまでの旅路を
近い境遇の仲間と語り合い、
次の一歩の可能性を広げたい。
正解はなくて、だれひとり同じ道を歩まないからこそ、
DESIGN HALFWAY-道の半ば-で会いましょう。




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