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「フォード、大型SUVのEV撤退 ホンダは新型車投入で明暗」に注目!

フォード、大型SUVの電気自動車(EV)撤退 ホンダは新型車投入で明暗 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

米電気自動車(EV)市場で米国と日本メーカーの戦略の違いが鮮明になってきました。販売減速と採算悪化で米フォード・モーターは投資を大幅に縮小する一方、ホンダは2025年末から米で高級車EVを新たに生産します。日本勢は主力のハイブリッド車(HV)の収益を生かし、足元のEV減速の先をにらんで投資します。

フォードは21日、3列シートの大型多目的スポーツ車(SUV)のEV開発から撤退すると発表しました。EVを廃止し、収益が見込めるHVに切り替えます。

戦略見直しにより設備の評価損や追加投資に最大19億ドル(約2800億円)の費用を計上します。7〜9月期の費用計上はこのうち4億ドルを見込みます。

EVの新型ピックアップトラックの投入も延期し、EV事業への設備投資を10%減らします。当初は年間設備投資の4割をEVに投じる計画でしたが、3割に縮小します。

大型EVの開発を絞り込む一方、安価な中国製に対抗できる低価格EVの開発を優先します。EVのコストを左右する電池の調達計画も見直します。

同社の4〜6月期のEV事業のEBIT(利払い・税引き前損益)は11億ドルの赤字でした。赤字は6四半期連続で採算確保が難しくなっています。ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は「費用対効果を重視した」とコメントしました。

米自動車大手はEV減速や中国との競争を背景に相次いで投資を見直しています。ゼネラル・モーターズ(GM)も中西部ミシガン州の工場で大型EVの生産を2年延期します。

一方、EVで出遅れていた日本勢は攻勢に出ています。ホンダは海外向け高級車ブランド「アキュラ」で新たなSUVのEVを開発し、2025年末から中西部オハイオ州の工場で生産します。

ホンダは2023年にGMと次世代EVの共同開発を中止しました。新型EVはGMとの開発中止表明後、ホンダが独自に開発したプラットフォーム(車台)を使った初のEVとなります。

同社は既にカナダのオンタリオ州にある工場で総額1.7兆円を投じ、EVや電池を現地生産すると決めています。2030年には世界でEV生産台数を200万台に増やす目標で「足元の市場動向で中長期戦略は変えない」(三部敏宏社長)と強気です。

トヨタ自動車も2024年に入り、南部ケンタッキー州と中西部インディア州の工場でEVや電池生産に総額27億ドルの投資を発表しました。米調査会社のコックス・オートモーティブによると4〜6月期のトヨタの米EV販売台数は前年同期比およそ4倍と急増しました。

日本勢がEVで投資攻勢に出られるのは稼ぎ頭のHVの存在が大きいです。トヨタとホンダを合わせると米HV市場でのシェアは8割弱にのぼります。日本勢はHVで世界に先行し、長期の技術開発を経て減価償却は終わりつつあり、HVはつくるほど利益が出ます。

一方のビッグ3はHVが少なく、EVからの投資切り替えでもさらにコストが膨らんでいます。

米国では大統領選を見据え、新政権のEV政策も注目されます。共和党の大統領候補であるトランプ前大統領はバイデン政権のEV推進策に後ろ向きですが、民主党のハリス副大統領はバイデン政権の政策を継承する方針です。

長期的に米国でEVシフトは変わらない可能性が大きいです。

米国で現行の環境規制をクリアするには、自動車メーカーは2030年までにEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の合計構成比を全体の5割近くまで高める必要があります。「ハリス政権なら環境規制はむしろ厳しくなる」(日本貿易振興機構ニューヨーク事務所)との見方もあります。

トヨタ北米本社のダンテ・ブーテル副社長は「政策が変わっても、2030年に米でHVを含む電動車比率を8割にする方針は変えない」と話し、EVもHVも両方投資すると説明します。

もっとも足元では新型コロナウイルス禍後の供給不足一巡で新車需要に息切れ感が出ています。2023年に前年同月比2ケタ増が続いた日本車4社の米国販売は2024年に入り1ケタ増に鈍化します。景気減速懸念のなかで投資の勢いを継続できるかは予断を許しません。

ホンダは8月16日にAcuraブランドの次世代EVモデルの方向性を示すコンセプトモデル「Acura Performance EV Concept(アキュラ・パフォーマンス・イーブイ・コンセプト)」を世界初公開しました。アキュラはホンダの北米向けの高級車ブランドです。今回のデザインはスーパーヨットと呼ばれるラグジュアリーな大型ヨットからインスピレーションを得ているとのことです。

長距離移動が多い米国では、大型車が主役で航続距離を重視する消費者が多いとのことで、充電網が不足する中、ガソリン車やHVの方が圧倒的に人気があります。そして、フォードのジム・ファーリーCEOは「ガソリン車は車が大きいほど利益が出たが、EVは真逆だ。車が大きく、電池が大きいほど利益を圧迫する」と話しており、投資を選別し始めています。

ホンダは蓄電池への投資も続けており、今後はEVでもしっかりと利益が出るような態勢になるように期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。