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「地方移住」へ高まる関心、テレワークが後押し

総務省によると「地方移住」を検討する人が増えているそうです。

2022年度に全国の相談窓口が受け付けた件数は、約37万件と過去最多で、調査を始めた15年度(約14万件)の、なんと「2.6倍」にもなったそうな。10年も経たないうちに約「3倍」になったというのは、個人的には少なくない人数のビジネスパーソンが、やはり都会疲れを感じているのではないかな?と、勝手ながら心配をしている次第です。

パーソル総合研究所によると、移住の形態は

(1) Uターン(故郷)
(2) Jターン(故郷に近い地域)
(3) Iターン(故郷とは別の地域)
(4) 配偶者地縁型
(5) 多拠点居住型

の 5タイプに分類されるそうです。

同研究所が22年3月に発表した調査結果では、(3) Iターンが最も多く、移住経験者の38.6%を占めました。次いで(1) Uターン(20.2%)、(5) 多拠点居住型(17.3%)と続いています。詳しくは以下の日経の記事をご確認ください。(お気づきの通りタイトルはそのまんま引用しています)


日経新聞を少し遡ってみれば、あのNTTが全社員3万人を対象に、リモートワークを導入して「基本的にどこに住んでいても構わないよ」ということを始めたという記事もありましたよね。


出社のために飛行機を使っても、出張費扱いとして全額が出る。これは日本の伝統的な企業としては、かなりラディカルな取り組みだと思います。この記事よりも以前に Yahoo!/LINE さんら IT企業がテレワークを導入していたのは知られています。

私の古巣の〇BMは、コロナ禍開始と同時にジャパンメンバーの三分の一から半数をテレワークに切り替えました。元同僚に話を聞くと今もそれは変わらないと言いますし、併せて人員もかなり減ったそう。これは何を言っているかというと、元々余剰人員を多く抱えていたということなのです。つまり、テレワークを機に、オフィス家賃を筆頭とする固定費だけでなく、人件費についてもかなりの削減ができた、ということに他ならないわけです。

テレワーク導入企業は増えていますよね。多すぎるので社名の列挙はしませんが、サラリーマン講師である私は、研修のため顧客であるGAFAMのうちのMS社さんに月に一度伺う度に人が減っていくことに驚きます。これはもちろん退職という自然減でなく、テレワークへの移行です。

NHK文化研究所による2015年の調査によると、首都圏で勤務する人の1日あたりの往復通勤時間の平均は1時間42分、つまり毎日2時間近い時間を通退勤に使っているということです。これを日数に換算すると、年間でなんと「20日間近い時間を通退勤のために使っている」と、言い換えることができてしまうのです。(※フルタイム労働者が年間250日(週5日)を50週間(休暇で2週間休む)通勤すると仮定する場合の概算)

これはどういうことなのかというと、端的に言えば「通勤を強いられている」ということです。「会社に来い!」と言われているわけです。ということは「業務命令」ですよね?実際には就業規則で決めることが多いわけですけれども、形式的にどうであろうと、要するに「会社の命令」として「来い!」というふうに言われているわけです。

ですから、通勤は「仕事」なわけですけれども、本当に仕事なのかというと仕事かどうかではかなり微妙です。なぜかと言うと、「勤時間は、給料が支払われていない」からです。毎日約2時間ですよ?「ミステリー」です。

通常8時間もの時間を働いてる私たちにとって、1日の労働時間のうちの2時間というのは4分の1ですよね?この25%分に相当する時間が、実はほぼ会社の命令ということで通勤=働いてるんですけれども、給料が出ていない。

1日2時間の通勤という労働+8時間の労働=10時間の給料が支払われることはなく、給料はそのまま8時間分ということになると、会社が私たちに通勤を強いるということは、実質的に「ディスカウント」されている、ということになっているわけなのです。

それも「相当なインパクト」を持っていることはご理解でしょうか?数%という程度じゃないんです。2時間=25%に相当するのですよ?かなりディスカウントされています。こうなると、もう「ホラー」じゃないでしょうか?

時間というのは「資本」です。資本というのは、原理的な定義をすれば、「お金を生む元手になるもの」です。このお金を生む元手になるものにはいくつかの種類があります。

まずはじめに、最もわかりやすいのはお金そのものです。お金はお金を生み出します。今は銀行の金利が低いのでこういったイメージが湧きにくいかもししれません。ですから投資が分かりやすいケースでしょう。金利=利ザヤが生まれるわけですから。このようにお金がお金を生む。つまりこれが「金融資本」というものです。

次に、例えばスキルや知識、能力や経験といったものも、お金を生みます。
「中国語ができますよ」ですとか「プログラミングができますよ」あるいは「M&Aの経験が豊富ですよ」など、そういった経験や知識とか能力もお金を生むんです。これも一つの資本なんです。これを「人的資本」と言います。人にくっついてくるので、人的な資本=人的資本というわけです。

そして、評判というものも資本です。私はあまり好きな言葉ではないですけれども人脈も資本です。信用という資本と言い換えることもできます。ではじゃあその信用はどこにあるのか?まさか体に付随なんてしてないですよね?実は「他人の心の中」に生まれています。「あの人はこういう仕事をやらせたらピカイチだよ」とか「あの人こういう仕事をやらせても絶対に逃げないと思いますよ」など、信用というのは「他人の心の中」に生まれているわけです。ですから、これはある意味で「社会の中に存在している」わけで、したがってこれが「社会関係資本」というものなのです。

さて、これら「金融資本」「人的資本」「社会関係資本」を生み出したいと考えると、どうすればいいのでしょうか?これらの資本を生み出す元手はなんのでしょうか?そう、ここで「時間という資本」が出てきます。

「時間を使って勉強する」「時間使って仕事をする」時間を使うから人的資本が生まれたり、社会関係資本が生まれるわけで、つまり元手になっているのは「時間資本」なのです。 

そしてここからが重要なポイントです。仮にもし「貧困を脱出しよう」と思うと、まずはどの資本が必要でしょうか?そう、それは「人的資本」です。お金を稼ぐためには、ある程度の能力を身に付ける必要がある、したがって人的資本が大事なのです。

「人的資本」が大事となると、必要な能力を身に付けるためのトレーニングとそれにかかるお金、そしてそのための時間がまた同時に必要になります。

しかし貧困になると、とにかく今日食べるお金、明日食べるお金、給食のためのお金などを何とかしなくちゃいけない。だから時間をものすごく安売りして、何とかその日暮らしをする。するとさらに「時間資本」が無くなってしまう。

時間資本が無くなると、良い人的資本は得られない。良い人的資本が得られていないと、さらに良い仕事ができなくなる。だから良い社会関係資本ができない。というように、負のスパイラルに入ってしまうのです。「貧すれば鈍する」というわけです。避けられない理由で生活を困窮している人について言及しているのではありません、時間の貴重さを説明しているのです。

だから例えば、北欧系の社会福祉が充実した国は、失業状態になると、ただ単に失業保険を出すだけではなく、就業のためのトレーニングを提供します。日本にもぜひこのようなプログラムが浸透してほしいと願っています。

とういうことで話を元に戻すと「時間資本」がものすごく大事なのにもかかわらず通勤を強いるということは、先述した首都圏の場合でいうと、その人から「2時間もの時間資本を奪っている」ということに他ならないのです。

時間資本を奪うということは、時間資本が生み出す金融資本だけに限らず、人的資本や社会関係資本までも生まれなくしているということです。ですからつまり、 その人の「人生のバランスシート」がものすごく貧弱になっていくというわけなのですね。

ここで皆さん、ぜひ考えてみてください。1日2時間を何かに使う、それを1年続けると相当なものになります。例えば多くのビジネスパーソンは、ビジネススクールで学びます。仮にファイナンスを勉強するとして、ではビジネススクールではどれくらいの時間ファイナンス勉の強するかというと、実は毎日ではないんですね。

これを大学の授業に変えて考えてみるともっとわかりやすいと思うのですけど、例えば何かしらの授業を1週間に2~3回受けたとしましょう。1回の授業、その1コマが1時間だとしても、1週間に2~3時間ですよね?ビジネススクールでの勉強量も、実はこの程度でしかないのです。

一方で、1日2時間を独学でファイナンスも学びに費やす、これを1年間やると、結構な知識が身に付きます。2~3年も学べばヘタをすると専門家と名乗れるレベルになるわけです。だから1日2時間というのは、これはものすごい時間投下量なんです。

これが通勤に搾取されていると考えてみると、ちょっとバカらしく感じませんか?1日2時間ですよ?例えばプログラミングを勉強しましょうか。1年みっちり学べば簡単な仕事くらいであればできるレベルになります。仮に楽器であってもそこそこ嗜めるレベルになるそうですし、どのような分野の勉強するとしても相当なものになります。

これはさらに多様な考え方ができます。例えば「1年毎に区切る」という考え方です。例えば「今年は簿記を学ぶ」「来年はファイナンス全般を学ぶ」「また来年はファイナンスの仕事に就く」というふうに区切って1日2時間を投下していくと、おそらく5年も経っちゃう頃には、その人の労働市場における価値というのはかなり変わってくると思います。

で、です。現時点では「それ」を通勤に使えと言われているということですからね?これはあまり意識されていないと思うのですけれども、人生においてものすごい損失を被っていると見ることもできるわけです。

「それ」を強いるということが、実はどういうことなのかというのは、会社側も、それを強いられている従業員である我々の側も、あまり意識的じゃないと思うのです。しかしだからこそ、よくよく考えて会社を選んだほうがいいのかなと思います。

さて他方、プラスアルファという意味でNTTさんの場合に立ち返ってみると、「どこに住んでもいい」というのは、実質的に「給料を上げている」のと同じことなんです。

例えば東京で考えてみましょう。仮にいま23区の中で100平米のマンションを買おうとすると、 おそらく、いえ確実に1億円以下で新築を買いうことなどできないでしょう。私のような普通のサラリーマンにはもう買えないですからね。つまり、東京に本社を置いて通勤させるということは、「広い家は持てない人生を送れ」と言われているのと同じというわけです。


もちろん会社側も意識的にそう考えているわけではない思いますが、結果的には同じこと。だからこそ、「会社を選択する」ということ「選択する力」そしてその「選択の結果」によって、人生がすごく変わるような、スペクトルが大きい時代が来ているのです。

会社なんてどこを選んだって、そもそも仕事なんていうものはそのほとんどが辛いものです。にもかかわらず、その会社が都市部にあって、そのうえさらに「毎日会社に来い!」と命令され行かなくちゃいけない。ということが今、変わってきているというわけです。ですからいまこそ「 選ぶ力」が、すごくすごく求められる時代になってきたな、というふうに思うのです。



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