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「生命を究める」を読んで。中学生の気づき

Co-musubiでは、中学生になると、
①課題図書を各自で読み
②対話をし
③作文を書く
という機会を増やしています。

今回は、「スタディサプリ三賢人の学問探究ノート(3)生命を究める」を題材に選びました。

平易な文章で、難解な研究テーマをわかりやすく添え、生きる上で大切な本質的なメッセージを伝えてくれる良書です。

とはいえ、中学生が各自で主体的に読むためには、少し足場掛けが必要だと感じました。
そこで導入として、1週目に、金子みすゞさんの詩を対話しながら鑑賞することにしました。

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「青い海の青い水、それはすくえば青かない。」と金子みすゞさんが不思議に思ったように、「生命を究める」の書籍の中でも、生物学者の福岡伸一先生が、以下のように少年時代を回想しています。

じっと見ているうちに、ふと、不思議だなと思いました。
空の「青」も、海の「青」も、すくって持ち帰ることはできません。
空の「青」を絵の具のように取ってきて、絵を描いたり、白いシャツを染めたりすることもできません。それなのに一体なぜ、小さなカミキリムシの背中に、こんなにも美しい青色が再現されているのでしょう。


金子みすゞさんという詩人の目で捉える世界の広さや繊細さに触れ、「確かに、そうだなぁ。」と感じた中学生たちは、その後に読みはじめた「生命を究める」の冒頭で、後に生物学者となる福岡少年の捉える世界との重なりを容易に発見したはずです。

心に生じた「!!」
その小さな驚きや気づきは、読みすすめる気持ちのスイッチになります。

こうして各自で読了し、2週目はZOOMで顔を合わせ対話を行いました。

対話によって反芻し、自分の中で深く理解していきます。

そして3週目。自分の考えをシートに沿って掘り起こし統合してから、各自で作文を書き上げ、提出してもらいました。

以下、中学生たちの作文から抜粋しご紹介します。

「ロボットは人間の命令をしっかり聴いて実行できるのが優秀だ。」
そう私は考えていました。しかし、ロボットを人間に置き換えて考えてみると、ただただ命令を聞くものがいいとはいい難いということに気づきました。
(中略)
私が所属している学級委員会で問題となるのは、用意された項目に沿って記入し発表することはできても、新しいアイディアを考え発表することができない人がほとんどだということです。
ただ、その中でも次から次へとアイディアが湧き出る人もいます。
そういう人は、日常的に自分で考え、自分で行動している人です。つまり、自分から新しいアイディアを生み出せる人は自主自立している人でした。

(部分掲載)


僕は何らかの問題に部分点があり、そこから満点を取れたことが何度かありました。
部分点はとりあえず手を動かしていれば取れることが多々あるので、とりあえず自分ができることからやっていけばいいと思いました。とりあえず自分ができることをやって前に進めば、新しい何かが見えるはずだと思います。
それはゴールだったり、次へ行くためにすべきことだったり、はたまたスタートだったりするかもしれない。

(部分掲載)


ロボットに対して、人の役に立つことができれば人間とおなじ共同体の一員としても良いと考えていた人は少なくないだろう。しかし、それはどうだろうか?
人の役に立つのならロボットに感情を入れても良いのだろうか?確かに、人の感情を読めるロボットが現れたら、より人々の役に立つかもしれない。
だが、感情を持ったロボットが人間を支配することがこの先、起こり得るかもしれない。
では、どうすれば良いのか?柴田正良先生はこう考えている。
「人間のアイデンティティって何なのか、人間は今後どういう存在として宇宙の中で生きていくのかという視野を持ってロボットとの関係を考えて欲しい。」と。

人間らしさを探究しなければ、ロボットの様になりたいと思う人間が現れ、本来の人間らしさを失い、人間がロボット化することが起こりかねない。実際、僕たち人間は科学が先走ったが為に戦争に繋がったりと、数々の過ちを繰り返してきた。
人間は多くの失敗をし、その度に創意工夫を重ね、次に生かす生き物である。
しかし、最近の人類はこの感覚が鈍ったような気がする。
この感覚が鈍ったままロボットに感情を入れるとどうなるのか?
おそらく、また過ちをするだろう。次はもう、取り返しのつかない過ちかもしれない。
何もこれは、ロボットに限った話ではない。

今だってそうだ。誰もがマスクをし、街中を歩いている。
今の生活のあり方を考え、元の生活のままで本当にいいんだろうかということを考えなければならない。
結局、問われているのはここで、このままの流れにのって進んでいいのかということだ。
大人たちが、人間と似た第二の人類を作る。
それは、ロボットと言い、今の人類より賢く、人間を支配する力を持っている。
そのロボットに大人たちは人間の役に立つという理由で、感情を入れようとするかもしれない。
僕たちはこれを眺めていられるだろうか。

(全文掲載)


「自分が自分であることにこだわりすぎなくてもいい」という文章に、はっとさせられた。
僕は以前、家族の中で定着した「素直な自分」というキャラクターから変わることを恐れ、「お調子者の本当の自分」になれずにいた。
僕はこの経験を思い出し、自分が自分の成長を抑えていたことに気づいたのだ。
しかも、その成長は目に見える体の成長ではなく、目に見えない心の成長だから深刻だと思う。
今回気付かされた「生命の本質は変わることそのもの」ということを意識して、変化を恐れずに歓迎して成長に変えたい。

(部分掲載)


いかがでしょうか。
中学1〜2年生が綴る瑞々しい気づきや深い問いに、はっとさせられます。

今回は、詩人や研究者の世界の捉え方を通じ物事を擬似的に見つめ、自然界の法則から生き方につなげ、自分の身近なエピソードと重ね合わせ、自分なりの気づきを自分の言葉で紡ぎ出すことができました。




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