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一服の清涼剤: ダルブーワ

急に暑くなりましたね。私の曲には、清涼剤という目的で作られるものもあります。今日紹介するダルブーワ(2022年5月30日生まれ、CNo41)もそのひとつです。2022年の発表会に出した曲で、動画にしてあります。

深海を漂う

夏、暑い日が続くと、呼吸するだけで暑苦しくなります。そんな時はなるべく小さくそっと呼吸して、余計な熱量を産生しないようにしています。そうすると自分の鼓動が感じられて少し快適になるんです。

深海をゆっくり泳いで、時々海底にお腹をつけて休む…。自分が深海魚になったような、そんなイメージの曲です。

私はいつもHyper Canvasというソフトシンセをメインに使っているのですが、今回はOctopusやMorphoXなど(もう製品開発は終了したようですが)のLinPlug系シンセの音色をふんだんに使って、深海の不思議な雰囲気を出してみました。また、Hyper CanvasのEchoDropsを全音で最初から最後まで流すことで海底のイメージを作り、その中で聞こえてくる鼓動を表現しています。

ダルブーワとしろうるり

ところでダルブーワって何?と思う人が多いことでしょう。

あるオンライン講習を受けていたら、講師の先生が「だるぶーわ、だるぶーわ」と連呼していて、その語感が面白く気になったのです。データサイエンス系の講習だったのですが、テキストを見たらリーマン積分のところで出てくる「ダルブー和」でした。普段数学には携わらないので耳に新しく、面白がって何度もだるぶーわ、とつぶやいているうちに、ダルブーワというものがあるような気がしてきました。

これと似たようなことが、吉田兼好の随筆『徒然草』第六十段に出てきます。

良くも悪くもすごく変わった僧都がいて、その様を面白おかしく兼好が綴っているのですが、その中でこの僧都がある法師に「しろうるり」とあだ名をつけたというのです。そして、しろうるりって何だ?と人に尋ねられると、それは自分も知らないけど、この法師に似たものがあれば、それがしろうるりだろうと答えたといいます。このシュールな返しが気に入っていて、私の好きな段のひとつです。

しろうるりと同じように、ダルブーワも私の中で勝手にイメージができ、その語感から深海を泳ぐ生物として確立してしまったのでした。


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