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「ハコブネ」感想文漂着のお知らせ 2023.12.12─ いのちの車窓から/星野源

ハコブネとは?

コンパスをお持ちの皆様、こんにちは。
本日は「ハコブネ」に寄せられた感想文のご紹介です。

藝大に新設された自由な図書館「ハコブネ」。
誰でも自由に本を借りることができる。誰でも自由に本を追加することができる。誰かに本の感想をシェアできる。そんな本棚です。


漂着した感想文のご紹介

本日は 星野源「いのちの車窓から」の感想文をご紹介します。
対象図書は「ハコブネ」にあります。ぜひ手に取ってみてくださいね。



人間どう頑張っても厄日はある。体調を崩し、大事なものを立て続けに無くし、電車に忘れた財布は埼玉の外れまで流れ着いてしまい、心身ともにポロポロ崩れた自分を立て直すためにこの1冊を手に取った。

何万人もの視線を浴びて1人で歌い、25時であろうと彼の言葉を聞くため日本中の人が部屋の電気を消さずに待っているようなスターと、無くした財布を回収しに泣く泣く埼玉の果てまで旅に出るような私ではだいぶ状況が違うけれど、それでもそんな大スターの綴る日々の記録に、埼玉でぐすぐす泣いている私が共感してしまう。景色と自分の心をありのままに、エゴもナルシシズムも削ぎ落として書きとめようとする彼の文章は、素直に確実に私の日々に活力を与える。
働けばお腹が空くし、食べて寝れば朝が来る。疲れたら散歩に行って、お気に入りの靴下が片方無くなれば落ち込んで、よその家の柴犬に勝手に微笑みかけて……小さな失敗や小さな喜びがあって、大切な人と大切な音楽と日々の営みがあって。そういうものだよね〜と良い意味で気が抜ける。

素直な言葉を綴ることは意外と難しい。こう見られたい、こうやったらカッコいい、こっちの言葉遣いの方が頭が良さそう……余計な意図を混ぜこんで、伝えたいことがぼやけてしまうことがある。だからこそ、彼がありのまま私たちに覗き見させてくれる生活の一部は鮮やかで、真っ直ぐに届いてくる。エッセイだけではない。自分をよく見せることよりも、実感を、経験を、紡いできた生活と、その想いをダイレクトに伝えようとする言葉選びは、彼の音楽の大きな魅力にもなっているのだろう。

彼は人生を永遠とは言わない。誰しもいつか終わるもので、この世は当然良いことばかりではなくて、なんなら地獄かもしれなくて。そんな中で日々を紡いでいくこと、大切にしたい人がいること、人生は永遠ではなくとも、永遠と思えるものを探すこと、そうやって生活を続けていくことを歌い、書いている。 何かにぶつかった時、それでも家に帰って食べて寝て、気づいたら明日になっているよな、そう思える1冊だと思う。

これはハコブネに戻して、私は同じものを本屋に買いに行く。またこの本が、疲れた誰かに届くといい。


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「ハコブネ」のご利用は藝大に入構できる全ての人が対象です。
ぜひ、お気軽にご利用ください。

それでは、次のお知らせでお会いしましょう。

Compasser.

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