見出し画像

なんでシャワー中にアイディアが浮かぶ?

皆さんはどんな時にアイディアが浮かびますか?

以前書いたように、私の場合、音楽が浮かぶのは電車に乗っている時や歩いている時が多いです。

朝ドラ「ブギウギ」で、作曲家の羽鳥善一(服部良一さんがモデル)が電車に乗っている時に東京ブギウギを思いつき、メモするものがないので慌てるシーンがありましたが、とても共感しました。適度なリズムを感じる環境で、特にリズミカルな曲は思いつきやすいような気がします。


では音楽以外のアイディアはどんな時に浮かびやすいでしょうか?

私の場合は、圧倒的にシャワーを浴びている時、特に髪を洗っている時に多いんです。

今日は、この「なぜシャワー中にアイディアが浮かぶのか?」について考えてみたいと思います。

アイディアの傾向と対策

何が思い浮かぶかというと、「あれをこれに応用できるんじゃないか」「今考えてるこれを今度の研究会のテーマにしよう」「世の中で話題になってるあの現象はこれと関係あるんじゃないか」「今訳してるこの本の邦題はこれにしよう」といったようなことです。

2年前、あまりに思い浮かぶので、耐水ノートとペンを買って浴室に常備するようになりました。でも、連続して思い浮かぶ時もあれば、特に浮かばない日が続く場合もあります。

入浴思いつきセット

思いついたアイディアは、これは入浴中に浮かんだものに限りませんが、iphoneのメモフォルダ「思いつきは全てここに」に保存して、時々見直したり整理したりします。

シャワー中に起きること

なぜシャワー中なのでしょう?なぜ特に髪を洗っている時なのでしょう?

髪を洗う時、私はまず目を閉じてシャワーで髪をぬらします。その後シャンプーをつけ、閉眼のままだいたい決まった順番に髪を洗い、頭皮をこすって、シャワーの湯で洗い流します。その後コンディショナーやトリートメントを、これもお決まりの順に半ば自動的に使っていきます。最後にまたシャワーで洗い流しますが、この間たいてい何かを考えています。この一連の動作の特徴としては、

・目を閉じている
・頭を下げている
・自分の指で頭皮を刺激
・ルーチン動作(自動的に行えるやり慣れた動作)

などが挙げられます。これらを、浴室という特殊な環境で行うわけです。浴室は基本的に入浴するところであって、行動が制限されます。目を閉じることで視覚情報がシャットアウトされ、音楽などを流さない限り音情報もシャワー音に限定されます。そうすると内部駆動型の思考が優勢になります。つまり、外からの刺激に反応して考えるのではなく、自ら考える姿勢になります。

こうしてあれこれ考えることをマインドワンダリングといいますが、シャワー中にはこれが生じやすくなるのでしょう。ネガティブな考えが堂々巡りになる悪いマインドワンダリングもありますが、私の場合はそうなることはあまりありません。

ルーチン動作を続けながら考える、というのがひょっとしたら「良いマインドワンダリング」のコツなのかもしれません。あるいは、美容師さんに洗ってもらっている時はさほど浮かばないので、ひとりでいること、自らの指で頭を刺激することも関係しているのかもしれません。また、アイディアが浮かばないといって逆立ちしてみる人もいるくらいなので、頭を下げることも何か影響があるのかもしれませんね。

他の人もそうなのかな、と思って試しに「シャワー中に浮かぶ」で検索したところ、いっぱい記事が出てきました。私が知らなかっただけで、あるあるなんですね!論文もあって、シャワー効果と呼ばれたりするようです。

思いがけなくたくさん記事あり

noteにも似たことを書いている方がいます。

デフォルトモード・ネットワーク

脳の働きは、文字を読んだり計算したり、何か課題を遂行しているときの脳の血流や電気活動の変化を調べることで飛躍的に分かってきました。初期の研究では、課題遂行していない時脳は働いてないと考え、閉眼して黙っているときの状態をゼロとして、それと課題遂行中の状態とを比較して調べていました。

ところが、その何もしていないはずの時にこそ働く脳部位があることがだんだん分かってきたのです。これが、現在デフォルトモード・ネットワークと呼ばれている、脳の複数部位からなるネットワークです。マインドワンダリングにはこのネットワークが深く関わることがわかっています。アイディアが浮かぶ時というのは、このネットワークが、他の脳部位との相互作用によって理想的に制御されている時なのではないでしょうか。

興味ある方のために、マインドワンダリングに関する最近の論文を載せておきます。
Kam JWY, et al. (2022) Mind-wandering: mechanistic insights from lesion, tDCS, and iEEG. Trends Cogn. Sci 26, 268-282 doi: 10.1016/j.tics.2021.12.005.

学生には「時にはボケっとすることも大事ですよ」と言っていますが、ただボケっとしているだけではダメということでしょうね。


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?