見出し画像

僕は人前でバナナを食べられない

自分の中にある、"小さなプライド"に、

「自己ブランディング戦略」

という名前をつけている。 

僕は小さい頃から、

「人前でバナナを食べる」のがめちゃくちゃ苦手だ。

バナナの、

まず最初にあの「皮を剥く」という行為が、

野生動物のそれに感じられてしまい、

「何事も人前ではクールにこなしたい」

僕の行動哲学に反するからだ。

無論、

誰にも見られていない一人だけの空間であれば、

バナナはもちろん、空豆も食べられるし、

枝豆にも心おきなくチャレンジできる。

あくまでも、

「人前」での所作に関する話であることを、
念頭に置いてお読み頂けると嬉しい。

ちなみに、

空豆は

皮を人差指と親指でつまみ、「くりゅっ」と

口の中に中身を解放してやった後、

残った皮を隣の空いているお皿に置く、

というか捨てると思うのだが、

その一連の動作が

なんだか妙に恥ずかしかったりする。

だから人前では食べるが難しい。

枝豆は、

一度口の中にそれを入れた後、前歯で中の豆を

一粒一粒、ちゅるちゅると解放していく。

この食べ方がスタンダードだが、

あの少し、歯型がついてクシャっとなった

残った皮が、自分の前の小皿にだんだんと

溜まっていくのが画的に嫌なのだろう。


そして何より、

両者に共通して言えることが、

皮から中身を解放する時

それが口の中に上手く入らず、

「つるっ」と明後日の方向に飛んでしまう可能性があるということだ。

そしてそれは、

人前においての

"美所作"に命をかける僕にとって、

最大のリスクであることを意味する。

仮に、

まだぎこちない関係の女性とデート中の食事でこれが起きてしまったら、

無神論者の僕でさえ、神に救済を求めるだろう。

「神よ枝豆をしくじってしまった哀れな僕に、この最悪の状況をカッコ良く切り抜ける方法を教え給え」

と。

他にもこのような、人前での「食事」においてのリスクは枚挙に暇がない。

やきとりは、

あの串に刺さった状態のお肉を一つ一つ噛みとって行く行為に、

ワンピースのルフィや、ドラゴンボールの悟空のような、

ワイルドさが垣間見えてしまう気がするので苦手だ。

僕個人のブランディング戦略としては、

「男のワイルドさ」は不要。

ワイルドではなく、あくまでクールに見られたいのが狙いだからだ。

丼ものはどうか。

カツ丼、天丼、親子丼、焼肉丼……

ああ食べたい。毎日食べたい。

しかし、

残り4分の一程度の量になってからが、

「丼もの」の最大のリスクだ。

一番上の具材にかけられた美味しい"タレ"

これが、下の方のご飯にはたくさん絡んでいるため、

前半戦のように、箸でご飯のまとまりを掴んで
食べることが困難になる。

つまり、丼を反対の手で持ち、口に傾けながら

箸のサポートにより口に勢いよく

"かっこむ"形になる。

あのお腹が空いてがっついている感じを人に見られたくないのだ。

スパゲティナポリタンは、

ケチャップの赤みが口の周りに付着することを避けられないため、とてもリスキー。

大好きなお好み焼きや焼きそばも、人前で食べるには、非常につらい。

避けては通れない"青のり問題"が立ちはだかるからだ。

口の中に入ってしまった青のり達の行方を、

自分の意思でコントロールすることは

言うまでもなく困難だ。

もし、

青のりが前歯に付いた状態で喋ってしまったら…

一緒に食事している大事な友人の、

僕への信頼を失墜させるきっかけにもなり得る。

僕は友人の前でも、常にカッコ良くありたいのだ。

このように、個別に

「人前で食べるのが苦手な料理」

を上げていくとキリがないのだが、

そんな僕が、

人前で食べるのにリスクが小さいと思う料理を考えてみた。

ミラノ風ドリア
グラタン

お皿の底が浅く、料理の性質上、

ホワイトソースの程よい粘度で、

ご飯を含めた他の具材がバラバラに分離することなくうまくまとまってくれるため、

一口大の塊をスプーンですくって最後までクールに、格好良く食べ切ることができる。

"飲食ナルシスト"

の僕達には有難いスタイルの食べ物だ。

画的にも高級感があり、かつシンプルで、

ベターな選択と言えよう。

PINO(アイスクリーム)

程よい一口大で、見た目も可愛いところがよい。

袋を開封し、さり気なく口の中に放り込み、

音も無く数秒で口の中を通過させることができる。

人前で食べるのに、極めて安全性の高いおやつと言えるだろう。

今後とも、PINOを応援し続けたいと思う。

「人前で食べるのにリスクの少ない料理」

他にも考えてみたのだが、実はこれ以上浮かばなかった。

大学時代、学園祭の実行委員に所属していた時、

学年が上の女性から、

「そういえば、あなたが物を食べている姿を見たことがないかも」

と、会話の流れに関係なく、ふと言われたことがあった。

学祭の仕事をしながら、事務所でスタッフが食事をするのは、極めて日常的な光景だったので、

食事をしない僕に自然と疑問が生じたのであろう。

厳密には、次の授業の教室に早めに行き、

誰もいない教室で、おにぎりなどをささっと食べていた。

人前で格好よく食べることに適した食べ物が、探しても中々見つからない。

だから、

僕は最初から

「人前でなるべく食事をしない」

という逆転の発想でこれまでの人生をサバイヴしてきた。

この文章は、

先日、たまたまこの価値観を共有する友人との会話が、非常に盛り上がったことを受けて執筆している。

この広い世界に、他にも同じような仲間はいるのか。

「孤独のグルメ」もやぶさかではないが、

やはり、複数人でする食事も楽しいものだ。

突然であるが、

僕らのような、

"飲食ナルシスト"な同士がもしいるのであれば、勇気を持って名乗り出て欲しい。

この価値観を持つもの同士が集まって食事をしたら、

果たしてどんな状況が生まれるのか。

#人前でバナナを食べられない会

をここにひっそりと立ち上げたいと思う。

#キナリ杯
#岸田奈美さん膨大な作品の審査お疲れ様です
#ライフスタイル
#セルフブランディング
#コラム


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?