「子どもの夢中にどうつきあえばいいの?」5歳の母のおうちリベラルアーツ④
■はじめに
「5歳の母のおうちリベラルアーツシリーズ」4回目となる今回は、前回に引き続きCo-musubi 代表井上さんと未就学児・低学年の子どもの親たちによる「子育てのおける日常の悩み」をテーマとした座談会のレポートをお届けいたします。
今回の悩みは、「子どもの夢中へのかかわり方」についてです。
■座談会の参加者
井上:一社)ダイアローグ・ラーニング 代表理事・Co-musubi創始者
富岡:小学校2年生と4年生姉妹の働くママ。日本の教育環境では、育つにつれて子どもの可能性がどんどんなくなっているように感じている。
田渕:年長の娘のママ。最近、「探究」という教育概念を知ったけれど、自分にない「観察する」とか「深い思考」を知りたいと思っている。
■お悩み1 「子どもが夢中になっていることを、どのように広げればよいのかわかりません。」
井上:今、お子さんが好きなこと夢中になっていることはありますか?
田渕:虫、鳥、ポケモン、お絵かきでしょうか。鳥の絵を描いたりなどもしていますね。
井上・富岡:いいですねー。
田渕:5歳の娘は道端にいる虫(死骸含む)をしゃがんでじーっと観察したりもしています。一方で、死んだ虫をキモチワルとか不衛生だと避けたい気持ちの私もいます。
頭では、娘はただ虫をしっかり観察しているんだって理解しているのですが、親の私の心と身体がざわつき気持ちが追いついていません(涙)
井上:親が自分には同じ気持ちで楽しむのが難しいと思うときには、プロやその趣味を究めている方々の力を借りてみるのもよいですよ。
例えば、親はワークショップなどの機会をコーディネートしたり、一緒に参加してみる。
特に子どもが小さい時には、親も経験をして一緒に楽しみを感じることが大切だと思っています。
子どもが夢中になっていることについて、その魅力を存分に知っている人の視点からお話を伺えると、親自身も「こういう面白さがあるの?!」と新しい発見ができて、対象に対しての価値観が変わりますよ。
親だからといって、自分たちだけで子どもが夢中になっていること全てに対し楽しさを見出していこうというのは無理です。別の存在ですから、親と子は。
究めている人のその解像度の高い視点を借りるのがおすすめです。
田渕:なるほど。いろいろな教育関係の話をきいているうちに、親がもっと子どもの視野を広げなければならないんだと思い込んでいました。
とは言え、私は子どもが興味があるものを楽しめもしない。そもそも私自身が何かに熱中したりしたこともなくて「どうすればいいんだー!」と悶々としていました。
井上:今は情報が多すぎますもんね。頭でっかちになって、使命感を持っちゃったんだね。
まずは、この子は何を楽しんでいるんだろう?という観察をしてみたらいいんじゃないかな。
この子はいったい何のどこをどのように見ているんだろうと、黙って観察してみる。
もし、観察してもわからなかったら「どんなところが素敵?」とか「どんなところがかわいい?」と子どもに教えてもらう。
そして「なるほどー、そこが魅力的なんだね。」と受け取る。
そうやって、子どもの見ているところを興味の入り口にさせてもらったらいいんじゃないかな。
富岡・田渕:確かに。それならできそうですね。
■お悩み2 「親自身がおもしろさを見つける感度を上げる方法はありますか。」
田渕:もう少し質問してもいいですか。
例えば子どもが鳥を見つけて、「鳥がいるね、飛んでたね。」と事実を共有することまではできるんですが、その後が続かない・深まらないというか。
私が「鳥がいるね・・・」とそこで会話が止まっちゃうんですよね。
井上:もっと深めたい、でも今は知識を持ち合わせていない、という時には、鳥と鳥、鳥と人間の違いや共通点に着目して「気づき」から思考を展開していくのも手ですよ。
子どもは言語化しないだけでナチュラルにやっている子も多いです。
なので問いかけると案外一緒に考えてくれます。
写真を撮って後で調べてみてもいいですね。知識として残ります。
田渕:おもしろさはどうやって見出だすんでしょうか。私のおもしろさを発見する感度が低くて悩んでいます。
井上:じゃあ、田渕さんはどんなことが好きですか?
田渕:苔などの写真を撮ることです。
井上:苔の写真撮影のどんなところが好きですか。
田渕:木にスマホを近づけて、苔なのに森っぽい写真とかトトロの世界観的な写真を撮って美しいと愛でるのが好きです。
井上:苔のどんなところを美しいと思いますか。
田渕:色がいいです。
井上;森そのものを撮れば森は撮影できるのに、なぜあえて苔なのでしょう。苔を森に見立て撮影するのが好きなのはなぜですか。
田渕:森を俯瞰することはできないけれど、苔であれば全体を上から見たり、横から見たり色々な方向から眺めることができるからでしょうか。。
井上:なるほど。そうやって角度を変えて見ることでどんな気づきがありますか?
田渕:え、気づき???(困惑)
井上:そこだね。
いま、田渕さんは、表現の素材として苔を好きなんだよね。
その苔が放つ魅力について掘って見ると「面白さ」を実感できるかも。
例えば、苔は根がないんですよね。(仮根はあるけど、水分を強く吸い上げる能力はない。)
根がないのに、どうやって水分や養分を吸収するんだろうって不思議に思うじゃないですか。
ある種の苔は水蒸気を苔の表面を開いて吸収するんですよ。苔が湿度の高いところにいるのはそれが理由。
乾燥しているところと雨上がりでは苔の様子も違うので、その違いをみるのも面白いです。苔ってすごい!って気持ちが湧いてくる。
私も苔が好きなので、長野の白駒の郷を訪れたこともあります。
気軽にハトバスで日帰りで(笑)
白駒の里には、485種類もの苔が生息していて、苔の種類にまず驚きを感じて。それだけの種類の苔があるということは、苔は太古の時代から多様性を増して生き延びてきたんだな、苔ってすごいっ♡て感激できる。
ミクロの視点を持てるアイテムとしてハンディ顕微鏡で見てみたりするのも面白いですよ。
まずは、ご自身が好きな苔の魅力を理解できたら、お子さんが鳥にどんな魅力を感じているのかを理解する道筋を辿れると思います。
田渕:ありがとうございます。苔そのものをぜんぜん知ろうともしていなかったです。。。
井上:私達はこういった興味関心を掘っていくような教育を受けてきていない世代なので、「広げましょう」と言われても、具体的にどうすればいいのかわからないですよね。
子育て講座はたくさんあって、「こういうことが大切ですよ。」と情報として「教えられ」ますが、「具体的にこういう見方や方法がありますよ。」とやり方を知れる機会は少ない気がします。
田渕:確かに見方そのものを学んだ記憶はありません。教えていただいた方法を試してみたいと思います。
■気質を見る
井上:田渕さんの娘さんみたいに、ポケモンや恐竜、電車が好きな子はコレクターなんですよね。
「ただ〇〇が好きなんだ」と大人は理解をするけれど、気質としてはコレクター。気質を尊重して理解してあげることはとても大事です。
具体的にいうと、ポケモン好きはポケモンの種類だけではなく、ポケモンの変化(進化)にも面白さを感じている。
分類(コレクション)できる上に さらに変化まで追うことができている。分類→領域→分類→領域と具体と抽象を行き来しながら把握できているってすごいことですよね。
だから、その子の中のブームが去っても「ポケモンブームが終わったね」とそこでいっときの出来事として切ってしまうのではなく、その子の気質に目を向ければその子の中にポケモンブームを通じて残っている大切なものに気づけます。
結果ではなくプロセス(やってみていること)に着目することで、この子は変化を把握でき分類することができる思考特性の強さを持っているんだなぁと信頼を感じられるし、今後にもいくらでも活かせますよね。
そばにいる親(保育者)だからこそ、継続して観察しその子の強みを認めてあげられるといいですね。
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以上、座談会の中から「子どもが夢中になっていることへのかかわり」についてご紹介しました。
■執筆後記
雑談会後、区の広報や近くの公園での自然観察会のチラシや張り紙、SNSを見るようになりました。
先日は自然観察会に参加し、昆虫観察の専門家の方とご一緒させていただいたり、いなご軍団にも遭遇したりしました。
イベント終了後も、虫好きの娘と夫は、講師の方と30分以上も虫観察をし話し続けていました。
とても充実した時間だったようです。プロとの出会いを教えてくださってありがとうございました。
もしこのレポートが少しでも子育ての力になったら嬉しいです。
ご感想などお待ちしています。
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ライター| 田渕 由記