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【レポート】東川で暮らす人から学んだことと、フォルケと仕事 ー週末フォルケ参加レポート/後編ー

11月に参加した週末フォルケ。平日の日中は仕事など、各自自由に過ごしつつCompathのフォルケホイスコーレ(以下、フォルケ)を体験しました。

前編では、私がフォルケに参加した理由や、印象に残ったプログラムについてお話しましたが、この後編では東川に暮らす人たちとの出会い、そこからの発見や、平日のお仕事環境などのことをレポートできればと思います。
前編に引き続き、週末フォルケに参加した本田詩織がお伝えします。

3.東川町で暮らす人たちとの出会い

週末フォルケでは、Day1の「東川町に暮らす人から話を聞く」やDay7の「東川町の生産者の哲学に触れる」など、私たちが8日間を過ごした北海道・東川町の方々と対話する機会が何度かありました。
自らの哲学や意志を持った方々に出会う機会に恵まれ、週末フォルケが終わった後の日常でも大切にしていきたい言葉に、いくつか出会うことができました。

Day1の「東川町に暮らす人から話を聞く」では、Compathの2人がファシリテーターとなり、東川町で養鶏業を営むファーム・レラの新田由憲さんと、東川町でLikoカフェを営む桐原まどかさんのお二人から、「東川町での暮らしのなかで感じていること」、「日々選択・行動するうえで大切にしていること」などの話を伺いました。

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・地域を消費するだけの存在にならないこと

二人とも、それぞれのタイミングで東川町にやってきた移住者。東川町には、お二人のように移住して来た人々も多く、特にこの2,3年で一段と移住者が増えてきているそうです。それに伴って、かつては田んぼだった場所が宅地化されたり、カフェをはじめ町内のお店が増えてきていたりするとのこと。
たしかに、東川町内にはおしゃれなカフェや飲食店、雑貨店などもあり、8日間では回り切れなかった場所もたくさんありました。

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「人口も増えている」、「お店も増えている」、そう聞いて私は「いいことだ、すごい」と捉えていましたが、新田さんは今の町の様子を「東川町は、地域を消費する時代に来ている」と表現。

私はこの言葉を聞いて、自分に投げかけられているような感覚になりましたた。私自身も今暮らしているまちで、「よりよいまちを創る担い手ではなく、よくなったまちの資源をただただ消費する存在になっているのではないか」と。

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新田さんはこんなことも言われていました。「“地域を消費する時代に来ている”ということに対して、町に暮らす人たちそれぞれが共通認識を持てていることが大切。ぼくは、そのまちに暮らす人の1%、東川町であれば8000人のうち80人が同じ認識を持ち、まちの作り手としてアクションをしていけば、間違った方向には向かわないと思う。」

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前編でも触れましたが、私は今年の10月に福岡市に移住しました。これまでの暮らし以上に、自分の暮らすまちとの繋がりを大切にしたい。そんなことも感じながら、選択した移住でした。でも、今の私は何も行動できていない。それどころか、福岡のまちののんびりとした感じや、美味しいものや自然を消費して日々を過ごしていただけ。

そんな今の自分に対して、「地域を消費している」という新田さんの言葉はぐさりと刺さるものがあり、何ができるか考えるようになりました。まだまだ具体的なアクションにはほぼ遠いですが週末フォルケのあと、まずは地域との繋がりを作りたいと思い、リモートワーカーでもある私は、地域にあるコワーキングスペースに所属することをスタートしたところです。


・手放す勇気をもつこと

桐原まどかさんは、東日本大震災のあと家族とともに東京から福岡へ移住し、その後再び移住先を探し国内外を巡る旅へ。その旅のなかで東川町に出会い、現在は東川町に暮らしながらカフェを営まれています。

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東京から福岡へ移住という点が自分と重なる部分もあったためか、Day1で話を聞いている間にもっと話を伺ってみたいという気持ちがふつふつと湧き、別日に2人でランチをしていただくことに。

Day1でお会いした時に私が一番気になっていたのは、なぜ2度の移住をしたのかということ。ランチをしながら、そのことについて伺いました。

東京での暮らしに疑問を感じ、福岡に移住したこと。福岡で何年か暮らす間に、東京で暮らしていた頃のように沢山のものに囲まれ、自分たちが抱えている“荷物”が増えすぎていると感じたこと。手放す荷物を決め、再び暮らす場所を探し始めたこと。東川町で暮らしている今もまた、働き方や暮らし方を見直している最中であること。

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「自分たちが持っている“荷物”を見直して、時には手放す選択をすること」。私はこの話を聞きながら、「あー、私これできていないな」と感じていました。私もこれまで、何かをやめたり別れを選んだりと、手放す選択はしてきましたが、私は適切なタイミングで見直すことが苦手で、溜めにため込んだ結果「諦める」「放棄する」ことも多かったように感じています。

これまでは「手放す」という言葉をどこかでネガティブに捉えていましたが、まどかさんの話を伺って、自分たちらしい暮らしに近づいていくための前向きなものだと感じられるようにもなりました。

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↑Day7の「東川町の生産者の哲学に触れる」の様子。土曜日だったこの日、午前中は4か所の生産者さんのもとに分かれ、生産者の想いや生産工程において大切にしていることなどを伺い、午後は再び集まってそれぞれ見聞きしてきたことを共有しました。


4.フォルケと仕事は両立しうるのか?

今回参加した週末フォルケは、平日の日中は仕事をしながら、休日や平日の朝晩にフォルケを体験できるプログラムでした。不思議なことに、ここまで書いたような充実した8日間を送りつつも、平日はいつも通り仕事に取り組むことができていました。
どんな環境で仕事をしていたか、ちょっとだけご紹介します。

8日間、私たちが過ごした宿泊施設「せんとぴゅあⅠ」。かつての小学校の校舎を改修したものだそう。まちの中心部にあります。

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同じ敷地内には図書館もあります。今回、週末フォルケに参加したメンバーの多くは、このどちらかで仕事をしていた人が多いように感じます。

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図書館はパソコン使用OK。フリーWi-Fiも使え、エリアによっては飲食OKのデスクも。

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私たち以外にも作業している人たちがちらほらいたので、気兼ねなく利用することができました。

驚いたのは、電話やオンライン会議OKな専用スペースがあったこと。ちょっとした打ち合わせもできるので、もはや1日図書館で過ごる…とすら感じました。

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本はもちろん、ちょっとした展示もあって、気分転換にもぴったり。

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かくいう私は、色んな人が出入りする図書館(それが図書館という場所なのだけど)では、なんだか集中できていない感覚があり、平日5日間のほぼほぼを「せんとぴゅあⅠ」の談話室で過ごしました。ここに来ると、大体週末フォルケのメンバーの誰かがいて、私にとってはとても落ち着く空間でした。

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テーブル・机に、カウンター席、畳の小上がりがあるので、その時の気分で座る場所を変えたり、ちょっと一息つきたい時には同じ空間にあるキッチンで飲み物をいれて過ごしたり。
カウンター席で外を眺めながら仕事をするひとときが、とても穏やかで好きな時間でした。

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自分だけの空間で打ち合わせや作業をしたいときには、宿泊していた個室で作業することもできました。せんとぴゅあⅠの談話室や個室もWi-Fiが使え、ハード面としても快適にリモートワークが行える環境でした。

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お昼ご飯は、お互いに声を掛け合ってまちのお店に食べに行ったり、テイクアウトしたご飯をみんなで持ち寄り談話室で食べたり。東川町内には、飲食店が多くあり、毎日どこに行くか迷うほど。8日間で周り切れなかったお店が多くあることが心残りです。

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「フォルケと仕事は両立しうるのか?」
これは今回のプログラム参加に当たり、私の中で一つの問いでしたが、8日間を過ごしてみて「両立できる」と感じました。むしろいつもに比べて、ONとOFFのメリハリがくっきりとし、OFFの時間は仕事のことを忘れて仲間との時間や東川のまちや自然を楽しんだり、自分と向き合ったりする時間に集中できました。

日常はそれはそれで、日々の連なりからの居心地の良さ、穏やかさもありますが、週末フォルケの8日間も〈刺激〉などよりも「浸る、感じる」という言葉の方がぴったりとはまる、そんな毎日がありました。

5.結びに

ちょうど前編を書き終わったタイミングで、週末フォルケに参加したメンバーでの1ヶ月後ミーティングがありました。
zoomに集まりみんなで話していると誰からともなく出た、「なんか、家族みたいだよね」という言葉。それを聞いて、すとんと腹落ちした感じがしました。実は、前編で8日間を過ごしたメンバーを「仲間」と表現しつつも、なにかしっくり来ていなかったのです。

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仲間と家族の違いは何?と聞かれても、的確に表現するのは難しいのですが、「また帰りたくなる場所」「何か特別なことをしていなくても、同じ時間を過ごしていてほっとする」とか、そんな言葉が浮かびます。

家族のようなみんなと過ごしたから、いつも心のどこかに余白があり、東川のまちで体験したこと、出会った人たちから沢山のことを感じ取ることができたのではないか。
思い返すたびに、あの8日間は抱きしめたくなるような日々です。

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8日間東川町の自然と余白のなかで、たっぷり自分と向き合う時間を過ごし、リフレッシュすることができました。
本家本元、デンマークのフォルケホイスコーレには「週末フォルケ」というプログラムはないのかもしれないけれど、リモートワーク×フォルケという形は、フォルケへの参加ハードルを下げつつも、日常のなかで失っている余白を取り戻させてくれる、そんな機会になるのだと感じています。

ともに過ごしたみんな、東川で出会ったみなさん、東川のまちや自然…。本当にありがとうございました。

<そして、最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました!>

次回は2021年5月23日〜5月30日に開催するそうです。
↓興味ある方はぜひご覧ください!↓


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